膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

皮膚筋炎患者のリスクベースでの癌スクリーニング

JAMA Dermatol. 2022;10.1001/jamadermatol.2021.5841.
 
JAMA dermatologyに載っていた記事。アメリカでの推奨という点に注意が必要だが、網羅的でわかりやすい。

【自分なりのまとめ】

皮膚筋炎患者は診断から3年間は悪性腫瘍リスクが高い(J Rheumatol. 2015;42(2):282-291.)
このため
  1. 発症時のスクリーニングとして、頚部-骨盤部造影CT、上部/下部内視鏡検査、血液・尿検査、女性の場合婦人科検診・乳癌検診は最低限行う
  2. 癌リスクを皮膚筋炎の因子・患者背景から想定し、高リスクの患者に対しては3年間しっかりとスクリーニングを繰り返す
    • リスク増加…皮膚筋炎、高齢、男性、嚥下障害、皮膚潰瘍、抗TIF1γ抗体
    • リスク低下…多発筋炎、筋症状のない皮膚筋炎(CADM)、レイノー現象、間質性肺炎、血清CK著明高値、LDH高値、抗Jo-1抗体陽性、抗EJ抗体陽性
  3. 以後は各悪性腫瘍の推奨に従って、癌スクリーニングを繰り返す
という流れが現実的だろう。
 
  • 皮膚筋炎(DM)患者の主な死因は癌であり、DM患者の10-25%は皮膚筋炎診断から3年以内に癌と診断される(Rheumatology (Oxford). 2021;60(6):2615-2628.)
  • ただ、そのスクリーニングをどのように行うのが正しいのかはわかっていない
  • ※特発性炎症性ミオパチー患者のがんリスク
    • リスク増加…皮膚筋炎、高齢、男性、嚥下障害、皮膚潰瘍、抗TIF1γ抗体
    • リスク低下…多発筋炎、筋症状のない皮膚筋炎(CADM)、レイノー現象、間質性肺炎、血清CK著明高値、LDH高値、抗Jo-1抗体陽性、抗EJ抗体陽性
 
提案されたアプローチは以下の通り

①DM患者でのリスク上昇が証明されており、米国での一般人口向けガイドラインが適応できる悪性腫瘍

臓器
一般人口向けガイドライン/DM患者での留意点
DM患者での
標準化罹患率
米国成人DM患者10万人あたりの年間癌罹患率
肺癌
・20pack-year以上の喫煙歴がある50-80歳の患者で、喫煙者or過去15年以内に禁煙した者は、年1回の低線量CTを実施(USPSTF)

・DM診断から3年以内の50歳以上の患者には肺癌スクリーニングを考慮…全身CT
15.01-18.74
1161.8-1527.9
大腸癌
直腸癌
・45-75歳の全成人は大腸癌検診を受けるべきである。患者希望・健康状態に応じて85歳まで検診を継続しても良い(USPSTF)
・60歳未満で大腸癌と診断された第1親等がいる、または年齢関係なく大腸癌と診断された第1親等が2人いる人は、40歳または親族が診断された年齢の10年前いずれか早い時点でスクリーニングを開始する(ACG)

・DM診断から3年以内の患者に対して、家族歴有無に関わらず、他の高リスクグループ同様に40歳時点から大腸スクリーニング開始を検討する
4.03-13.48
207.5-694.2
乳癌
・50−74歳の女性は、2年毎にマンモグラフィーを受けるべきだが、患者希望・家族歴に基づいてより早期にスクリーニングを開始するかどうか決定する(USPSTF)
・BRCA遺伝子変異のある患者、BRCA遺伝子変異のある第1親等がいるが検査を受けていない患者、乳癌の生涯リスクが20-25%以上の患者に対して、30歳から年1回の乳房MRI・6ヶ月間角でのマンモグラフィを実施することが推奨される(ACS

・DM診断から3年以内の30-75歳の女性には、高リスクの女性へのスクリーニングと同様に、補助・ベースとしての乳房MRIを考慮
3.49-3.52
612.1-617.4
子宮頚癌
・21~29歳の女性は細胞診のみで3年ごと、30−65歳の女性には細胞診のみで3年ごとorHPV検査を併用して5年毎に検診を受けることを推奨(USPSTF)

・DMと新規診断された女性・免疫抑制状態の女性に対して、3年連続で毎年pap testを行うことを推奨。全てのpap testが正常の場合、3年おきに頻度を減らして良い
3.28
34.4

②DM患者でのリスク上昇が証明されており、米国での一般人口向けガイドラインが確立していない悪性腫瘍

臓器
DM患者での留意点
DM患者での
標準化罹患率
米国成人DM患者10万人あたりの年間癌罹患率
咽頭
DM診断から3年以内かつ高リスク地域出身の40-62歳に対して、顔面・鼻咽頭・頸部のMRI、鼻咽頭鏡などの画像診断、EBウイルス血清検査を検討する
139.95
98.0
血液腫瘍
リンパ腫
DM患者で、ルーチン検査(血算など)で顕著な異常所見があったり、診察・画像検査でリンパ節腫脹が見られる場合、詳しく精査する
不明-22.7
54.7-1247.3
腎癌
DM患者で、ルーチン尿顕微鏡検査で顕微鏡的血尿単独が見られた場合、精査(上下部尿生殖路の画像評価など)を考慮する
5.74
134.3
膀胱癌
3.94-4.05
105.2-108.1
卵巣癌
DM診断から3年以内の30~35歳以上の女性は、CA-125フォローと年1回の経膣エコーを考慮する
5.39-5.43
75.5-76.0
食道癌
DM患者に対して食道癌の危険因子(50歳以上、白人、中心性肥満、喫煙歴、一親等血族にBarrett癌・食道癌の家族歴)を評価→必要あれば上部消化管内視鏡を考慮
3.06
19.0
リスク因子として家族歴を確認…2人以上の一親等血族に膵臓癌患者あり、既知の高リスク遺伝子を持っている
リスク因子なければ追加スクリーニング不要
3.06-3.07
55.4-55.6
※ACG, American College of Gastroenterology; ACS, American Cancer Society; BRCA, breast cancer gene 1 and 2