膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

人工膝・股関節置換術前の抗リウマチ薬/免疫抑制剤の術前休薬推奨の2022年更新版(ACR)

 
アメリカリウマチ学会(ACR)の抗リウマチ薬/免疫抑制剤使用患者での人工関節置換術前休薬推奨が5年ぶりに更新され、プレスリリースされたので紹介。2022年夏に正式版はpublishされる予定。
 
変更点・重要な点は以下の通り
  • csDMARDsは継続可
  • 生物学的製剤は、1サイクルスキップし+1週間あけて手術…4週おきの製剤なら、最終投与から5週間後に手術
  • JAK阻害薬は術前3日前まで継続…以前は7日前だったが、フレアを避けるために短縮
  • SLEは安定していれば術前1週間前から休薬、安定していなければできる限り継続のままで手術
  • 術後の薬剤再開…創傷が治癒傾向で、縫合糸/ステープルが全て抜去され、著明な腫脹/紅斑/排膿がなく他の感染がなければ、通常術後14日目に投薬再開

①csDMARDs

csDMARDs:
周術期継続(全患者)
投与間隔
継続/休薬
メトトレキサート(MTX)
毎週
継続
サラゾスルファピリジン
1日1−2回
継続
ヒドロキシクロロキン
1日1−2回
継続
レフルノミド(アラバ®)
毎日
継続
ドキシサイクリン
毎日
継続
アプレミラスト
(オテズラ®)
1日2回
継続

②生物学的製剤

生物学的製剤:
1サイクルスキップ+1週間あけて手術
投与間隔
手術の予定日
(最終投与からの期間)
TNF阻害薬
アダリムマブ(ヒュミラ®)
毎週 or 2週ごと
2 or 3週後
エタネルセプト(エンブレル®)
毎週 or 週2回
2週後
ゴリムマブ(シンポニー®)
皮下注:4週ごと
点滴:8週ごと
5週後
9週後
インフリキシマブ(レミケード®)
4, 6 or 8週ごと
5, 7,or 9週後
セルトリズマブ(シムジア®)
2 or 4週ごと
3 or 5週後
CTLA4-Ag
アバタセプト(オレンシア®)
点滴:4週ごと
皮下注:毎週
5週後
2週後
IL-6受容体阻害薬
トシリズマブ(アクテムラ®)
皮下注:毎週
点滴:4週ごと
2週後
5週後
抗CD20抗体
リツキシマブ(リツキサン®)
2週おきに2回
(※日本では1週おき4回のみ)
→4−6ヶ月ごと
7ヶ月後
IL-1受容体抗体
アナキンラ(Kineret®)
(※日本では未承認)
毎日
2日後
IL-17阻害薬
セクキヌマブ(コセンティクス®)
4週ごと
5週後
イクセキズマブ(トルツ®)
4週ごと
5週後
IL-12/23阻害薬
ウステキヌマブ(ステラーラ®)
12週ごと
13週後
IL-23阻害薬
グセルクマブ(トレムフィア®)
8週ごと
9週後
抗BLyS抗体
ベリムマブ(ベンリスタ®)
点滴:4週ごと
5週後

③JAK阻害薬

JAK阻害薬:術前3日前まで継続
投与間隔
手術の予定日
トファシチニブ(ゼルヤンツ®)
1日1−2回
最終内服から4日後
(術前3日前から休薬)
バリシチニブ(オルミエント®)
毎日
ウパダシチニブ(リンヴォック®)
毎日

④重症SLE

重症SLE:担当リウマチ専門医と相談して周術期の投薬継続
投与間隔
手術の予定日
(最終投与からの期間)
ミコフェノール酸モフェチル
1日2回
いつでも
アザチオプリン
1日1−2回
いつでも
シクロスポリン
1日2回
いつでも
タクロリムス
1日2回
いつでも
リツキシマブ(リツキサン®)
4-6ヶ月ごとに点滴
投与から4-6ヶ月後
ベリムマブ(ベンリスタ®)
皮下注:毎週
いつでも
点滴:4週ごと
投与から4週後
アニフロルマブ(サフネロー®)
点滴4週ごと
投与から4週後
ボクロスポリン(Lupkynis®)
(※日本では未承認)
1日2回
継続

⑤非重症SLE

非重症SLE:手術1週間前に休薬
投与間隔
手術の予定日
(最終投与からの期間)
ミコフェノール酸モフェチル
1日2回
最終投与から1週後
アザチオプリン
1日1−2回
最終投与から1週後
シクロスポリン
1日2回
最終投与から1週後
タクロリムス
1日2回
最終投与から1週後
リツキシマブ(リツキサン®)
4-6ヶ月ごとに点滴
投与から7ヶ月後
ベリムマブ(ベンリスタ®)
皮下注:毎週
最終投与から2週後
点滴:4週ごと
最終投与から5週後