Autoimmun Rev. 2021 Dec 9:103013.
Rheumatol Int. 2017 Aug;37(8):1323-1333.
シェーグレン症候群の抗体としてよく知られる抗SS-A抗体は、実は他の膠原病でもよく陽性になる。
SS-A抗体は抗Ro52・Ro60抗体に分けられるが、そのうち抗Ro52抗体は診断にも予後にもかなり重要なマーカーなのだが、案外見落とされている。
Autoimmun Revからいいレビューがあったので、以前のレビューで補足しつつまとめ。
まとめ
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抗Ro52抗体(抗TRIM21抗体)は膠原病患者でよく検出される抗体である
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抗Ro52抗体は、膠原病患者の間質性肺疾患の有病率・重症度と関連している
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抗Ro52抗体は、重症患者における強い免疫応答の「付帯現象」(epinophenomenon)を表している可能性があり、重度の臓器障害に関与している可能性もある
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抗Ro52抗体、膠原病の診断マーカーというよりも「重症度マーカー」である可能性がある
表:膠原病と抗Ro52抗体陽性率・症状
疾患
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Ro52抗体価と正の相関
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抗Ro52抗体陽性率
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シェーグレン症候群
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37-75%
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SLE
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42-50%
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全身性強皮症
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8-38%
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特発性炎症性ミオパチー
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30-35%
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MCTD
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29%
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【抗Ro52抗体とは?】
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抗Ro52抗体(抗TRIM21抗体)は、シェーグレン症候群で見られる抗SS-A/Ro抗体のサブタイプである
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一方でシェーグレン症候群以外の膠原病でもよく見られる…関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)・全身性強皮症(SSc)、特発性炎症性ミオパチー(IIM)など
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SS-A抗体とRo抗体は表裏一体の抗体で、SS-A抗体は核内抗体・Ro抗体は細胞質抗体である
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Ro抗体はRo52、Ro60の2種類がある
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Ro52は、別名”TRIM21"とも呼ばれる
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※SS-Bの場合…SS-B抗体は核内抗体・La抗体は細胞質抗体
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Ro52には、免疫活性化からの保護作用・アポトーシスを仲介する機能・免疫シグナルや免疫を触媒する機能があるとされる
【疾患別の抗Ro52抗体との関連】
①シェーグレン症候群
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抗Ro52抗体の陽性率
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抗Ro52抗体陽性シェーグレン症候群で多い症状
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唾液腺症状・耳下腺肥大
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血球減少…白血球減少、血小板減少
②SLE
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抗Ro52抗体の陽性率
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SLE患者の40-50%
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抗Ro60抗体・抗La抗体も陽性のことが多い
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抗Ro52単独陽性のSLE患者も珍しいが存在する(全体の5%以下)→抗核抗体陰性のSLEもわずかに存在する
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Ro52抗体陽性SLEで多い症状
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皮膚ループス(CLE)での光線過敏症が増える…Lupus. 2007;16(1):10–7.
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高ガンマグロブリン血症、白血球減少…Lupus. 2013;22(5):477–85.
③全身性強皮症(SSc)
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抗Ro52抗体の陽性率
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びまん性(dcSSc)・限局性(lcSSc)両方で20%程度
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Ro60抗体も陽性のことが多い(80%)
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抗Ro52単独陽性のSSc患者もありうる(5%程度)
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Ro52抗体陽性SScで多い症状
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間質性肺疾患(ILD)、オーバーラップ症候群…Arthritis Res Ther. 2012;14(2):R50.
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特にILDは重症例が多い
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肺高血圧症…Open J Rheumatol Autoimmune Dis. 2013 16;3(2):113–8.
④特発性炎症性ミオパチー(IIM)
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抗Ro52抗体の陽性率
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IIMの約30%でRo52抗体陽性
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特に抗ARS抗体症候群では陽性率が高く、40-60%で陽性(※逆にRo60抗体は稀)
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IIMにおける抗Ro52抗体陽性は重症例と関係している
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ARS抗体症候群で抗Ro52陽性の場合、重症度(特にILD・関節症状)が高い
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抗MDA5抗体でも同様
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癌との関連に関しては不明
⑤混合性結合組織病(MCTD)
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MCTDの約30%でRo52抗体陽性
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Ro52陽性MCTDはILD有病率が高い
【感想】
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抗核抗体陰性SLEはじめとして「SS-A抗体だけ陽性」という膠原病もあるので、診断にも結構重要な抗体でもある
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そしてSS-A陽性なら、Ro52/Ro60抗体どちらなのかを測定しておいたほうが本来ならいいのだろうが、商業ベースではBMLの自費抗体検査(数万円)でしか測定できないのは悩みどころ
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とりあえず「シェーグレン症候群以外の膠原病でSS-A抗体陽性例」は注意してみておいたほうがいいだろう