膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

2022-01-01から1年間の記事一覧

ANCA関連血管炎とANCA種類の組み合わせ

教科書だけ見ると、 MPO-ANCA→顕微鏡的多発血管炎(MPA) PR3-ANCA→多発血管炎性肉芽腫症(GPA) という一対一対応に見えるが、実際はそうではなく逆のパターン(MPO→GPA、PR3→GPA)もあれば、両方とも陽性のパターンも散見される、という話。 まとまった文…

神経・精神症状を起こすSLE(NPSLE)

SLE

Drugs Aging. 2022;39(2):129-142. Radiographics. 2022;42(1):212-232. Arthritis Rheumatol. 2019;71(1):33-42. Cureus. 2021;13(9):e17969. Rheumatology (Oxford). 2020;59(Suppl5):v52-v62. SLEは様々な臨床症状を起こすが、その一つに神経症状・精神症…

高安動脈炎の治療 〜日米欧ガイドラインの比較〜

高安動脈炎は難治性かつ治療エビデンスも限られることから、どう治療するかは非常に悩ましい 参考になるのはガイドラインで、日本・アメリカ(ACR)・ヨーロッパ(EULAR)それぞれガイドラインが存在する ACRガイドライン…2021年大血管炎ガイドライン(Arthr…

急性糸球体腎炎レビュー

Lancet. 2022;399(10335):1646-1663. 糸球体腎炎は膠原病によくある症状かつ、予後を規定する重要な疾患である。一方で膠原病とはあまり関係しない腎炎もあり、手出ししにくい領域でもある。そのへんの復習になるレビューがあったので読んでみた。非常に長い…

治療抵抗性関節リウマチ

Ann Rheum Dis. 2021;80(1):31-35. Nat Rev Rheumatol. 2021;17(1):17-33. 治療の進歩によって関節リウマチ(RA)の予後は大きく改善したが、それでも難治例は残っている。 難治例の中には、「薬が効かない」というだけでなく、線維筋痛症のような痛みが残る…

後腹膜線維症レビュー

Curr Rheumatol Rep. 2021;23(3):18. AJR Am J Roentgenol. 2008;191(2):423-431. 後腹膜線維症はIgG4関連疾患の関係で膠原病内科に相談が来ることが多いが、いい文献がなかったのでまとめてみた 【ポイント】 後腹膜線維症は、IgG4関連疾患・特発性後腹膜線…

巨細胞性動脈炎の眼合併症

J Clin Med. 2022;11(7):1997. 巨細胞性動脈炎で緊急性の高い合併症といえば失明であるが、実はその内訳は多々ある。 虚血症状がメインであるため、不可逆的な後遺症を残すことも多々ある。一方で早期治療で改善させることができる。 【ポイント】 GCAの眼症…

リウマチ性疾患におけるFDG-PET

Rheumatology (Oxford). 2021;keab675. PET-CTは悪性腫瘍の評価として有名だが、リウマチ性疾患の診断にも非常に有用である。 日本では大血管炎に対してのみ保険適応があり、自費検査では非常に高価である。 ただ、画像パターンを知っておくと診断・鑑別・フ…

ループス腎炎寛解導入でのタクロリムスvsシクロホスファミド静注

JAMA Netw Open. 2022;5(3):e224492. SLE合併症の代表例であるループス腎炎(LN)への寛解導入療法といえば、ステロイド+免疫抑制剤である 免疫抑制剤の選択肢として、カルシニューリン阻害薬の一種タクロリムス(Tac)・シクロホスファミド静注(IVCY)が…

2022年乾癬性関節炎(PsA)バイオ/JAK薬価早見表

薬価は厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/topics/2022/04/tp20220401-01.html)参照 2022年注目ポイント アダリムマブBSの値下げ幅が大きい コセンティクス小幅値上げ 赤字が薬価改定あった部分 関節リウマチ版 ctd-gim.hatenablog.com 【画像版】 ◎TNF…

2022年RAバイオ/JAK薬価早見表

薬価は厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/topics/2022/04/tp20220401-01.html)参照 2021年からの変更点は赤字で記載 ◎2022年注目ポイント エタネルセプトBS、アダリムマブBS、アクテムラ点滴の値下げ幅が大きく、3割負担で2万円弱/月になった JAK阻害薬…

皮膚エリテマトーデス(CLE)レビュー

SLE

Nat Rev Rheumatol. 2019;15(9):519-532. Curr Opin Rheumatol. 2020;32(3):208-214. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017;31(3):389-404. SLEの皮膚病変は非常に多彩でややこしい。 その理由として SLEと合併して起こる皮膚症状もあれば、皮膚症状のみ起こ…

ANCA関連血管炎治療へのエキスパートオピニオン

Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.42114. MGHからのANCA関連血管炎(AAV)治療へのエキスパートオピニオンとしてのレビュー 非常に実践的かつ、エキスパートも同じことで悩んでいるんだなということを実感できる内容。 【Keypoint】 AAVの寛解導入におけ…

ループス性脱毛と鑑別疾患

SLE

Lupus Sci Med. 2018;5(1):e000291. 皮膚症状のうち特徴的なのが脱毛症であるが、ループスの中にも様々なタイプの脱毛症があり、鑑別疾患も多彩である。 【Key-point】 ループス患者の脱毛はループス特異的/非特異的脱毛だけでなく、他疾患による脱毛の可能…

新規発症リウマチ性多発筋痛症へのTocilizumab(PMR-SPARE試験)

Ann Rheum Dis. 2022;annrheumdis-2021-221126. リウマチ性多発筋痛症(PMR)は関節リウマチに次いで高齢者に多い炎症性リウマチ性疾患であり、治療はステロイド単剤治療が推奨されている ステロイド以外の薬剤のデータはかなり乏しく、メトトレキサート(MT…

菊池病レビュー

菊池藤本病(KFD、以下「菊池病」で統一)は亜急性壊死性の局所的なリンパ節腫脹を特徴とする原因不明の疾患である。 予後の良い疾患であるが、しばしば軽度の発熱・全身症状を伴う場合がある。 名前は有名だが、まとまったレビューはあまりなかったので、自…

人工膝・股関節置換術前の抗リウマチ薬/免疫抑制剤の術前休薬推奨の2022年更新版(ACR)

https://www.rheumatology.org/About-Us/Newsroom/Press-Releases/ID/1210 アメリカリウマチ学会(ACR)の抗リウマチ薬/免疫抑制剤使用患者での人工関節置換術前休薬推奨が5年ぶりに更新され、プレスリリースされたので紹介。2022年夏に正式版はpublishされ…

大血管巨細胞性動脈炎(LV-GCA)のミミック

J Clin Med. 2022;11(3):495. 巨細胞性動脈炎(Giant cell arteritis: GCA)は2つのサブタイプに分かれる Cranial GCA…頭蓋血管の血管炎。いわゆる「側頭動脈炎」 Large vessel GCA(LV-GCA)…頭蓋領域外の動脈(大動脈・総頸動脈・鎖骨下動脈など)のみの血…

ヒドロキシクロロキンの有害事象・減感作療法

Clin Exp Rheumatol. 2021;39(5):1099-1107. ヒドロキシクロロキン(HCQ)は、SLEのキードラッグだが継続困難例が散見される。代表的なのが皮疹だが、網膜症を始めとした皮膚外症状にも注意が必要。 皮膚症状でHCQ使いにくくなった症例でも、減感作療法を行…

皮膚筋炎患者のリスクベースでの癌スクリーニング

JAMA Dermatol. 2022;10.1001/jamadermatol.2021.5841. JAMA dermatologyに載っていた記事。アメリカでの推奨という点に注意が必要だが、網羅的でわかりやすい。 【自分なりのまとめ】 皮膚筋炎患者は診断から3年間は悪性腫瘍リスクが高い(J Rheumatol. 201…

手指のびらん性変形性関節症(Erosive OA)

Nat Rev Rheumatol. 2022;10.1038/s41584-021-00747-3. 多発手指関節炎を訴える患者の中に「びらん性変形性関節症(Erosive OA)」としかいいようがない患者がいる。 多発関節炎で受診し、Seronegative RAまたはundifferential perioheral SpAか?と思って治…

116回国家試験 膠原病リウマチ分野

毎年のことながら、なんとなく膠原病分野を解いてみた。多分あっているだろうが、責任は負いませんのであしからず。 問題文はhttps://bbs.icrip.jp/forums/forum/kokushi_116/ より 感想 普通の問題ばかりだが、生物学的製剤導入前のβDグルカン測定を問題に…

ANCA関連血管炎の新分類基準(ACR/EULAR2022年基準)

Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41986. Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41983. Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41982. ACR(アメリカリウマチ学会)/EULAR(ヨーロッパリウマチ学会)合同でのANCA関連血管炎の新分類基準が出たので…

トファシチニブと心血管・癌リスク(ORAL-Surveillance試験)

N Engl J Med. 2022;386(4):316-326. トファシチニブ(Tofacitinib)に代表されるJAK阻害薬は、経口薬ながら生物学的製剤(bDMARDs)と同じくらいの効果を持つ薬剤である ただ長期使用の有害事象については不明な点が多く、このORAL-Surveillance試験でようや…

仙腸関節炎の鑑別

J Inflamm Res. 2018;11:339-344. BMC Musculoskelet Disord. 2017;18(1):170. 仙腸関節炎は、軸性脊椎関節炎(AxSpA)の症状として有名だが、AxSpAに特異的な症状というわけではなく「ミミック」も多く存在する。 【Key-point】 仙腸関節炎/関節痛は脊椎関…

膠原病による胆嚢炎

胆嚢炎は膠原病内科からするとあまり関係のない疾患に見えるが、稀に「膠原病(特に全身性血管炎)に伴う胆嚢炎」というものもある。 あまりまとまった報告はないが、自分なりにまとめてみた。 【Key-point】 「血管炎に伴う胆嚢炎」という概念がある 血管炎…

側頭動脈炎の鑑別

J Clin Med. 2022 Jan 5;11(1):275. 側頭動脈の血管炎がある場合、通常巨細胞性動脈炎(GCA)を想起するが、他の原因の場合もある 側頭動脈炎=巨細胞性動脈炎でない事がよく分かるレビュー Key-point 側頭動脈炎の原因として最多なのは巨細胞性動脈炎だが、…

全身性強皮症における炎症性関節炎

全身性強皮症(SSc)患者に関節炎・腱鞘炎症状はよく合併し、実臨床で悩むことは多い 一方で全身性強皮症の関節炎への臨床試験はほぼなく、エビデンスは非常に限られている。 【Key point】 SScにおける関節炎はかなり高頻度であり、原因は多彩…SScそのもの…

再発性多発軟骨炎レビュー

Rheumatology (Oxford). 2018;57(9):1525-1532. 再発性多発軟骨炎は、非常に稀な自己抗体陰性の自己免疫性疾患だが、一例一例に悩む症候群である。 最近はVEXAS症候群(MDS等との合併)・MAGIC症候群(ベーチェット病様病変の合併)もあってややこしい。 【…