教科書だけ見ると、
PR3-ANCA→多発血管炎性肉芽腫症(GPA)
という一対一対応に見えるが、実際はそうではなく逆のパターン(MPO→GPA、PR3→GPA)もあれば、両方とも陽性のパターンも散見される、という話。
まとまった文献はなく、自分なりにまとめてみた。
【ポイント】
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日本では特にMPO-GPAが多い
- 【ポイント】
- 【ANCA関連血管炎とANCA種類の組み合わせ】
- ①MPO-ANCA陽性のGPA(MPO-GPA)
- ②PR3-ANCA陽性のMPA
- ③MPA-ANCA・PR3-ANCA両方とも陽性(共陽性)
【ANCA関連血管炎とANCA種類の組み合わせ】
2022年にANCA関連血管炎分類基準は更新された
◎表:MPA・GPAの2022年ACR分類基準
(Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41986, Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41983.)
図:Wattsアルゴリズム(Ann Rheum Dis. 2007;66(2):222-227.)
特に日本のAAVの場合、欧米よりもMPO-ANCA陽性のGPAが多いとされている(Arthritis Res Ther. 2014;16(2):R101.)
表:日本でのMPA・GPAのANCA陽性割合(Arthritis Res Ther. 2014;16(2):R101.)
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GPA
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MPO-ANCA
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97.4%
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54.6%
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PR3-ANCA
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2.6%
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45.5%
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ANCA陰性
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1.3%
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9.1%
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表:ANCAサブタイプでの比較(Curr Rheumatol Rep. 2021; 23(6): 37.)
参考:
①MPO-ANCA陽性のGPA(MPO-GPA)
診断としては、MPO-ANCA陽性だが上気道/鼻腔病変が主体・生検で肉芽腫性変化があるというパターンが多い
◎日本人GPA患者16人の解析(BMC Pulm Med. 2015;15:78.)
◎日本人GPA患者38人の解析(Rheumatol Int. 2015;35(3):555-559.)
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平均年齢…MPA72.3歳、PR3-GPA60.4歳、MPO-GPA69.6歳
◎ドイツのANCA関連血管炎315人の解析(Arthritis Rheumatol. 2016;68(12):2953-2963.)
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MPO-GPAは重度の臓器病変が少ない・声門下狭窄が多い・積極的な免疫抑制療法(IVCY/RTX)の必要性が低い
②PR3-ANCA陽性のMPA
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極めて稀で例外的な存在(Arthritis Rheumatol. 2016;68(12):2837-2840.)
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報告は少なく、まとまった文献なし。
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PR3-ANCA陽性で腎臓以外に所見がないor肺の繊維化病変があるからMPAというパターンが多いようである。(J Autoimmun. 2020;112:102467.)
③MPA-ANCA・PR3-ANCA両方とも陽性(共陽性)
これも非常に稀とされる(Arthritis Rheumatol. 2016;68(12):2837-2840.)
ただ、実臨床ではよく見かける印象
◎韓国の85例のAAV解析結果(Rheumatol Int. 2019;39(11):1919-1926.)
◎血管炎以外でANCA共陽性となるパターン