Nat Rev Rheumatol. 2019;15(9):519-532.
Curr Opin Rheumatol. 2020;32(3):208-214.
J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017;31(3):389-404.
SLEの皮膚病変は非常に多彩でややこしい。
その理由として
-
SLEと合併して起こる皮膚症状もあれば、皮膚症状のみ起こるエリテマトーデスもありうる
-
CLEも4サブタイプに細分化され、そのサブタイプも細分化される
-
SLEと違って、CLEは自己抗体とあまり関連がない場合もある(特に円板状エリテマトーデス:DLE)
-
皮膚症状に対しての臨床試験が少なく、治療薬選択肢がSLEと若干異なる
といったことが挙げられる。
【CLEとは?】
エリテマトーデスは全身に起こる場合(Systemic lupus erythematosus, SLE)もあれば皮膚症状(Cutaneous lupus erythematosus, CLE)のみ起こる場合もある
CLEは臨床・血清学・組織学3つの特徴で定義される。
-
臨床的特徴…例)蝶形紅斑、紫外線による皮膚病変
CLEは4つのサブセットに分類される
-
急性CLE(ACLE)
-
亜急性CLE(SCLE)
-
間欠性CLE(ICLE)
-
慢性CLE(CCLE)
急性CLE
(ACLE)
|
典型例:蝶形紅斑
全身症状発症率が高い
組織:中等度のinterface dermatitis、好中球浸潤
|
|
亜急性CLE
(SCLE)
|
典型例:日光曝露部位の非瘢痕性紅斑病変
組織:軽度のinterface dermatitis
|
|
間欠性CLE
(ICLE)
|
典型例:日光曝露部位の非鱗屑性プラーク
組織:リンパ球・形質細胞様樹状細胞による斑状の真皮浸潤
|
|
慢性CLE
(CCLE)
|
典型例:中央に瘢痕を伴う円板状病変
全身症状は少ない
組織:interface dermatitisと毛包閉塞の組み合わさった、毛包・血管周囲への浸潤
|
-
皮膚病変はSLE患者の7-8割で発生し、SLE患者の患者の20-25%では皮膚症状が最初の症状
-
急性症状は炎症性紅斑が中心だが、慢性症状は鱗屑が中心
【臨床的分類】
-
CLEの4つのサブタイプは更に細分化される
表:CLEサブタイプの分類(太字は多い種類)
サブタイプ
|
種類
|
特徴
|
ACLE
|
局所ACLE
|
蝶形紅斑
|
播種性ACLE
|
Maculopapular rash
(斑点状皮疹)
|
|
水疱型ACLE
|
表皮下水疱
|
|
SCLE
|
環状SCLE
|
環状病変
|
丘疹鱗屑SCLE
|
赤色鱗屑病変、乾癬様皮疹
|
|
Rowell症候群
|
多形性紅斑様ターゲット状病変
|
|
新生児SCLE
|
新生児でのSCLE
|
|
ICLE
|
Lupus erythematosus tumidus
|
扁平上皮のないプラーク
|
CCLE
|
慢性円板状エリテマトーデス(CDLE)
|
局所的or播種性の瘢痕性病変
|
肥厚性慢性円板状エリテマトーデス
|
広範囲の過角化
|
|
深在性エリテマトーデス
|
皮下結節、皮下脂肪病変
|
|
凍瘡状エリテマトーデス
|
末端病変(四肢末端・耳・鼻)
|
|
粘膜皮膚CCLE
|
口腔内プラーク・潰瘍
|
-
ACLE
-
顔面の紅斑(蝶形紅斑)に限局した局所ACLEと、露光部に広範囲の紅斑をおこす播種性ACLEの2つに大別される
-
抗核抗体・抗dsDNA抗体陽性率が高い
-
SCLE
-
環状病変を特徴とする環状SCLEと、乾癬様皮疹を特徴とする丘疹鱗屑SCLEの2つに大別される
-
病変部位は主に首・肩・四肢の露光部で、顔の皮膚病変は稀
-
紫外線関連抗体陽性率が高い…抗SSA/Ro抗体が70~80%、抗SSB/La抗体が30~40%で陽性
-
SCLE患者のうち20−30%が全身性症状を起こし、腎炎・関節炎の合併が多い
-
ICLE
-
日光曝露部の非瘢痕性・非鱗屑性の皮膚病変が特徴
-
光線過敏はあるが、SS-A/SS-B抗体陽性率は低い(10-20%)
-
SLEの全身症状を起こすことは稀(<5%)
-
CCLEの一型とする見方もある
-
CCLE
-
慢性的な臨床経過(1ヶ月-数年)
-
慢性円板状エリテマトーデス(CDLE)が最多
-
CDLEは限局性も播種性もありうる
-
CDLEでの抗核抗体陽性率は50%以下→抗体陰性例が多い
その他、CLEに非特異的な皮膚病変が起こる場合もある
-
大別すると、血管障害・脱毛症状に分けられる
【CLEの病因】
-
遺伝的に感受性の高い個人に対して、環境因子が自然免疫・獲得免疫を活性化させることでCLEは発症すると考えられている
【診断】
-
基本的には臨床診断で、確定診断としては組織診断・ループスバンドテスト(直接免疫抗体法: DIF)
-
※ループスバンドテスト
-
皮膚生検で表皮真皮接合部の演繹反応物によるバンド形成有無を確認する
-
皮疹の存在する活動性紅斑部位・露光がなく皮疹のない部位(上腕内側など)の2ヵ所で生検を行う
-
ACLE患者の大半で検出されるが、病的所見ではない
-
Lupus erythematosus tumidusなどではループスバンドテスト陰性となり、皮膚筋炎等の他疾患でも陽性となりうる→感度特異度ともに微妙
-
SCLEにおける抗SS-A/Ro抗体を除けば、CLEを予測する抗体は存在しない
-
特にDLEは抗体陰性例が多いため注意
【治療】
-
CLE自体に推奨された治療薬・ガイドラインは特に存在しない
-
局所療法・全身療法の組み合わせが基本
◎局所療法
-
生活指導…薬歴の確認、紫外線予防、ビタミンD(VitD)摂取、禁煙
-
紫外線予防→日焼け止め使用・遮光の徹底
-
局所免疫抑制薬…ステロイド軟膏、カルシニューリン阻害薬軟膏など
-
紫外線・レーザー治療は非推奨
◎全身療法
①一次治療
-
ヒドロキシクロロキン(HCQ)+ステロイド
-
ヒドロキシクロロキン…欧米ではほぼ全例で使用。非瘢痕性脱毛、ACLEの関しては短期で効果が出るが、CCLEは改善に時間がかかる(J Dermatol. 2019;46(4):285-289.)
-
必ず眼科スクリーニングを受けること
-
ステロイド…重症・広範囲の活動性CLEで推奨されるが、副作用に注意
②二次治療
-
罹病期間長期・高疾患活動性の場合、免疫抑制薬・免疫調整薬が適応となる
-
使用される薬剤…メトトレキサート(MTX)、レチノイド、ダプソン
-
MTX…難治性CLE(主にSCLE)に使用
-
ダプソン…難治性CLE、水疱性エリテマトーデス
-
レチノイド…一部のCLE(特に肥厚性慢性円板状エリテマトーデス)で使用
-
MMF・シクロスポリン等はデータがほぼ無く、三次治療になる
③分子標的療法
-
有効性は示唆されているが、どれも症例報告レベル。臨床試験中のものが多い。
-
B細胞標的療法…リツキシマブ(RTX)、ベリムマブなど→ともに臨床試験中
-
ベリムマブ…有効性は報告されている
-
T細胞標的療法…カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、ボクロスポリンなど)
-
その他JAK阻害薬などの臨床試験が実施中
参考:EADV(欧州皮膚科性病科学会議)からの2017年CLE治療推奨
(J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017;31(3):389-404.)