膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

菊池病レビュー

菊池藤本病(KFD、以下「菊池病」で統一)は亜急性壊死性の局所的なリンパ節腫脹を特徴とする原因不明の疾患である。
予後の良い疾患であるが、しばしば軽度の発熱・全身症状を伴う場合がある。
名前は有名だが、まとまったレビューはあまりなかったので、自分なりにまとめてみた。
 
【Key-point】
  • 菊池病はアジア人若年者への急性発症の頚部リンパ節炎が典型例だが、皮膚症状・全身症状をおこす場合もある
  • 診断において最も重要なのはリンパ節生検…豊富な核残渣を伴う壊死組織・壊死組織端の組織やT細胞の浸潤
  • 最大の鑑別はSLEで、リンパ節生検をしても鑑別困難な場合がある。菊池病の経過中にSLEを発症する場合もある。
  • 治療は基本的には対症療法で問題なく、数ヶ月で自然軽快することが多い
  • 【疫学】
  • 【臨床所見】
    • ◎臨床症状
      • 表:菊池病の皮膚病変(Int J Dermatol. 2016;55(10):1069-1075.)
    • ◎検査所見
    • ◎画像検査
  • 【原因】
  • 【病理・免疫組織】
  • 【鑑別診断】
    • 表:菊池病の鑑別診断
    • 表:菊池病の鑑別疾患と鑑別ポイント(BMC Oral Health. 2019;19(1):223.)
    • 表:菊池病を疑った際行う検査(Medicine (Baltimore). 2014;93(24):372-382.)
  • 【治療・予後】
続きを読む

人工膝・股関節置換術前の抗リウマチ薬/免疫抑制剤の術前休薬推奨の2022年更新版(ACR)

 
アメリカリウマチ学会(ACR)の抗リウマチ薬/免疫抑制剤使用患者での人工関節置換術前休薬推奨が5年ぶりに更新され、プレスリリースされたので紹介。2022年夏に正式版はpublishされる予定。
 
変更点・重要な点は以下の通り
  • csDMARDsは継続可
  • 生物学的製剤は、1サイクルスキップし+1週間あけて手術…4週おきの製剤なら、最終投与から5週間後に手術
  • JAK阻害薬は術前3日前まで継続…以前は7日前だったが、フレアを避けるために短縮
  • SLEは安定していれば術前1週間前から休薬、安定していなければできる限り継続のままで手術
  • 術後の薬剤再開…創傷が治癒傾向で、縫合糸/ステープルが全て抜去され、著明な腫脹/紅斑/排膿がなく他の感染がなければ、通常術後14日目に投薬再開
  • ①csDMARDs
  • ②生物学的製剤
  • ③JAK阻害薬
  • ④重症SLE
  • ⑤非重症SLE
続きを読む

大血管巨細胞性動脈炎(LV-GCA)のミミック

J Clin Med. 2022;11(3):495.
 
巨細胞性動脈炎(Giant cell arteritis: GCA)は2つのサブタイプに分かれる
  1. Cranial GCA…頭蓋血管の血管炎。いわゆる「側頭動脈炎」
  2. Large  vessel GCA(LV-GCA)…頭蓋領域外の動脈(大動脈・総頸動脈・鎖骨下動脈など)のみの血管炎→「大血管巨細胞性動脈炎」
 
側頭動脈炎の鑑別に関しては以前まとめたので、今回はLV-GCAの方の鑑別。
【ポイント】
  • 大血管巨細胞性動脈炎(LV-GCA)は、特異的な症状・検査がないため診断困難例がある
  • 画像で大血管炎所見があってもGCAと確定診断できるわけではなく、ミミックの除外が必要
  • ただ大血管炎では病理診断は困難であるため、注意が必要
  • 大動脈炎病変の代表的なミミックとして感染症(梅毒など)・IgG4関連疾患など多岐にわたる
  • 【LV-GCAについて】
    • 表:大血管巨細胞性動脈炎(LV-GCA)の鑑別
  • 【LV-GCAミミック
    • ①感染性大動脈炎
      • ◎梅毒性
      • 結核
      • ◎コクシエラ症(Q熱)…Coxiella burnetti
      • ◎その他
    • ②IgG4関連疾患
    • ベーチェット病
    • ④エルドハイム・チェスター病(Erdheim Chester Disease: ECD
    • ⑤医原性
    • ⑥その他リウマチ性疾患での大血管炎
    • ⑦アテローム動脈硬化
    • ⑧悪性腫瘍
  • 【感想】
続きを読む

ヒドロキシクロロキンの有害事象・減感作療法

Clin Exp Rheumatol. 2021;39(5):1099-1107.
 
ヒドロキシクロロキン(HCQ)は、SLEのキードラッグだが継続困難例が散見される。代表的なのが皮疹だが、網膜症を始めとした皮膚外症状にも注意が必要。
皮膚症状でHCQ使いにくくなった症例でも、減感作療法を行う場合があるため、そのへんもまとめて紹介。
【Key-point】
  • HCQの有害事象で多いのは、皮膚では斑状丘疹状の紅斑、皮膚外では消化器症状・頭痛
  • HCQ投与早期に多い有害事象・後期に多い有害事象があり、早期有害事象はHCQ中止で改善することが多いが、後期有害事象は不可逆的なことが多い
  • HCQ再導入する手として減感作療法があるが、プロトコルはあいまい
  • 【HCQと有害事象】
    • 表:HCQでの皮膚・皮膚外有害事象
  • 【HCQによる皮膚有害事象】
    • ①斑状丘疹状の紅斑(Maculopapular rash)
    • ②色素沈着
    • ③急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)
    • ④薬剤性過敏症症候群(DRESS)
  • 【HCQによる皮膚外有害事象】
    • ①消化器症状
    • 神経症
    • ③網膜症
    • ④心毒性
  • 【減感作療法】
    • ①37日間コース(Lupus. 2019;28(7):918-919.)
    • ②26日間コース(Lupus. 2018;27(5):703-707.)
    • ③3日間コース(J Allergy Clin Immunol Pract. 2019;7(1):307-308.)
続きを読む

皮膚筋炎患者のリスクベースでの癌スクリーニング

JAMA Dermatol. 2022;10.1001/jamadermatol.2021.5841.
 
JAMA dermatologyに載っていた記事。アメリカでの推奨という点に注意が必要だが、網羅的でわかりやすい。

【自分なりのまとめ】

皮膚筋炎患者は診断から3年間は悪性腫瘍リスクが高い(J Rheumatol. 2015;42(2):282-291.)
このため
  1. 発症時のスクリーニングとして、頚部-骨盤部造影CT、上部/下部内視鏡検査、血液・尿検査、女性の場合婦人科検診・乳癌検診は最低限行う
  2. 癌リスクを皮膚筋炎の因子・患者背景から想定し、高リスクの患者に対しては3年間しっかりとスクリーニングを繰り返す
    • リスク増加…皮膚筋炎、高齢、男性、嚥下障害、皮膚潰瘍、抗TIF1γ抗体
    • リスク低下…多発筋炎、筋症状のない皮膚筋炎(CADM)、レイノー現象、間質性肺炎、血清CK著明高値、LDH高値、抗Jo-1抗体陽性、抗EJ抗体陽性
  3. 以後は各悪性腫瘍の推奨に従って、癌スクリーニングを繰り返す
という流れが現実的だろう。
 
  • 【自分なりのまとめ】
  • ①DM患者でのリスク上昇が証明されており、米国での一般人口向けガイドラインが適応できる悪性腫瘍
  • ②DM患者でのリスク上昇が証明されており、米国での一般人口向けガイドラインが確立していない悪性腫瘍
続きを読む

手指のびらん性変形性関節症(Erosive OA)

Nat Rev Rheumatol. 2022;10.1038/s41584-021-00747-3.
 
多発手指関節炎を訴える患者の中に「びらん性変形性関節症(Erosive OA)」としかいいようがない患者がいる。
多発関節炎で受診し、Seronegative RAまたはundifferential perioheral SpAか?と思って治療するが改善なく、レントゲンフォローするとOAとしか言いようがない変化をきたしており診断、というパターンが多いように感じる。(結晶性関節炎の併発があるかもしれないが…)
ただこのerosive OA、まとまった文献がほぼない。Nature Reviewが総説を出していたので読んでみた。
確立した治療法・診断があるわけではないというのが悲しい所…
 
【Key-point】
  • びらん性変形性手指関節症(EHOA)は重症の手指OAであり、遺伝子要因が示唆されている
  • EHOAの画像所見は、関節の"central erosion"が特徴的で、放射線画像も超音波画像も診断に有用
  • EHOAには炎症要素があると思われ、症状・骨びらんの出現と相関する
  • EHOAのバイオマーカーとして有用なものは見つかっていない
  • EHOAの進行を遅らせる治療は現状見つかっていない
  • 【変形性手指関節症について】
  • 【EHOAの歴史】
    • 表:EHOAの特徴
  • 【疫学・臨床所見】
    • ◎症状
    • ◎部位
    • ◎臨床的影響
  • 【血液検査】
  • 【画像検査】
  • 【治療】
  • 【結論】
続きを読む

116回国家試験 膠原病リウマチ分野

毎年のことながら、なんとなく膠原病分野を解いてみた。多分あっているだろうが、責任は負いませんのであしからず。
 
感想
  • 普通の問題ばかりだが、生物学的製剤導入前のβDグルカン測定を問題にするのはひどいと思った
  • 深く見ると「しっかり作っている」「考えさせられる」問題も多いので、作っている先生方はすごいなと思った。
 
114回:
115回:

ctd-gim.hatenablog.com

 

  • ①116A-10:続発性レイノー現象
  • ②116A-70:GPAの治療
  • ③116C-12:滲出性胸水の鑑別
  • ④116C-22:CRPとサイトカイン
  • ⑤116C-36:生物学的製剤導入前スクリーニング
  • ⑥116C-40:SLEの貧血
  • ⑦116D-44:MDA5陽性皮膚筋炎
  • ⑧116D-50:MTXによる血球減少
  • ⑨116D-64:高安動脈炎の検査
  • ⑩116F-15:好中球への自己抗体
  • ⑪116F-41:振動によるレイノー
続きを読む