膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

114回医師国家試験 膠原病リウマチA-C

114回国家試験の膠原病領域を解説してみました。答えに関しては筆者の自己見解なので注意を。この解説の真偽に関しては、「自己判断」でお願いします。一切の責任は負いかねます。
A,B非必修125問中、膠原病リウマチ領域はたったの4問でした。
問題文はhttp://kousoku.medilink-study.com/thread_top より引用。

 A13f:id:CTD_GIM:20200208220516p:image

    • 答え:BE
    • A×好発は50−70代の男性。リスクは喫煙(Lancet 2004. 1:363(9419):1412-6)
    • B○、組織学的に多いのは尿細管間質性腎炎
    • C×、臓器障害で発見されることが多い
      • 肝胆膵障害
      • 後腹膜繊維症、大動脈炎
      • 頭頸部病変
      • ミクリッツ病±臓器障害
    • D×、半月体形成は基本的には血管炎に伴うもの。中高年に多い点はIgG4と似る
      • 調べた限りではIgG4腎炎ガイドラインでは、壊死性半月体糸球体腎炎に関しての記述なし。
    • E○、病態次第だがPSL30-40mg/day程度で開始し、再発例では免疫抑制剤代替という流れ。PSL減量での再発リスクは比較的高い。
    • A20
    • f:id:CTD_GIM:20200208220527p:image

    • 答え:E
      • 抗カルジオリピン抗体/抗β2GPI抗体陰性で「激症型抗リン脂質抗体症候群ではないよ」とアピールしているものと思われる。激症型の場合、血管閉塞によって脳血管障害を起こしうるので、鑑別となる。
    • CNS(中枢神経)ループスの治療。重症例以外はヒドロキシクロロキン(+ステロイドで漸減)だが、重症ネフローゼ・中枢神経障害がある場合、早急な治療が必要。
    • 治療の内容は「即効性のある薬」(リリーバー)での寛解導入→「長期的な抑制の薬」(コントローラー)(リリーバーとコントローラー兼ねる薬あり)
    • ただ、国試レベルでは
      • リリーバー:ステロイド+シクロホスファミドorミコフェノール酸モチル併用
      • コントローラー:ステロイド漸減+アザチオプリンorミコフェノール酸モチル併用 で覚えておけば十分
    • A:コルヒチンは自己炎症性疾患・ベーチェット病。調べてみるとループス心筋炎に対するステロイド漸減時に使用したというレポートもあるが(Lupus. 2015 Dec;24(14):1479-85.)、一般的ではないしリリーバーにはなり得ない薬。
    • B:抗TNFα製剤は薬剤性ループスの原因でもあり(An Bras Dermatol. 2015;90(3 Suppl 1):125–129. )、使用非推奨。
    • C:SLEにおけるメトトレキセートはコントローラー。
    • D:IL6受容体抗体(Tocilizumab/Sarilumab)は一般的にはRAの治療薬。SLEでの使用に関しては、調べた限り第2相試験で失敗している。(Ann Rheum Dis. 2017 Mar;76(3):534-542.
    • 「無痛性口腔内潰瘍」というのはSLEの特徴で、硬口蓋に多い、というのは覚えておいた方がいい。
  1. A39
    • f:id:CTD_GIM:20200208220532p:image

    • f:id:CTD_GIM:20200208220539p:image

    • f:id:CTD_GIM:20200208220543p:image

    • 答え:A
      • 症状としては
        • 主症状3つ:口腔内再発性アフタ潰瘍、皮膚症状(結節性紅斑)、外陰部潰瘍
        • 副症状:関節痛 がある。
      • これに加えて眼症状があれば完全型ベーチェット病、なければ不完全型ベーチェット病
      • 左鼠蹊部に膿瘍形成があるが、比較的珍しい症状。
    • B:高安動脈炎の症状は、倦怠感等の全身症状・四肢間欠性跛行が多く、皮疹は比較的少ない(13%)(Mayo Clin Proc. 2013:88(8);822-30)
    • C:壊死性筋膜炎にしては経過が長すぎる。もし陰部にあればフルニエ壊疽。
      • ケースレポートではベーチェットに伴う血栓症から壊死性筋膜炎を起こしたという症例もあり(BMJ Case Rep. 2016;2016:bcr2015211983.)、興味深い
    • D:抗リン脂質抗体症候群の症状は、血栓症が主。劇症型だとTTP/HUSを起こしうる。
    • E:May-Thurner症候群は慢性的な右腸骨静脈による圧迫で、左総腸骨動脈狭窄をきたす病気。慢性的な狭窄によって側副血行路発達が多い。
  2. B49/50
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    • 答え:B…朝のこわばりを表している。手指関節痛で「つまむ」力が弱くなっている。
      • 慢性的な末梢関節痛+炎症反応高値→関節リウマチ(RA)
      • 圧痛/腫脹部位は少なくとも小関節8カ所はあり(どの指かくらいは書いて欲しい…)、6週間以上持続し、炎症反応高値であればACR/EULAR2010基準では5or7点にはなる。
      • A:爪乾癬を表しているものと思われる。皮疹はないらしいので×。臨床的には頭皮/臀裂/爪が好発部位なのでしっかり見る。そもそも爪肥厚も広い意味では「皮疹」では?
      • B:ちなみに、「使っていると楽になる」がRA(午前中にひどい)。「使ってくるとしんどい」が変形性関節症(午後にひどい)。
      • D:小字症。パーキンソン症状の一つ
      • E:おそらくは手根管症候群/ドケルバン腱鞘炎。RAでも痺れは起こりうるが、「使っていると楽になる」はず。
    • f:id:CTD_GIM:20200208220559p:image

      • 答え:d
          • 抗CCP抗体の特異度は95%と高いが、発症時の特異度は 50%と低い(陰性でもseronegative-RAの可能性あり)。
          • 偽陽性として有名なのは結核。(Arthritis Rheum 2009;61:1472-1483
      • ac×:どちらも炎症で非特異的に上がる。
      • b×抗核抗体は「偽陽性」が非常に多い。理由なく測るのは、何の意味もない。
      • e×:リウマトイド抗体も「偽陽性」があまりにも多い。有名なものとしては感染性心内膜炎。
 
(感想)
  • 典型例が出てくるのが国試なので、特に突っ込みどころはない問題ばかりだった。膠原病リウマチ分野なんて難しくしたら、誰も解けなくなるので当たり前というか当たり前か。
  • 数少ない問題にもかかわらず、2問(A20,A39)も抗リン脂質抗体症候群が問題文に出現しているので、そのうち答えとしてでうるのかもしれない?