114回国家試験の膠原病領域を解説してみました。答えに関しては筆者の自己見解なので注意を。この解説の真偽に関しては、「自己判断」でお願いします。一切の責任は負いかねます。
A,B非必修125問中、膠原病リウマチ領域はたったの4問でした。
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答え:BE
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A×好発は50−70代の男性。リスクは喫煙(Lancet 2004. 1:363(9419):1412-6)
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B○、組織学的に多いのは尿細管間質性腎炎
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C×、臓器障害で発見されることが多い
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肝胆膵障害
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後腹膜繊維症、大動脈炎
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頭頸部病変
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ミクリッツ病±臓器障害
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D×、半月体形成は基本的には血管炎に伴うもの。中高年に多い点はIgG4と似る
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調べた限りではIgG4腎炎ガイドラインでは、壊死性半月体糸球体腎炎に関しての記述なし。
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E○、病態次第だがPSL30-40mg/day程度で開始し、再発例では免疫抑制剤代替という流れ。PSL減量での再発リスクは比較的高い。
- A20
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答え:E
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抗カルジオリピン抗体/抗β2GPI抗体陰性で「激症型抗リン脂質抗体症候群ではないよ」とアピールしているものと思われる。激症型の場合、血管閉塞によって脳血管障害を起こしうるので、鑑別となる。
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治療の内容は「即効性のある薬」(リリーバー)での寛解導入→「長期的な抑制の薬」(コントローラー)(リリーバーとコントローラー兼ねる薬あり)
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ただ、国試レベルでは
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B:抗TNFα製剤は薬剤性ループスの原因でもあり(An Bras Dermatol. 2015;90(3 Suppl 1):125–129. )、使用非推奨。
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C:SLEにおけるメトトレキセートはコントローラー。
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D:IL6受容体抗体(Tocilizumab/Sarilumab)は一般的にはRAの治療薬。SLEでの使用に関しては、調べた限り第2相試験で失敗している。(Ann Rheum Dis. 2017 Mar;76(3):534-542.)
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「無痛性口腔内潰瘍」というのはSLEの特徴で、硬口蓋に多い、というのは覚えておいた方がいい。
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A39
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答え:A
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症状としては
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主症状3つ:口腔内再発性アフタ潰瘍、皮膚症状(結節性紅斑)、外陰部潰瘍
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副症状:関節痛 がある。
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左鼠蹊部に膿瘍形成があるが、比較的珍しい症状。
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B:高安動脈炎の症状は、倦怠感等の全身症状・四肢間欠性跛行が多く、皮疹は比較的少ない(13%)(Mayo Clin Proc. 2013:88(8);822-30)
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C:壊死性筋膜炎にしては経過が長すぎる。もし陰部にあればフルニエ壊疽。
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D:抗リン脂質抗体症候群の症状は、血栓症が主。劇症型だとTTP/HUSを起こしうる。
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E:May-Thurner症候群は慢性的な右腸骨静脈による圧迫で、左総腸骨動脈狭窄をきたす病気。慢性的な狭窄によって側副血行路発達が多い。
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B49/50
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答え:B…朝のこわばりを表している。手指関節痛で「つまむ」力が弱くなっている。
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慢性的な末梢関節痛+炎症反応高値→関節リウマチ(RA)
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圧痛/腫脹部位は少なくとも小関節8カ所はあり(どの指かくらいは書いて欲しい…)、6週間以上持続し、炎症反応高値であればACR/EULAR2010基準では5or7点にはなる。
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A:爪乾癬を表しているものと思われる。皮疹はないらしいので×。臨床的には頭皮/臀裂/爪が好発部位なのでしっかり見る。そもそも爪肥厚も広い意味では「皮疹」では?
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B:ちなみに、「使っていると楽になる」がRA(午前中にひどい)。「使ってくるとしんどい」が変形性関節症(午後にひどい)。
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D:小字症。パーキンソン症状の一つ
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E:おそらくは手根管症候群/ドケルバン腱鞘炎。RAでも痺れは起こりうるが、「使っていると楽になる」はず。
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答え:d
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抗CCP抗体の特異度は95%と高いが、発症時の特異度は 50%と低い(陰性でもseronegative-RAの可能性あり)。
(感想)
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典型例が出てくるのが国試なので、特に突っ込みどころはない問題ばかりだった。膠原病リウマチ分野なんて難しくしたら、誰も解けなくなるので当たり前というか当たり前か。
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数少ない問題にもかかわらず、2問(A20,A39)も抗リン脂質抗体症候群が問題文に出現しているので、そのうち答えとしてでうるのかもしれない?