学生へのレクチャー資料も兼ねて戯れに解いてみました
多分あっているだろうが、責任は負いませんのであしからず
感想
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やけに関節リウマチの関節外症状やら膠原病の心血管合併症と言った変わり種が多い
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普通に膠原病の典型症状→治療みたいな問題が少ない
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治療薬に関する問題はほぼゼロ!
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難しくはないが、枝葉末節をつついているような気がしないでもない…
- ①115A-1
- ②115A-10
- ③115A-12
- ④115-A27
- ⑤115A-44
- ⑥115A-72
- ⑦115B-4
- ⑧115C-57
- ⑨115D-9
- ⑩115D-38
- ⑪115D-41
- ⑫115D-54
- ⑬115D-63
- ⑭115F−33
- ⑮115F-49
- (おまけその1)
- (おまけその2)
①115A-1
→e
初っ端から膠原病でビビらせてくる
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強皮症腎クリーゼ…腎臓の微小血管(葉間動脈など)の虚血→急性尿細管壊死→腎不全・高血圧
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→腎臓の血管が主病態で、「強皮症患者の急激な腎障害・高血圧」で考える
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治療はACE阻害薬を投与することでの降圧
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強皮症TMA…血小板減少に伴う多臓器障害の一部として腎機能障害を起こす
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→血小板減少が主病態で、「強皮症患者の緩やかな血小板減少→溶血→腎機能障害」で考える
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血圧は正常でもいい
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治療はTTPに準じた血漿交換など
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ただ、問題文に「強皮症腎の患者で」と書いてある以上は答えはeなのだろう
a…大血管炎の合併症→高安動脈炎・巨細胞性動脈炎
b…軸性脊椎関節炎(ax-SpA)
c…みんな大好き成人Still病
d…膠原病関連ではSLE・ANCA関連血管炎とか
②115A-10
→e
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高安動脈炎ときたら、「若年女性」の「大血管炎」
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高安動脈炎は分泌領域からⅠ−Ⅴ型に分類されるが、いずれにしても「大動脈+その分布」への病変が多いことは確か
a…若年女性
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男女比は1:8程度、若年に多い
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ただ組織診断が非常に難しい(大血管の生検は困難)ので、「巨細胞性動脈炎とどう鑑別しているのか?」と言われると「罹患年齢等の臨床情報から判断している」以上の答えはあまりない
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屁理屈をこねると臨床医学の問題に対しての答えなんてないので、「空気を読め」という力も含めて国試なのだろう
b…膠原病では、関節リウマチが喫煙との関連で有名
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血管炎と喫煙の関連は聞いたことなかったので調べてみると、後ろ向き研究的には関係なさそう(Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2019;36(3):243-250.)
c…水晶体偏位ときたら、Marfan症候群など
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高安動脈炎で多い眼球症状は、大血管の罹患による網膜中心動脈の虚血→視力障害
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ちなみに「高安動脈炎」の発見者の高安右人先生は眼科医で、網膜所見から発見に至った
d…浅側頭動脈が多いのは側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
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解説はa同様
③115A-12
→a,e
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眼の構造物の内角膜・強膜は関節軟骨と似た組織(糖タンパク質等)が多い→眼科合併症としては角膜・強膜が多いとされる
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関節リウマチはSjögren症候群合併例が多いのも理由
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角膜病変…乾燥による角結膜炎・角膜感染症
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上強膜炎…ドライアイも関与
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強膜炎…RA患者の0.7〜6.3%で発生?(Br J Ophthalmol. 1976; 60(3):192)
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視力予後悪く注意
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強膜炎に伴って虹彩毛様体炎が起こる場合がある
b…「後部ぶどう膜炎」は起こるが、その場合は脈絡膜炎・網脈絡膜炎
c…糖尿病などが原因
d…甲状腺機能亢進症
④115-A27
→a
SLEというよりも循環器内科の問題ですね、これ
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SLEとか関係なく奇脈あり+心嚢水という時点で閉塞性の病態→a
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心電図で四肢誘導低電位というのも心外膜炎>心筋炎となる
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SLEの心病変としては、心筋炎・疣贅性心内膜炎(Libman-Sacks)・肺動脈性肺高血圧症がある
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じゃあ他病態の合併もありうるんじゃないですか?と言われると非常に困る。心嚢水・奇脈という点から「最も考えられる」のは心外膜炎というだけだろう
b…Libman-Sacks
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症状があわない+SLEの病勢が相当に不良なときしか起こらないのも特徴
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呼吸困難症状というよりは疣贅による塞栓症状が多い
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当然だが、ステロイド内服しているSLEでは感染性心内膜炎のリスクも高い
d
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ただ、エコーでの右心系拡大所見がないので否定的
e
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dとほぼ同様
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肺高血圧はもう少し慢性経過(数ヶ月単位)が多い
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確定診断はカテーテル検査しないとわからないが…
⑤115A-44
→b
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ドライアイ・ドライマウス症状・関節炎?→関節リウマチ+Sjögren症候群と考えるのが妥当
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Sjögren症候群の50%程度に関節症状があり、RF陽性例も多い(RA合併かどうかは別として…)
c…皮膚筋炎、特にCADM(clinical amyopatic dermatomyositis)→間質性肺炎合併
d…SLE
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ただSLE患者でもドライアイ症状出ることもある(Annals of the Rheumatic Diseases 2001;60:1103-1109.)
e…視神経脊髄炎
⑥115A-72
→de
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下肢深部静脈血栓症→肺塞栓と考える
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若年女性の血栓リスクとしては
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一般的なもの…帝王切開、肥満、出血、高血圧、喫煙、ピル内服
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疾患…ATⅢ欠損、プロテインC/S欠損症、抗リン脂質抗体症候群など
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流産歴考慮すると、ATⅢ欠損、プロテインC/S欠損症、抗リン脂質抗体症候群などの精査が望ましいだろう
⑦115B-4
→e
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後腹膜線維症は、有名なところとしてはIgG4関連疾患
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※後腹膜線維症の分類
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特発性…IgG4関連疾患、IgG4関連「非」関連
ab…関節リウマチに伴う血管炎(悪性関節リウマチ)で見られることが多い
c…SLE同様、関節リウマチでも漿膜炎として見られる
d…RA-ILDとして非常に多い
⑧115C-57
→ac
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混濁している時点で炎症はあるはず→選択肢のうち炎症性なのはac
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最近まとめたばっかりですね
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Bd…血性関節液が多い
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e…関節液の細胞数は少ないことが多い→透明に近い関節液
⑨115D-9
なんでこんなに膠原病の心血管合併症ばっかり問題に出すんだろうか…?
→d
a
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強皮症は肺高血圧症の他、様々な心合併症を起こすが、少なくとも低頻度
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伝導障害…不整脈、伝導ブロック
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血管病変…微小血管障害
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心筋障害…心筋炎、拡張障害など
b
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SS-A抗体陽性での妊娠は、胎児の房室ブロックリスクとなる
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ただ、成人のSjögren症候群での心血管疾患は非常に稀
c
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代謝低下→心拍数低下・収縮能低下→心拍出量低下 というのはある
e
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④(115-A27)参照
⑩115D-38
→d
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IgG4関連疾患は基本的に「臓器・組織が腫れる」病気
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レビュー↓
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IgG4関連疾患は大別して4つの表現型に分かれる(Ann Rheum Dis 2019;78:406-412.)
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肝胆膵タイプ…胆管狭窄、膵びまん性腫大→bc
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後腹膜+大動脈タイプ…後腹膜線維症、大動脈壁肥厚・大動脈瘤
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頭頚部限局タイプ…顎下腺・涙腺腫脹→本症例が近い
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ミクリッツ病+全身症状タイプ
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※腎腫大は1-4どれでも割と見られる
多発性骨融解像は多発性骨髄腫など
⑪115D-41
→e(だろうけど釈然としない)
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副鼻腔症状、難聴、鞍鼻、鼻中隔穿孔、空洞を伴う肺結節、糸球体腎炎らしき尿所見からは血管炎らしさはある
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ただ、ANCA関連血管炎の診断の基本は生検結果(+ANCA測定)なので、この症状だけで「血管炎が最も疑わしい」というのは若干言い過ぎのような気が…
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そういう意味ではあまりお上品な問題ではない
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現実的には悪性腫瘍・真菌(特にアスペルギルス)・結核を除外しつつ、血管炎かどうか副鼻腔/肺/腎臓からの生検結果から診断していく、はず…
⑫115D-54
→d
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強膜炎・下腿潰瘍・紫斑・炎症反応高値・RF高値・低補体血症→悪性関節リウマチ(関節リウマチに伴う血管炎)を考える
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どんだけ関節リウマチの関節外症状が好きなんだ…
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繰り返すが、血管炎の診断の基本は「組織診断」→本症例で生検できそうなところは皮膚のみ
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悪性関節リウマチの1988年診断基準↓
⑬115D-63
→a
今更やけに素直な問題
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日光過敏、ネフローゼ、抗核抗体強陽性、補体低下ときたら国試レベルではSLE以外は普通考えない
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光学顕微鏡…基底膜の著明な肥厚、wire-loop病変あり、一部メサンギウム細胞も増殖
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蛍光免疫染色(C1q)…糸球体基底膜・メサンギウムに補体(C1q)沈着→普通はループス腎炎を考える
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日腎会誌 2009;51(5):521-527より
⑭115F−33
→de
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低補体血症が生じる原因としては、
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「激しい炎症」…補体産生の活性化→補体の産生<消費
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敗血症
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肝不全など
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免疫複合体の沈着=所謂「Ⅲ型アレルギー」
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SLE・シェーグレン
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急性糸球体腎炎…感染性・膜性増殖性糸球体腎炎
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一部の血管炎
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⑮115F-49
→b
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ACR/EULARの関節リウマチ治療recommendationそのまんま
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Non-DMARDsで疼痛管理+csDMARDsで改善乏しい→bDMARDsというプロトコルになっている
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Annals of the Rheumatic Diseases 2020;79:685-699.
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a…RAでコルヒチンは一般的ではない。最近は虚血性心疾患やら何やらに応用されつつあるが…
cd…パルス・IVIGをRAに行うことはない
e…様子見ていると不可逆的な骨破壊・変形を起こすので絶対に様子見てはならない
(おまけその1)
(おまけその2)
これはひどい笑…115E29