膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

ANCA関連血管炎の新分類基準(ACR/EULAR2022年基準)

Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41986.
Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41983.
Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41982.
 
ACR(アメリカリウマチ学会)/EULAR(ヨーロッパリウマチ学会)合同でのANCA関連血管炎の新分類基準が出たので紹介
いつものことだがあくまでも「分類基準」であっても「診断基準」ではない
  • あくまでも研究用の基準。他血管炎と区別することを目的としており、診断を確立させる目的ではない
  • 血管炎を模倣する疾患(ミミック)除外が前提条件
ただ内容から「ANCA関連血管炎らしさ」を知るという意味で役立つ
  • ①多発血管炎性肉芽腫症(GPA)分類基準(Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41986.)
    • ◎感度分析
  • ②顕微鏡的多発血管炎(MPA)分類基準(Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41983.)
    • ◎感度分析
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)(Arthritis Rheumatol. 2022;10.1002/art.41982.)
    • ◎感度分析
  • 【感想】
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トファシチニブと心血管・癌リスク(ORAL-Surveillance試験)

N Engl J Med. 2022;386(4):316-326.
  • トファシチニブ(Tofacitinib)に代表されるJAK阻害薬は、経口薬ながら生物学的製剤(bDMARDs)と同じくらいの効果を持つ薬剤である
  • ただ長期使用の有害事象については不明な点が多く、このORAL-Surveillance試験でようやく報告された
  • 以前からずっと製薬会社が報告していて、今更感ある内容ではある内容ではあるが、一応まとめ
 
【Key point】
  • 心血管リスクの高いRA患者に対してのTofacitinib投与は、TNF阻害薬と比較してMACE(major adverse cardiac events)・癌リスクが高い
  • その傾向は65歳以上の患者で顕著
  • Tofacitinibは、TNF阻害薬と比較して帯状疱疹リスクが高い
  • 【Intro】
  • 【Method】
  • 【Result】
    • ◎Primary outcome
      • ①MACE発生率
      • ②癌発生率
    • ◎Secondary Endpoint
    • ◎RAへの有効性
  • 【Discussion】
  • 【感想】
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仙腸関節炎の鑑別

J Inflamm Res. 2018;11:339-344.
BMC Musculoskelet Disord. 2017;18(1):170.
 
仙腸関節炎は、軸性脊椎関節炎(AxSpA)の症状として有名だが、AxSpAに特異的な症状というわけではなく「ミミック」も多く存在する。
 
【Key-point】
  • 仙腸関節炎/関節痛は脊椎関節炎で有名な所見だが、ミミックも多々存在する
  • ミミックとして多いのは非炎症性疾患(DISH・腸骨硬化性骨炎など)で、画像・病歴での鑑別が重要
  • 一方で病理所見でしか鑑別困難な例もある
 

 

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膠原病による胆嚢炎

胆嚢炎は膠原病内科からするとあまり関係のない疾患に見えるが、稀に「膠原病(特に全身性血管炎)に伴う胆嚢炎」というものもある。
あまりまとまった報告はないが、自分なりにまとめてみた。
 

【Key-point】

  • 「血管炎に伴う胆嚢炎」という概念がある
  • 血管炎による胆嚢炎には2パターンある…全身性血管炎による胆嚢炎・胆嚢限局血管炎
  • 全身性血管炎に伴う胆嚢炎は、胆嚢炎以外の症状を呈していることが多いため、そちらに注目すると診断できる
  • 診断のゴールドスタンダードは胆嚢の病理所見→胆摘は診断兼治療
  • 全身性血管炎に伴う胆嚢炎の場合、免疫抑制剤投与が治療の中心となることが多い
  • 胆嚢炎で説明できない全身症状のある無石性胆嚢炎の場合・胆嚢病理で血管炎所見があった場合、膠原病の合併を疑ってもいいかもしれない
  • 【Key-point】
  • 【総論】
    • 表:胆嚢限局血管炎と全身性血管炎による胆嚢炎の比較
  • 【各論】
    • EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)
    • PAN(結節性多発性動脈炎)
    • MPA(顕微鏡的多発血管炎)
    • IgA血管炎
    • SLE(全身性エリテマトーデス)
    • 関節リウマチ
    • その他
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側頭動脈炎の鑑別

J Clin Med. 2022 Jan 5;11(1):275.
 
側頭動脈の血管炎がある場合、通常巨細胞性動脈炎(GCA)を想起するが、他の原因の場合もある
側頭動脈炎=巨細胞性動脈炎でない事がよく分かるレビュー
 
Key-point
  • 側頭動脈炎の原因として最多なのは巨細胞性動脈炎だが、側頭動脈に炎症を起こす疾患は他にもある
  • 非炎症性疾患としてはアテローム動脈硬化、炎症性疾患としてはANCA関連血管炎に注意する
  • 診断のゴールドスタンダードは側頭動脈生検だが、超音波所見で鑑別可能な場合もある
  • 生検を実施しない場合、ステロイドへの治療反応不良例に対して再度の病歴聴取・検査・生検等で鑑別することが重要
  • ◎側頭動脈血管炎の鑑別診断
  • ①巨細胞性動脈炎(GCA
  • ②壊死性血管炎
    • ◎ANCA関連血管炎による側頭動脈炎
    • ◎結節性多発性動脈炎による側頭動脈炎
  • ③血管外膜周囲の炎症
  • ④IgG4関連疾患
  • ⑤サルコイドーシス
  • ⑥水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)血管炎
  • ⑦側頭動脈の外傷後
  • ⑧アテローム動脈硬化
  • ⑨カルシフィラキシス(Calciphylaxis)
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全身性強皮症における炎症性関節炎

全身性強皮症(SSc)患者に関節炎・腱鞘炎症状はよく合併し、実臨床で悩むことは多い
一方で全身性強皮症の関節炎への臨床試験はほぼなく、エビデンスは非常に限られている。
 
【Key point】
  • SScにおける関節炎はかなり高頻度であり、原因は多彩…SScそのもの、オーバーラップなど
  • SSc関連関節炎は皮膚症状の合併による拘縮が問題となることが多い
  • 画像所見では、DIP関節を中心とした骨変化・腱鞘の石灰化・局所的な石灰化所見が特徴的である
  • 治療法は確立したものはなく、経験的にヒドロキシクロロキン・メトトレキサートを用いることが多い。生物学的製剤の有用性も示唆されている。
  • 【SScと関節炎】
  • 【SSc関連関節炎の治療】
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再発性多発軟骨炎レビュー

Rheumatology (Oxford). 2018;57(9):1525-1532.
 
再発性多発軟骨炎は、非常に稀な自己抗体陰性の自己免疫性疾患だが、一例一例に悩む症候群である。
最近はVEXAS症候群(MDS等との合併)・MAGIC症候群(ベーチェット病様病変の合併)もあってややこしい。
 

【再発性多発軟骨炎とは?】

  • 再発性多発軟骨炎(Relapsing polychondritis: RPC)は稀な自己免疫性疾患の一つである
  • 症状としては、主に耳・鼻・関節・起動などの軟骨構造の免疫介在性破壊をおこす
  • 原因ははっきりしないが、軟骨・胸膜などに多い2型コラーゲンに対する自己免疫反応が原因とされる
  • 英国では年間140万人に1人が罹患し、標準化死亡比は2.16
  • 発症ピークは40-55歳で、白人に多い
  • 臨床症状は多彩で、聴覚・視覚症状が中心だが、30−50%が肺合併症を持っている
    • 重大な呼吸器症状を持つRPC患者は予後不良
    • 死因と関連するのは、喉頭気管気管支疾患・感染症・心血管合併症
  • 【再発性多発軟骨炎とは?】
  • 【RPC臓器病変】
    • ①耳
    • ②目
    • ③鼻
    • ④関節
    • ⑤心血管病変
    • ⑥皮膚
    • ⑦中枢神経病変
    • ⑧腎臓
    • ⑨消化器
    • 咽頭・気管・肺
    • ⑫血液(※追記)
  • 【診断・評価】
    • ◎初期評価
  • 【治療】
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