BSR(British Society for Rheumatology、英国リウマチ学会)からの成人患者のリウマチ科への紹介基準
ヨーロッパのリウマチ科での話であり、日本にそのまま適応できるかは微妙な部分もあるが、かなりまとまった内容のため紹介
あくまで「ガイダンス」であり、以下に注意
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プライマリ・ケア医は、鑑別診断に対して確信があるわけではなく、気になった症状に基づいて紹介する
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リウマチ専門機関に紹介される内容は、地域の筋骨格・整形外科・ペイン科サービスの充実度に影響される
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リウマチ科といっても様々なところがあり、症状によっては骨粗鬆症専門医のような他の専門科に紹介されることもある
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リウマチ科へのガイダンスではない
①リウマチ科に紹介すべきもの
リウマチ科に紹介すべきもの
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1.関節リウマチ(RA)疑い
炎症反応(ESR/CRP)が正常・抗CCP抗体やリウマチ因子(RF)陰性でも、6週間以上、以下の症状が持続する場合は紹介
(※慢性末梢多発関節痛は、検査データ異常なくても紹介したほうがいい)
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2.脊椎関節炎(SpA)疑い(炎症性背部痛)
3ヶ月以上持続する腰痛があり、以下の4項目以上が当てはまるものは紹介
(※炎症性腰痛疑い、腰痛+末梢関節痛は紹介する)
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3.乾癬性関節炎(PsA)・その他の末梢性脊椎関節炎(pSpA)疑い
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4.原因不明の持続性滑膜炎/関節痛(単関節/多関節)
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5.膠原病疑い
症状のない自己抗体陽性*
症状別
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6.巨細胞性動脈炎(GCA)疑い(救急紹介を考慮)
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7.血管炎疑い
感染症否定的・他疾患で説明できない炎症反応上昇を伴う全身状態不良がある場合、考慮する
臓器障害所見に注意…例)皮膚梗塞、視力低下、呼吸不全、心不全、急性腹症、急性腎障害、急性感覚・運動障害
その他血管炎症状として考えられうるもの
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8.痛風*
痛風はプライマリ・ケアで診断・管理可能な疾患だが、以下の場合はリウマチ科相談考慮
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9.リウマチ性多発筋痛症(PMR)*
PMRはプライマリ・ケアで診断・管理可能な疾患だが、以下の場合はリウマチ科相談考慮
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10.線維筋痛症疑いだが、他の炎症性疾患を除外することで診断する必要のある場合
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11.骨粗鬆症*
PMRはプライマリ・ケアで診断・管理可能な疾患だが、以下の場合はリウマチ科相談考慮
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12.パジェット病
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*:A&G(Advice & Guidance: 専門科へのWeb相談サービス)に個別に相談することを考慮
(※がついているものはブログ主注)
②リウマチ科に紹介すべきでないもの
リウマチ科に紹介すべきでないもの(地域の医療資源によって左右されうる)
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緊急病態…例)敗血症性関節炎疑い
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悪性腫瘍疑い…例)骨悪性腫瘍など
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症状のない自己抗体陽性*
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変形性関節症
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理学療法士、筋骨格科(MSK)、整形外科に紹介
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非炎症性背部痛
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理学療法士、筋骨格科(MSK)、整形外科に紹介
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軟部組織疾患
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理学療法士、筋骨格科(MSK)、整形外科に紹介
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pain service(※日本でいうペインクリニック)に紹介
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ハイパーモービリティー
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理学療法士に紹介
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*:A&G(Advice & Guidance: 専門科へのWeb相談サービス)に個別に相談することを考慮
(※がついているものはブログ主の注釈)
③※補足:症状のない自己抗体陽性について
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「症状無いが自己抗体陽性」の紹介については、微妙な問題
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地域のリウマチ科の潤沢さに依存する
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例えば抗核抗体(ANA)は加齢で陽性率が増し,健常人にもみられる+抗核抗体40-80倍低力価陽性ならほぼ意味がないことが多い
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逆に疾患特異的抗体陽性(例えばARS抗体)なら紹介の方が良いが、その基準はかなり曖昧
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「リウマチ性疾患を疑わない限り、自己抗体取るな」という原則はあるが、その逆についての基準はない
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個人的には、なんかそれっぽい自己抗体陽性なら、その抗体が陽性になりやすい疾患の症状をスクリーニングしてもらえると助かる
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自分としては「よくわからない症状があれば、自己抗体が陽性だろうと陰性だろうとリウマチ科紹介してもらいたい」くらいの気持ち