膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

皮膚筋炎と関節リウマチのオーバーラップ

関節リウマチは頻度の多い疾患であるため、他膠原病と合併することはよくあるが、皮膚筋炎との合併もありうる。特に典型的な皮膚筋炎所見を取らない抗ARS・MDA-5抗体と合併した場合非常に厄介である。
 
まとめ
  • 抗ARS抗体症候群自体が関節炎を起こし、関節リウマチと誤診されることがある…関節炎→関節リウマチと診断→途中で皮膚筋炎症状発→抗ARS症候群と発覚というパターン
  • 本当に抗ARS抗体症候群と関節リウマチが合併する場合もありうるが、重度の関節炎が特徴。TNF阻害薬は避けたほうがいいかもしれない。
  • 抗MDA5抗体も関節リウマチを合併しうるが、非常にまれ(のはず)

①抗ARS抗体

抗ARS抗体症候群は、典型的な皮膚症状+筋症状のパターンの他、間質性肺炎のみ・関節炎合併など様々な形態を取る。
参考:
特に関節炎頻度は高く、抗ARS抗体症候群患者の50%以上で関節炎を起こすため、関節リウマチのミミックとしても有名である。(Autoimmun Rev. 2013;12(3):363-373.)
  • 抗Jo-1抗体でも他の抗ARS抗体でも関節炎症状頻度は差がないとされる
パターンとしては、関節炎→関節リウマチと診断→途中で皮膚筋炎症状発生でARS症候群と発覚というパターンが多い(J Clin Rheumatol. 2021;27(4):150-155.)
抗ARS抗体症候群だけでも関節炎を起こしうるが、関節リウマチ合併による関節炎の場合もある。
…フランス多施設後ろ向き解析(Medicine (Baltimore). 2015;94(20):e523.)
  • 抗ARS抗体症候群患者284人中7人が抗CCP抗体(ACPA)陽性
  • ACPA陽性例17例と年齢性別が一致したACPA陰性例34例の比較データ
  • 抗ARS抗体症候群で抗CCP抗体陽性の場合、関節リウマチオーバーラップ・難治性びらん性関節炎リスクが高くなる
  • ARS症候群・抗CCP抗体陽性患者のうち、約3分の1は当初関節リウマチのみと診断されたが、フォローアップ中にARS症候群の症状を呈した
  • 肺・筋・皮膚病変の発生率は、ACPA陽性/陰性で差はない
  • TNF阻害薬使用の場合、ARS症候群がフレアするリスクは高くなる(6例中2例で悪化…2例筋炎、1例間質性肺炎
  • Rituximabを使用した8例全例で関節・関節外症状共に改善した
 
ということで、
  • 関節リウマチ疑い症例で皮膚・筋(・間質性肺炎)所見がある場合、ARS抗体を測定する
  • 抗ARS抗体症候群で関節炎がある場合、RF/ACPAを測定し、関節リウマチ合併有無を確認する
  • ARS・関節リウマチ合併症例の場合、治療としてはRituximabがいいかもしれない(保険適応外)
 

②抗MDA-5抗体

無筋症性皮膚筋炎(CADM)・急速進行性間質性肺疾患(RP-ILD)で有名な抗体。
参考
ケースレポートレベルでは関節リウマチ合併報告あるが、探す限りでは2例のみ。
  • 75歳女性、RF/ACPA陽性関節リウマチで治療中間質性肺炎発症し、MDA5抗体陽性皮膚筋炎と診断(Intern Med. 2019;58(5):737-742.)
  • 49歳女性、RF/ACPA陽性関節リウマチと共にMDA5抗体陽性皮膚筋炎発症し、間質性肺炎で死亡(Int J Rheum Dis. 2022;10.1111/1756-185X.14430.)
ただ、個人的には結構いると思う。
 

③参考:皮膚筋炎についての過去記事

④参考:関節リウマチと他膠原病合併についての過去記事

SLE+関節リウマチ→Rhupus

ctd-gim.hatenablog.com

強皮症

ctd-gim.hatenablog.com

乾癬性関節炎

ctd-gim.hatenablog.com