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抗核抗体検査には間接蛍光抗体法(IIF)とsolid phase immunoassay(SPAs)に分かれる
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IIFはかなり検査に手間がかかるため、検者によるばらつきが多く特異性が低い
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一方でSPAは自動化検査であり、再現性・特異性が高い
検査方法
①HEp-2IIF
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HEp-2細胞気質に付着した自己抗体を蛍光染色し、光学顕微鏡で観察することで判定する→判定は手動
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結果は抗体価と染色パターンに分かれる
②solid phase immunoassay(SPAs)
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最近導入されつつある方法
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自己抗体が特定の抗原に付着→ELISA・FRIA法などで、特定の自己抗体が増幅するという仕組み→全自動
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様々な方法が開発されつつある(PMATなど)
特性
①HEp-2IIF
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抗体価
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抗核抗体は健常者でも結構な頻度で陽性となるため、IIFによるスクリーニングは完全なものではない
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40倍で31.7%、80倍で13.3%、160倍で5.0%、320倍で3.3%が健常者で陽性(Arthritis Rheum. 1997;40(9):1601-1611.)
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ただ2019年EULARのSLE基準では80倍で十分感度が高いと判断し、分類基準を作成している
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抗体価が高いほど全身性リウマチ性疾患の保有率が高くなることは確か
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染色パターン
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speckled, homogeneous, nucleolar, centromereが挙げられる
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どの染色パターンでも抗体価上昇に伴ってリウマチ性疾患有病率は上昇する
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centromereパターンはリウマチ性疾患・特にSScとの関連が深いが、他の染色パターンから特異的抗体の特定はできない→特異的アッセイで確認する必要がある
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ある程度は自動化されているが認識できないパターンもある→経験豊富な技術者による染色パターンの確認が重要
表:HEP2-IIFと特異的抗体
特異的抗体 |
関連する疾患 |
HEp-2IIF染色パターン |
HEp-2IIF細胞質染色 |
抗核抗体関連疾患で幅広く発現 |
|||
ssDNA |
特異的疾患なし |
陰性が多い |
なし |
ヒストン |
薬剤性ループス SLE、JIA等 |
Homogenous
|
なし |
SSA/Ro60 |
Sjögren症候群、SLE |
Fine speckled 見落としうる
|
なし |
Ro52(TRIM21) |
Sjögren症候群、SLE IIM(炎症性筋疾患) |
陰性が多い |
なし |
U1RNP |
SLE、MCTD(混合性結合組織病) |
Large/coarse speckled |
なし |
cN1A |
封入体筋炎 Sjögren症候群、SLE |
未定義 |
未定義 |
SLE |
|||
dsDNA |
SLE |
Homogenous |
なし |
Nucleosome chromatin |
SLE |
Homogenous |
なし |
Sm |
SLE |
Large/coarse speckled |
なし |
Ribosomal P |
SLE |
なし |
Dense fine speckled 見落としうる |
PCNA |
SLE |
PCNA様 (pleomorphic speckled) |
なし |
SSc(全身性強皮症) |
|||
トポイソメラーゼⅠ (Scl70) |
SSc |
Topo I様
|
なし |
CENPB |
SSc |
Centromere
|
なし |
RNAポリメラーゼⅢ |
SSc |
Large/coarse speckled |
なし |
Fibrillarin |
SSc |
Clumpy nucleolar
|
なし |
Th/To |
SSc |
Homogeneous nucleolar |
なし |
Nor90 |
SSc |
Punctate nucleolar
|
なし |
U11/U12 RNP |
SSc |
Large/coarse speckled |
なし |
BICD2 |
SSc |
Nucleor |
なし |
Sjögren症候群 |
|||
SSB/La |
Sjögren症候群 |
Fine Speckled |
なし |
オーバーラップ症候群 |
|||
RuvBL1/2 |
SScとIIM |
Fine Speckled |
なし |
PM/Scl |
SScとIIM |
Homogeneous nucleolar + 弱いFine Speckled |
なし |
Ku |
オーバーラップ症候群 |
Fine Speckled |
なし |
IIM |
|||
Jo-Ⅰ |
ARS症候群 |
なし |
Fine speckled 見落としうる |
PL7, PL12, OJ, EJ, KS, Ha, Zo |
ARS症候群 |
なし |
(Dense) Fine speckled 見落としうる |
Mi2 |
皮膚筋炎 |
Fine speckled |
なし |
MDA5 |
皮膚筋炎 |
なし |
サブセットの細胞内のFine Speckled 見落とされうる |
TIF1γ |
皮膚筋炎 |
Fine speckled 見落とされうる |
なし |
NXP2 |
皮膚筋炎 |
Multiple nuclear dots; 見落とされうる |
なし |
SAE |
皮膚筋炎 |
Fine speckled |
なし |
SRP |
壊死性筋炎 |
なし |
Fine speckled 見落とされうる |
HMGCR |
壊死性筋炎 |
なし |
ごく少数の細胞でのdine speckled 見落とされうる |
その他 |
|||
DFS70 |
ANCA関連リウマチ性疾患で稀に見られる |
Dense, fine speckled |
なし |
※強皮症・皮膚筋炎の抗体まとめ
②SPA
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ELISA・FEIA・CIAなどの方法があり、抗核抗体関連疾患のスクリーニングではなく特異的自己抗体の検出に利用されている
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ただ、方法ごとで感度・特異度は微妙に異なる
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HEp-2 IIFと比較して感度は低いが、特異度は高い
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特にSSc・SLEのスクリーニングではIIFの方が感度が高い
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逆にシェーグレン症候群ではSPAの方が感度高い
抗核抗体測定法の組み合わせ
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IIF・SPA両方が陽性の場合、片方のみが陽性の例と比較して抗核抗体関連リウマチ性疾患の活動性が高い→両方行うことで疾患の除外/特定に役立つ
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IIF…感度は高いが、特異度は低い+特異的自己抗体のはっきりしていないリウマチ性疾患を検出できる可能性がある
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SPA…感度は低いが、特異度は高い+疾患特異的な自己抗体を検出することができる
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双方を組み合わせることが重要
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最適なスクリーニング検査は疾患によって異なる
表:疾患ごとの抗核抗体の特定アプローチ
疾患
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全体的アプローチ
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HEp-2IIF染色パターン
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SPAで特定された特異的抗体
|
SLE
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IIFは感度は高いが特異度は低い
IIFとSPAを組み合わせることに価値がある
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Nuclear homogeneous
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dsDNA
|
Nucleosome or chromatin
|
|||
Nuclear fine speckled
(見逃されうる)
|
SSA/Ro60
|
||
Nuclear large/coarse speckled
|
Sm
|
||
U1RNP
|
|||
Cytoplasmic dense fine speckled
(見逃されうる)
|
Ribosomal P
|
||
PCNA様
(pleomorphic speckled)
|
PCNA
|
||
Sjögren症候群
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IIFではSSA/Ro60抗体を見逃す可能性がある
SPAではSSA/Ro60・SSB/Laの感度が高い
→IIFのスクリーニングしなくても良い
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Nuclear fine speckled
|
SSA/Ro60
|
SSB/La
|
|||
全身性強皮症
(SSc)
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HEp-2 IIFはスクリーニングに優れている
SPAで大半のSSc特異的抗体を検出できるが、全てではない
SPAで同定された抗体とIIFパターンが合致しているかを確認することが重要
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Centromere
|
CENPB
|
TopoⅠ様
|
トポイソメラーゼⅠ(Scl-70)
|
||
Nuclear speckled
|
RNAポリメラーゼⅢ
|
||
U11/U12 RNP
|
|||
Ku(オーバーラップ)
|
|||
RuvBL1/2
(IIMとオーバーラップ)
|
|||
Nucleolar (clumpy, homogeneous or punctate)
|
Fibrillarin
|
||
Th/To
|
|||
PM/Scl(オーバーラップ)
|
|||
Nor90
|
|||
定義不十分(Speckled)
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BICD2
|
||
特発性炎症性筋炎
(IIM)
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HEp-2の感度は限られている
SPAは臨床的に疑わしい場合に測定し、偽陽性があるため注意
全ての抗体スペクトルをカバーしているわけではないので注意
SPAで同定された抗体とIIFパターンが合致しているかを確認することが重要
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Cytoplasmic (dense) fine speckled(見逃されうる)
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amino-acyl transfer RNA synthetases: Jo1, PL7, PL12, OJ, EJ, KS, Ha or Zo
→抗ARS抗体
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Cytoplasmic
細胞のサブセットでのdine speckled
(見逃されうる)
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HMGCR
MDA5
|
||
Nuclear, fine speckled
|
Mi2
|
||
SAE
|
|||
TIF1γ
|
|||
Ku(オーバーラップ)
|
|||
RuvBL1/2
(SScとオーバーラップ)
|
|||
Nuclear multiple dots
(見逃されうる)
|
NXP2
|
||
混合性結合組織病
(MCTD)
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HEp-2IIFは優れたスクリーニング法である
U1RNP高値(SPA)はMCTDを示唆している
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Nuclear large/coarse speckled
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U1RNP
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AIH・JIAに関しては標的自己抗原が不明
まとめ
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抗核抗体測定には大別してHEp-2 IIFとSPAがあり、どちらも一長一短である
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疑う疾患に応じて検査法を組み合わせることが重要
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SLE・SScではHEp-2 IIFがスクリーニングとして有用
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Sjögren症候群ではSPAがスクリーニングに有用
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IIMではどちらも微妙→特異的抗体測定を行う