膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

ANCA関連血管炎維持療法のRTXの指標はANCAとB細胞数どちらが良いか?(MAINTANCAVAS study)

 
ANCA関連血管炎の維持療法はリツキシマブ(RTX)がスタンダードだが、最適使用はわかっていない。
MAINTRITSAN2 trialで示されているように、RTX投与の方法としては主に
・ルーチン投与…6ヶ月に1回
・on demand投与…CD19陽性B細胞数上昇 or ANCA力価上昇でRTXを投与
の2種類があり、差はないということになっている(Ann Rheum Dis. 2018;77(8):1143-1149.)
 
B細胞数上昇 or ANCA力価上昇 どちらを指標にしたほうがいいのか?ということが調べられた。
…MAINTenance of ANCA VASculitis study (MAINTANCAVAS)
 
CQ:ANCA関連血管炎の維持療法としてのRTX投与タイミングはB細胞数上昇 or ANCA力価上昇 どちらを指標にしたほうがいいのか?
SA:B細胞数上昇を指標にしたほうが臨床的再発が少なかった

【Method】

患者群…試験開始までRTXによるB細胞数減少が2年継続したANCA関連血管炎の患者、マサチューセッツ総合病院(MGH)の単施設研究
  • ANCA陽性、18−82歳、持続的寛解を得ている。PSL・RTX以外の投与hなく、PSL≦7.5mg/d
→以下の2群に1:1ランダム割付し、3ヶ月おきに採血・診察
①B cell群
末梢血フローサイトメトリーCD20陽性B細胞数を3ヶ月おきに測定。B細胞数<10/mm^3の場合、6週間後に再度測定。
  • B細胞数<10/mm^3→RTX投与しない
  • B細胞数>10/mm^3→RTX1000mgを単回投与
 
②ANCA群
ANCA力価ベースラインを過去2回の値の平均値と定義。力価感度以下の場合、カットオフ値を採用
→3ヶ月おきにANCA力価を測定
  • 血清学的ANCAフレア定義…MPOではANCA力価>5倍・cutt-of値>4倍、PR3ではANCA力価>4倍・cut-off値>2倍
  • 血清学的ANCAフレアあり→RTX1000mg x2回(2-3週間隔)
    • RTX投与した場合、最大6ヶ月おきにRTX1000mg x2回投与
    • ANCA力価が指定された閾値or cut-off値>2倍の場合、過去2回のANCA力価平均値をベースラインと再定義
 
Outcome…Primaryは臨床的再発
 
サブグループ…ANCAタイプ(MPO/PR3)、RTX投与歴(2-3年・3年以上)で分類

◎結果

ANCA群57例、B cell群58例で解析。観察期間中央値は4.1年。
研究期間中の再発…ANCA群14例、Bcell群5例(HR 0.37, 95% CI 0.15~0.90)
→ ANCA群の方が再発が多い

  • 再発群の治療の大半はステロイド+RTX→大体は再寛解(一部進行性ILDありで寛解せず?)
  • サブグループ解析…PR3患者陽性例・RTX投与歴<3年の患者では再発が早くなる傾向あり
  • 血清学的ANCAフレア…ANCA群での再発14例中5例、Bcell群での再発5例中2例はANCA陰性での再発

血清学的ANCAフレアに関してもBcell群のほうが少ない
 
  • RTX投与回数…Bcell群では53人に210回の投与、ANCA群では7人に26回の投与
    • RTX投与回数はANCA群群のほうが圧倒的に少なく、血清IgG値もANCA群のほうが高かった
    • 試験終了時のIgG中央値はBcell群で695, ANCA群で828g/dL
 
  • 安全性…ANCA群で14例(25%)で22例のSAE、B cell群では15例(26%)で22例のSAE
    • Covid-19以外は特に差なし
    • Covid-19入院はANCA群1例、Bcell群6例(うち2例死亡)。全7例中ワクチン接種を受けていたのは1例のみ。
 
◎Discussion
わかった点は以下の4点
  1. B cell群では、ANCA群と比較して再発率が低い(ただし重大再発・ダメージには差がない)
  2. ANCA群の場合、臨床フレアの大半はANCAフレアと同時に発生する→先行介入が難しい
  3. 臨床的なフレアがない状態で血清学的フレアが発生した場合 、RTX投与を先行することで臨床的フレアを予防できる
  4. Bcell群ではCOVID-19によるSAE率が高いが、全体的には安全性は同等
  5. Bcell群では、RTX投与頻度が多くなる
  6. 再発例は主にはILDとして出現する(本当か?)
→どちらの群が優れているというわけでもなく、患者ごとに個別化すると良い?
ANCA群が向いている場合…資源が限られている場合(RTX投与量が少ないため)、再発リスクが低い患者(ANCAが持続的の陰性など)
※Bcell陰性・ANCA陰性であっても再発する例があるという点に注意は必要
 
limitation
  1. Coivd-19パンデミックなどによってサンプルサイズは小さい
  2. 非盲検試験→ANCA値上昇時に再発と判断するバイアスなどに注意
  3. 2年間RTX投与を行った患者群が対象、単施設研究という点に注意
 

◎感想

RTX投与がBcell群で濃厚に行われる(RTX1000mg x2回)など少し変わったデザインではあるが、参考になる。
ANCA,Bcell群ともに一長一短→維持療法の私見は以下のようにすると良いと思う。
  1. 通常通りRTX+ステロイド寛解導入
  2. その後ステロイドを漸減しつつ、2年間はRTXを6ヶ月おき投与し、維持療法を行う…この間に定期的にB細胞数、ANCAは測定する
  3. 2年経った時点で再発リスクを層別化する…重症臓器病変有無、ANCA力価、B細胞数、易感染性の有無など
  4. 上記を参考にしてANCA・B細胞数どちらを重視するか決める
    • ANCA群…比較的軽症例、易感染性などでRTX投与リスクが高い、ANCA陰性継続している
    • B細胞群…再発が致死的な重症例、易感染性が低い、ANCAが陽性継続しているが寛解状態
  5. ANCA・B細胞数を参考にしつつ、RTXを6ヶ月に1回の定期投与からon-demand投与に切り替えていく
 
ただANCA・B細胞数ともに絶対的な指標ではないので、臨床評価・患者との話し合いのほうが大事。Covid-19もなんやかんや継続しており、RTX維持投与も少なくていいのならその方が良い。