Gulati K, Edwards H, Prendecki M, et al. Combination treatment with rituximab, low-dose cyclophosphamide and plasma exchange for severe antineutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitis [published online ahead of print, 2021 Sep 21]. Kidney Int. 2021;S0085-2538(21)00859-0. doi:10.1016/j.kint.2021.08.025
久々に論文まとめ。
ANCA関連血管炎への臨床試験は、びまん性肺胞出血・末期腎不全状態患者はだいたい除外されており、最重症例での最適治療はわかっていない。
→かなり高い寛解・透析離脱・生存率を達成した
正直やってみようと思えないレジメンだが、「こんな方法もある」ことを知るという意義はあるかも、というのが正直な感想
【Intro】
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ANCA関連血管炎(AAV)は、びまん性肺胞出血(DAH)・急速進行性糸球体腎炎(RPGN)など致命的な合併症を起こす
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DAHは早期死亡率と関連する
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ESKDは重大な長期罹患率・死亡率と関連する
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ANCA関連血管炎への臨床試験では、びまん性肺胞出血・末期腎不全(ESKD)状態患者はだいたい除外されている→最重症例での最適治療はわかっていない
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PEXIVAS試験等の重症患者を対象とした試験…eGFR<15は登録していても、肺胞出血併発患者は対象としていない
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→その治療成績を後ろ向きコホートで実施
◎治療プロトコル
【Method】
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患者条件…致命的な症状のあるAAV患者
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AAV診断は以下に基づく
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ANCAの存在
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生検で証明されたpauci-immine型糸球体腎炎
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生検禁忌の場合、典型的臨床所見がある
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抗糸球体基底膜(GBM)抗体陽性患者は除外
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重症患者定義…以下のうち1つがある患者
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びまん性肺胞出血
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◎治療プロトコル
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維持療法
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第一選択はアザチオプリン、3ヶ月後に開始して2年以上は継続するよう推奨
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アザチオプリンが使えない場合はMMFまたはRTXを使用
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◎対照群
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2006-2009年に当センターで治療を受けた患者で、同様基準を満たした重症AAV患者
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※CYCLOPSレジメン(Ann Intern Med. 2009;150(10):670-680.)
【Result】
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ベースライン…64名がエントリー
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47%…初期に腎代替療法が必要
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58%…喀血あり
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30%で非侵襲的/機械換気が必要となり、2例でECMO装着
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MPO-ANCA・PR-3ANCAはほぼ同数(33例、31例)
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重症例のみで、BVAS中央値19点
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追跡期間中央値は46ヶ月
◎治療内容
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最初の6ヶ月間の治療薬投与量中央値
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※PEXIVASでのPSL投与量は1-3gで同等
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RTX…2g(1g x2回)
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CYC…3g
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PSL…2.6g
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血漿交換は中央値7回(7−10)実施
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維持療法…45%でアザチオプリン、6%でMMF、28%でRTX
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16%の患者は腎機能回復不能・感染リスク懸念で維持免疫抑制は実施せず
◎治療への早期反応
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6ヶ月で60/64(94%)が完全寛解(BVAS0点)を達成
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GFR・CRP・ANCA力価はすべて1ヶ月以降に急速に改善
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全患者がB細胞枯渇を達成
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ANCA陽性例(57/64、89%)は、4ヶ月後には大半(45/57、89%)がANCA陰性へ
◎短期の腎予後
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受診時腎代替療法を必要とした患者のうち、20/30人(67%)の患者で腎機能が回復し、多くは最初の1カ月以内に回復した(16/20人、80%)
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12ヵ月後の時点で、回復した患者のうち18/20人(90%)が生存しており、末期腎不全状態ではなかった
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血清クレアチニン値>5.7mg/dL(500μmol/L)だが透析を必要としない患者の、末期腎不全ではない状態で生存している確率も高い
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6ヶ月時点で18/18(100%)、12ヶ月時点で16/18(86%)
◎長期の腎予後
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12ヶ月・24ヶ月時点で、大半の患者で腎機能は保たれていた(12ヶ月:48/60 [80%]、24ヶ月:46/57 [81%])
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最終フォローアップ時点では31%(20/64)で末期腎不全へ移行した
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うち半数は受診時点で透析依存性で、透析離脱できなかった→当初から透析の場合は透析離脱率が低い
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腎代替療法を受けていない患者では、3年時点でeGFR中央値は45(26-66)ml/minまで改善
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長期フォローアップ時の再発率は低い…12,24,36ヶ月時点での生存者での非再発率はそれぞれ59/60(98%)、45/50(90%)、34/39(87%)
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B細胞枯渇・ANCA陽性例陰性例では再発率が低かった
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フォロー中13例で再発発生
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ANCA・B細胞両方陰性例では全員再発せず
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再発時期の中央値は25(16-49)ヶ月
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MPO-ANCA(5/13)と比較して、PR3-ANCA(8/13)で再発が多かった
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大半でB細胞再増殖が起こった(8/13、62%)
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全員がANCA陽性…9人は再発前・再発時にANCA陽転化、4人は初診時から持続陽性
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再発例は全例RTX投与、重大再発例では低用量シクロホスファミドを追加
◎死亡率・有害事象
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36ヵ月後の患者の全生存率は85%(33/39人)
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死亡原因
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有害事象一覧
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大半の感染症は最初の6ヶ月に発生し、その後は感染性低下
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透析状態、肺出血、発症時の糖尿病歴は予測因子にならなかった
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6ヵ月以前の感染の予測因子…加齢(OR1.09)、既存の呼吸器疾患(OR 5.19)
◎腎病理と予後
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大半の患者は来院時に腎生検を受け(48/64、75%)、その大半(46/48)がPauci-immune型半月体形成性糸球体腎炎であった
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Berden分類:混合型(24/46、52%)が最多で、次いで三日月型(13/46、28%)、硬化型(5/46、11%)、局所型(4/46、9%)
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Brix腎リスクスコア…1つの生検(2%)が低リスク、22/46(48%)が中リスク、23/46(50%)が高リスク
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どちらも腎予後と相関あり
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硬化性クラスの患者(n=4)は最初の4カ月間の追跡調査で腎機能が回復しなかったが、半月状クラス(n=10)と混合性クラス(n=8)の患者では腎機能の回復率は同程度(p=0.6)
◎従来治療(CYCLOPSレジメン)との比較
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CYCLOPSレジメン(CY+ステロイド, Historic cohort)の40名と比較
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併用療法(current cohort)…67%(p = 0.077)
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36ヵ月の末期腎不全なしでの生存率…従来レジメンでは21/40 [52.5%]、現在のコホートでは29/44 [65.5%]、p=0.03
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男性58%、年齢中央値57(40-71)歳、60%がDAH
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18人の患者(45%)が受診時に透析を必要とし、そのうち7/18(39%)が6か月までに腎機能回復し透析離脱
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長期追跡調査…併用レジメンは36ヵ月の末期腎不全なしでの生存率の向上と関連あり
【Discussion】
【感想】
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AAV重症例に寛解導入でどれくらいガンガン治療するかはたまに議論になるが、こういうやり方があるという知識くらいにはなる論文
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比較対象がPEXIVASに代表されるRTXレジメンではなくIVCYレジメンなのでその点はどうかと思う
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初戦は後ろ向きコホートで年代による補助療法の差が出た可能性もある。
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RTX・IVCY併用では相当感染症が多くなりそうだが…
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39例中3例に敗血症が合併しているが、「これだけ激しく高齢者に免疫抑制をかけても3例だけ」と捉えるか、「3例も」と捉えるか難しい
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血漿交換にはまだ議論の余地はあるかもしれないが、重症だからといってRTX+IVCYを初期から併用使用するメリットは正直このデータからは感じない
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従来どおりRTXで治療導入→治療抵抗性ならIVCY追加でいいと思う
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早期に強力な治療を行うことで従来の治療よりもいい成績が出る、ということを言いたかったと思われるが、この治療を行うにしてもさらなるデータが必要
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でもそんな臨床試験が行われる気がしない
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