膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

壊疽性膿皮症+全身症状:PAPA,PASH,PAPSH症候群

Am J Clin Dermatol. 2017;18(4):555-562.
 
壊疽性膿皮症(Pyoderma gangrenosum: PG)は通常皮膚潰瘍症状として出現するが、全身症状を起こす一群がいる。自然免疫機能障害に伴う自己炎症スペクトラム疾患的な患者群がおり、それぞれPAPA,PASH,PAPASH症候群と呼ばれる
主にはIL-1βの過剰発現が原因。たまにリウマチ性疾患との合併例があり、壊疽性膿皮症+ざ瘡+リウマチ性疾患合併例では疑ったほうがよい。

 

①症候群の分類

PAPA (pyogenic arthritis, PG, acne)…PG+化膿性関節炎、ざ瘡
PASH (PG, acne, suppurative hidradenitis)…PG+ざ瘡、膿疱性汗腺炎
PAPASH(pyogenic arthritis, acne, PG, suppurative hidradenitis)…PG+化膿性関節炎、ざ瘡、膿疱性汗腺炎
 

②PAPA症候群…PG+化膿性関節炎、ざ瘡

皮膚症状+無菌性の化膿性関節炎( 特に肘、膝、足)を特徴とする常染色体優性遺伝疾患
  • 小児期の好中球浸潤が特徴の再発性・無菌性単関節炎。外傷が契機のことがある。
  • 皮膚…PG+ざ瘡
    • 通常は思春期に発現だが、成人期でもありうる
  • 検査所見は炎症上昇など非特異的
  • PSTPIP1遺伝子の異常が報告されている
 

③PASH症候群…PG+ざ瘡、膿疱性汗腺炎

PAPAと違って化膿性無菌性関節炎がない。かわりに慢性的な膿疱性汗腺炎を起こす
  • アポクライン汗腺を持つ皮膚に好発する…腋窩、鼠径部、肛門周囲
  • 潰瘍性の膿疱+顔面などのざ瘡が特徴的
  •  

  • リウマチ疾患・炎症性腸疾患との併発も報告されている(Medicine (Baltimore). 2014;93(27):e187.)
  • PAPAとは違い、多因子性自己炎症性とされる
 

④PAPASH症候群…PG+化膿性関節炎、ざ瘡、膿疱性汗腺炎

PASH症候群+膠原病を起こす一群がおり、PAPASH症候群と総称される
  • 軸性脊椎関節炎+PASH→PASS症候群(J Clin Rheumatol. 2012;18:413–5.)
  • 乾癬性関節炎+PASH→PsAPAPASH症候群(J Am Acad Dermatol. 2015;72:e42–4.)
 

⑤治療

PAPA症候群…IL-1,TNF阻害薬が基本。関節炎にはステロイド注射、皮膚症状にはレチノイドが使用されることがある
PASH症候群…基本的には難治性。IL-1,TNF阻害薬が多い。