Baer AN. IMPROVING THE DIAGNOSTIC APPROACH TO SJÖGREN'S DISEASE: A NINETY-YEAR QUEST. Arthritis Rheumatol. 2023;10.1002/art.42735. doi:10.1002/art.42735
SjD(シェーグレン症候群/シェーグレン病)の診断はなかなか難しい。
- Sicca症状(腺症状)はSjDに限らず見られるものであり、非特異的なことが多い
- SjDで陽性率の高い抗Ro/SSA抗体陰性例もある…抗セントロメア抗体陽性、Seronegative−SjD
- EULAR/ACR分類基準も存在するが、あくまで研究用の分類基準であり、早期病変・病理所見への評価が不十分(Arthritis Rheumatol. 2017;69(1):35-45.)
- 一方で確定診断のための唾液腺生検は患者負担も大きく、全例で行うべきではないとされている
→実践的な診断アプローチが提唱された。
腺症状の確認→腺病変の評価・SS-A/セントロメア抗体評価→抗体陰性例への唾液腺生検という流れ。
◎シェーグレン病(SjD)の診断精度を向上させるためのステップ
- 本疾患に関連する症状を有する患者に対してのみ診断評価を行う
- a. 眼/口腔乾燥*の持続的かつ問題となっている症状
- b. 再発性または持続性の唾液腺腫大
- c. 涙腺腫大
- d. SjDに典型的な全身症状(EULAR/ACR分類基準の眼・唾液腺症状への基準参照)
- 眼球または口腔の乾燥または腺病変のうち、少なくとも1つがある
- a. ドライアイ
- i. 眼科専門医に紹介し、ドライアイとその程度を評価する。涙液不足の程度を評価する。眼表面染色(角膜と結膜)の定量を依頼する。(眼表面染色(角膜・結膜)、涙流量、マイボーム腺機能障害の評価を依頼する。 OR
- ii. 診察室で無麻酔シルマーテストを行う。
- b. 唾液機能低下
- i. 口腔医学専門医に唾液測定を依頼する。
- ii. 診察室で無刺激唾液流量測定を行う。
- c. 唾液腺病変の画像所見
- i. 唾液腺超音波検査…びまん性、両側性の低エコー病変
- ii. CT画像検査…びまん性両側点状石灰化。
- iii. MRI画像検査…唾液腺の複数の低強度および高強度領域(salt and pepper appearance)
- SjDの主要血清学的マーカーとして抗SSA/Ro抗体を用いる
- a. 高力価の抗Ro/SSAは診断の信頼性を高める
- b.他の全身性自己免疫性リウマチ性疾患(分類基準を満たすもの)が存在する場合、SjDの診断は可能である。
- c.抗セントロメア抗体の高力価(蛍光抗核抗体検査のセントロメア染色パターン)は、SSA/Ro抗体が存在しないSjDのサブセットを示す。
- d.抗セントロメア抗体以外の自己抗体(抗CCP、抗RNP、リウマチ因子など)は、SSA/Ro抗体や関連するリウマチ性疾患がない場合、診断を確定するための小唾液腺生検の必要性を否定するものではない。
- SSAまたはセントロメア抗体が陰性であれば、小唾液腺生検を依頼する
- a.手術手技は、慎重な剥離により4~6個の腺を採取できるものでなければならない(※8mm^2以上の採取)。ウェッジ生検またはパンチ生検は行うべきではない。
- 公表されているガイドラインに従って、小唾液腺生検の解釈を依頼する
- a. 限局性リンパ球性唾液腺炎の評価。存在する場合は、全腺表面積の測定、病巣の総数のカウント、および病巣スコアの算出。
- b. 炎症の程度が低く、SSA/Ro抗体が存在しない症例では、SjDの病理組織学的特徴の存在を明らかにするために、免疫組織化学染色を考慮する。
*ACR/EULAR分類基準より。以下の質問のうち1つ以上が陽性であることと定義
1) 3ヵ月以上、毎日、持続的に、厄介なドライアイがありますか?
2) 目に砂や砂利が入ったような感覚が繰り返しありますか?
3) 代用涙液を1日3回以上使用していますか?
4) 3ヵ月以上、毎日口の渇きを感じていますか?
5) 乾いた食べ物を飲み込むために、頻繁に水分を摂取していますか?