膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

痛風への尿酸降下薬使用時、コルヒチン併用に意味はあるのか?

Ann Rheum Dis. 2023;ard-2023-224731.
痛風の慢性期治療・再発予防として尿酸降下薬を行うが、急激な尿酸値の低下が痛風再燃(フレア)に繋がりうるということはよく知られている。
痛風患者に対して尿酸降下療法を実施する際、3-6 か月間抗炎症薬予防内服(コルヒチン・NSAIDsなど)を受けることが推奨されている(Arthritis Care Res (Hoboken). 2020;72(6):744-760.)
ただこの推奨が出てきた際の臨床試験はアロプリノール初回投与量300mgと高用量であったが、アロプリノール過敏症症候群のリスク等から最近の臨床試験ではアロプリノール初回投与量50-100mg程度と低用量となった。低用量で開始する場合、プラセボ群・尿酸降下薬群間で痛風フレアに特に差がないこともわかりつつある。
 
→低用量での尿酸降下薬開始であれば、抗炎症薬予防内服は不要では?ということで臨床試験が組まれた
Short Answer:尿酸降下療法中はコルヒチンをしばらく併用するのもありかもしれない。ただし、コルヒチン副作用と中止直後に痛風悪化しやすい点には注意が必要。

【Method】

オーストラリア・ニュージーランドの2施設で実施された12ヶ月間の二重盲検プラセボ対照試験
Patient:18歳以上の痛風患者、アロプリノール内服開始
  • 2015年ACRの痛風分類基準で痛風を定義(Arthritis Rheumatol. 2015;67(10):2557-2568.)
    • Step1:関節腫脹等の確認→Step2:尿酸結晶の確認→Step3:尿酸結晶が確認できない例に関してスコアリングし、8点以上で痛風と分類(感度92%、特異度89%)
  • 6ヶ月間、ACRのULT開始推奨値を満たし、スクリーニング時の血清尿酸値≧6mg/dL
  • ベースライン時に全参加者がアロプリノールを開始
    • eGFR<60の場合50mg/d→50mg/dずつ増量
    • eGFR≧60の場合100mg/d投与→100mg/dずつ増量
    • 受診時血清尿酸値<6mg/dLを3回連続達成するまで増量
I/C:コルヒチン0.5mg/day or プラセボに1:1の割合で無作為に割り付け→6ヶ月間継続し、以後はコルヒチン中止
Outcome:Primary outcome…0-6ヶ月間の1ヶ月あたりの痛風フレア回数の平均値
  • Secondary…0~3ヶ月、6-12ヶ月の平均痛風フレア数/月など

【Result】

388人中200人をコルヒチン群(n=100)・プラセボ群(n=100)に無作為に割り付け
  • コルヒチン群2名・プラセボ群5名が、消化器症状で試験薬を中止
  • 平均年齢50代前半、大半が男性、白人が半数・オセアニア系が10%程度、平均BMI30over
◎Primary outcome
  • 開始〜6ヶ月間の痛風フレア回数/月は、プラセボ群0.61(0.47~0. 74)、コルヒチン群0.35(0.22 ~0.49)→事前に設定した非劣性マージン満たさず
◎Secondary outcome
  • 痛風フレア数…コルヒチン群では、〜3ヶ月までは少ない。コルヒチン投与中止後はフレア増加し、9ヶ月目(投与中止3か月後)がピークとなる
  • 初回痛風フレアまでの時間は有意差なし
  • 有害事象に関しては有意差なし
 

【Discussion】

  • プラセボはコルヒチン0.5 mgと比較し、アロプリノール開始後6ヶ月間での痛風フレアの予防において非劣性を示さなかった
  • 12ヶ月全体では、痛風フレアの平均回数に差はなかった。
  • ただしコルヒチンを6ヶ月時点で終了した直後3ヶ月間痛風発作頻度が増加した
  • 痛風患者がアロプリノール治療を開始する際に、6ヶ月以上にわたる抗炎症予防療法が必要である可能性がある
 

【感想】

  • 痛風は尿酸値の急激な変動で再発しやすいため、発作期だけでなく慢性期においてもコルヒチンをしばらく併用するのもありかもしれない。ただし、コルヒチン副作用と中止直後に痛風悪化しやすい点には注意が必要。

  • CKD患者における無症候性高尿酸血症に対して尿酸降下薬を導入するかどうかは議論有るところである。ユリス等を使用する際にコルヒチンを併用する例が散見されるが、流石にやりすぎだと思う

  • アロプリノール過敏のリスクとされる HLA-B*58:01はアジア人に多く、海外ガイドラインではアジア人へのアロプリノール投与前のスクリーニングが推奨されれている。その一方で日本では保険適応なく、測定ハードルが極めて高い。このため、個人的にはアロプリノールは少し使いにくい。

  • 外的妥当性という点では、オセアニア・白人痛風患者で日本と比較して重症例が多い点、体型・年齢の違いという点には注意が必要。