膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

Tocilizumabと好中球減少

Tocilizumab(TCZ, 商品名アクテムラ®)は、関節リウマチ(RA)・若年性特発性関節炎(JIA)などに適応のある生物学的製剤で、使用頻度も多い。
一方で「好中球減少」がよく見られるが、あまり感染症とは関係ないとされている
 
  • アクテムラ®の添付文書上、「無顆粒球症(0.1%未満)、白血球減少(4.5%)、好中球減少(1.6%)、血小板減少(2.1%)」とされている
  • 原因は不明(Rheumatology (Oxford). 2017;56(4):541-549.)
    • 骨髄抑制、末梢性アポトーシスの促進などは否定的…好中球減少しても骨髄異常見られず、好中球形態異常なし
    • in vitroではIL-6は骨髄から余剰好中球を放出して、血中好中球を増加させる→TCZ投与でこれが抑制されている?
    • 感染症に対応する分の好中球は確保されているので、感染症は増えないとされている
 
いくつか文献はあるが、重篤感染症を起こすような好中球減少を起こすことはない」という結論のものが多かった

①RAに対してのTCZ(Rheumatology (Oxford). 2017;56(4):541-549.)

  • TCZ投与患者での好中球減少は、Grade3(好中球数500-1000/μl)が2.8%、Grade4(好中球数<500/μl)が0.3%発生
  • TCZで治療された患者における重篤感染症の発生は、好中球数の減少とは関連していない
  • もともと好中球数が少ないことが、TCZによる好中球減少のリスク
  • TCZ継続でも好中球は正常化していくが、中止するとより早く改善する
    • →好中球<500/μlの場合、減量すると良い?
  • TCZによる好中球減少はTCZ投与量減量で改善するというケースシリーズあり(Immunol Res. 2015;61(1-2):164-168.)
    • その他サラゾスルファピリジン・TNF阻害薬でも好中球減少は少数報告されている
 

②JIAに対してのTCZ(J Rheumatol. 2019;46(9):1117-1126.

  • JIA患者へのTCZ投与でGrade3以上の好中球減少が、sJIA患者の25.0%・pcJIA患者の5.9%でみられた
    • ※Grade3:好中球数500-1000/μl, Grade4:好中球数<500/μl
  • 全員が一過性減少で、その間の重篤/非重篤感染症の増加はなかった
  • TCZ投与後の好中球数と感染症の関連はなかった