膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

巨細胞性動脈炎の80歳以上の患者へのTocilizumabの有効性・安全性

Assessment of the efficacy and safety of tocilizumab in patients over 80 years old with giant cell arteritisArthritis Res Ther. 2021;23(1):143.

 
巨細胞性動脈炎(Giant Cell Arteritis: GCA)へのTocilizumab(TCZ)の有効性についてはGiACTA trial(N Engl J Med. 2017;377(4):317-328.)で実証されているが、平均年齢60代後半(69.5±8.5歳)が対象となっており高齢者への有効性・安全性はよくわかっていない
→高齢GCA患者の後ろ向き解析
 
結論
  • TCZ導入によるステロイド漸減は期待できそう
  • 1/3に軽度-中等度の有害事象あり

 

TCZ投与された80歳以上のGCA患者をフランス大血管グループ内でデータベース収集→解析
 

結果

21人のGCA患者(中央値84 [81–90]歳、9人は85歳以上)が対象となった

  • TCZ導入の理由
  • TCZ導入時期
有効性

  • TCZ導入後8 [2–21]か月後、14人(67%)がステロイド終了できた
    • うち6人はTCZ導入前ステロイド依存性であった
    • 最終フォローアップ(中央値20 [3–48]か月)で、11人(52%)がTCZを中止した
      • うち2人は再発してTCZを再開した
安全性

  • 7人(33%)に計11の有害事象あり
    • 4人:高コレステロール血症
    • 3人:感染症腎盂腎炎、気管支炎、腸間膜梗塞に伴う致死性敗血症)
    • 2人:中等度の血小板減少、中等度の好中球減少
    • 1人:トランスアミナーゼ値が5倍に上昇→TCZ減量で改善
 

Discussion

  • TCZが高齢のGCA患者にある程度安全かつ有効に使えることを示唆している?
  • 本研究から推察されるTCZを高齢GCAに使用するメリット
    • TCZを投与によってステロイドを急速に減らすことができる→高齢者における長期ステロイド暴露による有害事象を最低限にすることができる
    • 重篤な有害事象は限られている…過去のTCZを用いた臨床研究と有害事象発生率は変わらなかった
  • limitation…比較的小さいサンプルサイズ、遡及的デザイン、短いフォローアップ時間
結論:TCZは高齢GCA患者に対しての貴重なステロイド減量オプションと思われる
 

感想

  • 一方で超高齢者でGCA起こったらどうするのか?というのは悩ましい。重度骨粗鬆症・糖尿病等の合併症でステロイド高用量が許容できない症例の方がむしろ多い印象すらある。
    • ただ日本で巨細胞性動脈炎に対して適応が通っているのはTCZ(アクテムラ®)162mg皮下注射/週なので自己注射が必須というのが困る…
  • ステロイド高用量による有害事象よりもTCZ使ったほうがマシなのでは?」というシチュエーションに対して弱い根拠ではあるが参考にはなる内容である
    • べつに対照群がある研究でもないし、サンプルサイズも小さいし、TCZの投与についてもばらつきが大きいのであくまで「参考」レベル