Subacromial-subdeltoid bursitis following COVID-19 vaccination: a case of shoulder injury related to vaccine administration (SIRVA). Skeletal Radiol. 2021;1-5.
ワクチン接種後の接種部位の疼痛はだいたい一過性だが、たまに肩の疼痛が続くことがあり"Shoulder injury related to vaccine administration” (ワクチン関連肩障害、SIRVA)と呼ばれる。
ワクチンの不適切な接種位置が原因で、ワクチンそのものの副反応とは少し異なる。インフルエンザワクチンでも発生例があったが、昨今のワクチンの普及と共にたまに発生例を聞くので、備忘録としてまとめ。
※ワクチン接種に関しては強く推奨します
【症例】
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61歳女性、Covid-19ワクチン(アストラゼネカ)接種後30分以内に右肩痛・肩関節の圧痛が出現
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患者いわく「注射の位置が高すぎた」とのことだった
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確認してみると肩峰外側2横指の位置で注射を受けていた(※本来は3横指下くらい)
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初期治療として冷却・局所NSAIDs等を使用したが8週間後も症状残存し、身体所見上腕腫脹・三角筋上部の圧痛・肩の可動域制限あり
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画像検査を実施→肩峰下滑液包炎・回旋筋腱板損傷と診断
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a. Xp:肩峰下滑液包に隣接する脂肪織の軟部組織密度上昇
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bcd. MRIT2脂肪抑制:肩峰下滑液包炎、棘上筋腱症(*)
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e. エコー:肩峰下滑液包の滑液嚢穿刺後貯留(低エコー域)
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f. エコー:肩峰下滑液包炎(パワードップラー陽性)
【Discussion】
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"Shoulder injury related to vaccine administration” (SIRVA)は、肩関節滑液包にワクチン溶液が注入されることで起こると考えられている
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症状:肩の慢性疼痛・炎症性疾患の既往のない患者におけるワクチン筋注後の急激な肩の疼痛を特徴とする
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疼痛はワクチン投与後48時間以内に始まり、数時間続くこともある
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頻度は不明
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ワクチンの副反応(注射部位の圧痛・疼痛、接種後の筋肉痛・関節痛)とは別物である
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原因としては不適切なワクチン接種だが、原因は2つあると思われる
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接種部位が肩峰に近すぎる(3横指空けていない)
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肩関節滑液包近くのワクチン接種となってしまった
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ワクチンの針の向きが上に傾いている(垂直に刺していない)
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針は垂直に穿刺する必要がある
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適切な手技で行えばSIRVAは起こりにくくなるとされる
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※下すぎる・後方すぎると橈骨神経麻痺リスクもあるので注意は必要
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※大体肩峰から5cm下くらいにしておくといいという意見もある
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治療:大半は安静及び抗炎症薬の使用で数週間で改善するが、たまにステロイド注射・外科的介入が必要な場合もある