膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

慢性特発性じんま疹患者の関節血管浮腫は関節炎と誤診されうる

Articular angioedema in patients with chronic spontaneous urticaria is frequently misdiagnosed as arthritis. J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8(9):3232-3233.e1.
 
  • 慢性特発性じんま疹(Chronic spontaneous urticaria: CSU)は6週間以上の掻痒感を伴う膨疹・再発性血管性浮腫を特徴とする
  • ただCSU患者は時々関節痛・関節腫脹エピソードを訴える
  • これは膨疹・血管浮腫の発作が頻繁に発生し、四肢に限局しているときに発生する
      • 画像:MCP・PIP関節の血管浮腫、持続時間は24時間未満
  • このため、関節炎と誤診されうる

【方法】

2018-2019年にかけてイスラエルの3つのクリニックを受診したCSU患者420人に対して、質問表を配布し解析
  • じんま疹の経過中の関節痛症状エピソード患者を解析・軽度/中等度/重度関節病変に分類
  • CSUの活動性は、UAS7という1週間の掻痒感・膨疹数を評価する指標で評価

【結果】

  • 420人のCSU患者の内60人(14%)が関節痛の再発エピソードを経験
  • 軽度(61%)
    • CSU疾患活動性が高いときに関節痛が出現する
    • 高用量抗ヒスタミン薬、短期間の経口ステロイド、またはオマリズマブにより関節痛だけでなく膨疹も寛解
  • 中等度(17%)
    • 関節炎ではなく関節周囲の血管性浮腫が関節痛の原因であると考えられた
    • 高用量抗ヒスタミン剤・数日間の経口ステロイドで改善→関節炎ではなくCSUによるものと診断
  • 重度(22%)
    • 終日続く重度の血管性浮腫のエピソードがあった
    • 関節炎に対してNSAIDs、スルファサラジン(SASP)、経口ステロイドの短期治療、および/またはメトトレキサートで治療された後、関節周囲血管浮腫として蕁麻疹専門医が診断
    • 血清学的分析(抗核抗体・RF・CCP抗体)は正常
関節症状
CSU・血管浮腫症状
関節痛頻度
関節痛持続時間
治療反応
軽度
(n=37 [61%])
四肢のじんま疹
血管浮腫は最小限
1-2回/週
8-10時間
高用量抗ヒスタミン剤で関節痛改善
中等度 
(n=10 [17%])
時々のじんま疹
主に四肢の血管浮腫
毎日
10-14時間
経口ステロイド・オマリズマブ投与2-3日後に関節痛はほぼ消退
重度
(n=13 [22%])
血管性浮腫が主体
四肢じんま疹はほぼない
毎日
24時間
SASP・NSAIDsには反応しない
高用量抗ヒスタミン剤に部分的に反応
オマリズマブによる治療後に改善
 

【まとめ】

  • CSU 患者の関節痛のエピソードは関節周囲血管浮腫に関連していることが多いが、関節炎が原因と疑われる場合がある
  • 軽度の関節痛・腫脹では、じんま疹症状から鑑別可能
  • 四肢血管浮腫が中等度・重度では、じんま疹症状がほぼない場合があるため関節炎と誤診されうる
  • 高用量の抗ヒスタミン剤・オマリズマブへの良好な反応性、リウマチ性疾患の血清学的マーカーがないことを考慮すると、CSUでの関節炎はないようである
  • 関節痛の原因として血管性浮腫を認識することで、不必要な治療を防ぎ、CSU に関連する治療に集中することが可能となる