膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

巨細胞性動脈炎と骨髄異形成症候群

Giant-cell arteritis associated with myelodysplastic syndrome: French multicenter case control study and literature review. Autoimmun Rev. 2020;19(2):102446.
 
現在それっぽい人がいるのでまとめ
 
コホート研究+症例報告収集でGCA+MDS合併症例について調査
MDS合併GCAは特発性GCAと比較して、頭蓋症状が少ない+ステロイド依存性・再発リスクが高い

 

 

①前置き

  • 骨髄異形成症候群(MDS)やMDS/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)は、無効造血・急性骨髄性白血病への急性転化を特徴とする造血悪性腫瘍である
    • MDS/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)の代表格…慢性骨髄単球性白血病(CMML)など
  • MDS・MDS/MPNは”Leukocytoclastic vasculitis”・PANを起こすことが知られている
    • その他の血管炎は報告レベル…ベーチェット(Trisomy 8 syndrome)、PMR、Sweetなど
  • 巨細胞性動脈炎(GCA)は高齢者に多い血管炎で、MDS・MDS / MPNに時々合併する
GCAとMDS,MDS/MPN合併例をフランスのデータベース(21例)・文献(41例)から集めて解析し、特発性GCA(MDS,MDS/MPN非合併症例)と比較
 

②患者背景

  • 頭痛・顎跛行・視神経虚血の有病率は、特発性GCAと比較してGCA+MDS, MDS/MPN合併例で有意に低い
  • PMR(リウマチ性多発筋痛症)・大動脈炎・側頭動脈生検の頻度に有意差なし
  • GCA+MDS, MDS/MPN合併例では有意に貧血・血小板低値・好中球低値が多い
  • CRP値は有意差なし

③治療効果

  • 全例でPSL(約1mg/kg)が第一選択治療
    • GCA+MDS, MDS/MPN合併例ではステロイド依存頻度が高い(12例(57%)vs 18例(22.5%); p<0.05)
  • 2群間で全生存期間に有意差はなかったが、合併例で無再発生存期間・ステロイドフリーでの生存期間は有意に低い
 

④まとめ

  • MDSは患者の7.5-25%に炎症性疾患と関連があるとされているが、GCAとの合併例は症例報告レベル
    • 関連性も不明
    • 好発年齢(高齢)がかぶっているため、GCA・MDSを別々に発症しているのか、腫瘍性の炎症性病変なのかを区別することは困難
  • GCAには頭蓋病変が起こる側頭動脈炎タイプ「頭蓋型」と、発熱・体重減少・大血管炎が優位な「全身型」に分かれる
  • GCA+MDS合併症例では「頭蓋型」が少ない
  • また、GCA+MDS合併症例は予後が悪いステロイド依存性が高く、無再発生存率が低い
  • 合併例に対する治療はよくわかっていないが、GCAに対して頻用されるTocilizumab(アクテムラ®)は好中球減少のリスクがある→血液内科的な治療のほうが良さそう?
    • 現在MDS+自己免疫疾患合併症例に対するAzacitidine(ビダーザ®)の治験が進行中(Leuk Res. 2016;43:13-17. NCT02985190
 

⑤補足

  • 調べてみると合併症例の報告は散見されており、思い思いの治療をしている印象
    • MTX+PSL…Clin Rheumatol. 2016;35(3):807-812.
    • Azacitidine…Rinsho Ketsueki, 56 (2015), pp. 35-37
  • ただ、まとまった報告は特にない
 

⑥感想

  • MDSはそれだけでよくわからない筋骨格症状・関節症状を起こすが、一部自己免疫性疾患を合併する例が見られる
    • 主にはPANだが、他に有名なものとしてBehçet病(Trisomy 8)がある
    • また抗核抗体・ANCA等の自己抗体産生する例もある
  • 診断は厄介だが、「GCAだけでは説明できない血球減少」がポイントのようである
    • GCA自体も「全身型」が多いせいで、不明熱・不明炎症の形を取りそうだが…
  • そして治療はさらに厄介で、治療抵抗性の傾向が強いため探り探りになる模様