リツキシマブは抗ヒトCD20ヒト・マウスキメラ抗体からなるモノクローナル抗体で、血液腫瘍での使用だけでなく、血管炎を初めとしたリウマチ性疾患の治療において重要な役割を果たす
しかし、投与時のinfusion reaction(分子標的薬投与時の副作用、アレルギーとは厳密には違う)が起こることがある。
1.疫学
2.症状
3.発症機序
4.治療
5.予防
1.疫学
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大体投与後30分−2時間以内に発症するが、症状は最大24時間遅延する場合がある
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中止後、数時間で速やかに症状は改善する
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投与1,2回目が多いが、その後も起こりうる
2.症状
症状としては
が挙げられる
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infusion reactionを起こした64人の患者のまとめ
3.発症機序
発症機序については仮説レベルだが、リツキシマブとCD20の間の抗体抗原相互作用に伴うサイトカイン放出が原因とされる
4.発生時の治療
治療は一般的な急性アレルギーに準じる
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軽度-中等度症
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一旦中止後、投与速度を下げて再トライする
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再発する場合、減感作療法を考慮
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重症・アナフィラキシー
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当日の再投与は基本的には勧められない
5.予防
(基本)
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投与速度を当初は低速に設定する
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50cc/hr で開始し、30分問題なければ50cc/hrずつ増量するというのが一般的な投与方法
(応用)
ただこれでinfusion reactionが完全に避けられるわけではない
リツキシマブの代替薬がほぼないため、なんとか許容しながら使っていく他ない
→対処をまとめると
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前投薬を強化する
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投与速度を落として開始する
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biosimilar使用なら非biosimilarに変更してみる
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脱感作での投与を行う
といったところが現実的な範疇
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前投薬を強化する
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軽度なら、再度のアセトアミノフェン・H1-blocker投与+投与速度を1/2にして再開する
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分割投与も考慮
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投与速度を落として開始する
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biosimilar使用なら非biosimilarに変更してみる
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リツキシマブにはbiosimilar(BS)があり、安価のためこちらの方が使用頻度は多い
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非 BSでは問題ないが、BSでinfusion reaction発生→非BSに戻して解決というcase reportはある
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Rheumatology, Volume 58, Issue Supplement_3, April 2019, kez110.033
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(Arthritis Care Res (Hoboken). 2019;71(1):88-94. …関節リウマチ患者での報告)
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若干BSの方がinfusion reaction少ない傾向あるが、有意差なし
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脱感作療法(Desensitization therapy)
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特に決まったものはないが、よく出てくるプロトコルは以下の通り
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(Case Reports Immunol. 2015;2015:524507. …R-CHOP患者への脱感作)
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濃度の異なるリツキシマブ点滴を3つ用意し、慎重にdose-upする
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プロトコル通りでは405分=6時間半(トータル744mg)
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500mg(50ml)の場合、約5時間で終わる計算(Step12短縮)
infusion reactionはRTXを使う限り頻度の多い現象である。
外来で投与することが多いため、あらかじめ患者に
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投与1,2回目はinfusion reactionというアレルギーに似た症状が起こりやすいこと
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起こっても大半は軽症であるが、入院が必要な症状もありうること
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起こった場合、投与時間の延長で1日がかりの投与になりうること
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リツキシマブは換えの効かない薬剤であるため、リスクはあるが工夫して安全に投与できるように努力すること
を伝える必要はあると感じた。
また高価のため、その日infusion reactionが起こったからといって捨てられない薬であることも納得してもらう必要があると感じる。(膠原病業界で使う時は大体難病扱いなので、患者の財布にはあまり関係ないが… )
参考:リツキシマブの値段
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リツキサン®︎:500mg50mL 148,996円
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リツキシマブBS®︎:500mg50mL 102,362円