神経Behçet病はBehçet病全体の10%以下とされており、多彩な神経症状をきたすが、画像も非常に多彩。
Behçet病による中枢神経病変は
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静脈洞血栓症によるもの
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脳実質が原因のもの
の2つがあるが、日本では圧倒的に後者(脳実質病変)が多い。(Mod Rheumatol. 2012;22(3):405-413.…日本人神経Behçet病144人中静脈洞血栓症は1人だけ)
静脈洞血栓症を起こすBehcet病は血管ベーチェット症に類縁するものと考えられている。
画像所見の一覧は以下の通り(Mult Scler Relat Disord. 2019;39:101906. を参考に作成)
部位 |
備考
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画像
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中枢神経
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脳
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皮質
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希少
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白質
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多発性硬化症(MS)様の画像 |
*1(FLAIR 脳室周囲白質に高信号)
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運動障害疾患に似る
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混合型
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脳幹
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中脳
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脳幹病変では最多
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*2 (T2高信号病変)
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橋
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*1(T2高信号病変)
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延髄
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脊髄
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頸髄/胸髄
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脊髄病変では最多
MS/視神経脊髄炎(NMO)様の画像
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*3 (T2 胸椎・頚椎に複数の高信号病変)
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腰髄/仙髄
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混合型
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*1(T2 脳幹・中脳等に広範な高信号)
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動脈
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動脈狭窄
動脈解離
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*2 (脳血管造影、脳底動脈閉塞)
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静脈
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静脈洞血栓症
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非脳実質の中では多い
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頭蓋内高血圧
(非静脈洞血栓症)
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上記の混合型
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希少 |
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末梢神経
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ニューロパチー
ミオパチー
神経筋接合部障害
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希少
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*1Pan Afr Med J. 2015;20:51.
*2Radiographics. 2008;28(5):e31.
*3 Eur J Neurol. 2007;14(7):729-737.
*4 Rev Neurol (Paris). 2018;174(5):337-341.
*5 Mult Scler Relat Disord. 2019;39:101906.
典型的な神経Behçet病の頭部MRI病変は、脳幹・白質でのT2高信号の小病変である。このため脳梗塞の他、多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)等との鑑別が重要になる。
また、神経Behçet病は
の2型に分かれ、画像所見が分かれる。
急性型の場合
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T1低信号
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T2/FLAIR/DWI高信号(血管原性浮腫)
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造影MRIで病変部位濃染(patchy enhancement)
というのが典型所見。ただし、非神経ベーチェット病患者でも頭部MRIを撮像すると白質病変がある場合もあり注意。(Mod Rheumatol. 2012;22(3):405-413.)
一方で、慢性進行型は
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急性期のような信号変化の低下
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造影MRIでの濃染効果の低下
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脳幹萎縮
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Pan Afr Med J. 2015;20:51.
がある。特に脳幹萎縮は慢性進行型神経Behçet病に特徴的な所見であり、特に重要な所見。(Mod Rheumatol. 2012;22(3):405-413.)
参考:
Radiopedia "Behçet disease (CNS manifestations)"
up to date "Clinical manifestations and diagnosis of Behçet syndrome"(最終閲覧2020/7/4)