膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

寛解維持達成したRA患者の減薬…段階的なTNFα阻害薬減量vscsDMARDsの減量(TARAstudy)

Gradual tapering TNF inhibitors versus conventional synthetic DMARDs after achieving controlled disease in patients with rheumatoid arthritis: first-year results of the randomised controlled TARA study.
Ann Rheum Dis. 2019 Jun;78(6):746-753.
 
寛解維持達成したRA患者の減薬…段階的なTNFα阻害薬減量vscsDMARDsの減量
 

 

  • 目的
    • 関節リウマチ(RA)の患者に対する、1年間の寛解後における薬剤減薬戦略、2つの漸減戦略の有効性を評価すること
  • 方法
    • 多施設単一盲検無作為化対照試験
    • csDMARD+TNFα阻害剤で治療され、疾患活動性スコア(DAS)≤2.4・腫脹関節数(SJC)≤1を達成した患者を対象とする
    • csDMARD漸減とTNFα阻害薬漸減を無作為化
    • 寛解維持されていれば、投薬量を1/2, 1/4と漸減していき中止とした
    • メインアウトカム:「疾患フレア」患者の割合
      • DAS> 2.4および/またはSJC> 1によって定義される
    • セカンダリーアウトカム:1年後〜のDAS、EQ5D(QOL指標)、HAQ- DI
  • 結果
    • 計189人が登録し、ランダムに割り付け
      • csDMARDs漸減群(n = 94)
      • TNFα阻害薬漸減群(n = 95)にランダムに割り当てられました。
    • メインアウトカム:累積フレア率
      • csDMARD漸減群:33%(95%CI、24%〜43%)
      • TNFα阻害薬漸減群:43%(95%CI、33%〜53%(p = 0.17)
    • セカンダリーアウトカム;DAS、HAQ-DI、EQ-5Dは、差なし
  • 結論 
    • 9か月までは、csDMARD漸減群・TNFα阻害剤漸減群のフレア率は同等
    • 1年後では、csDMARD漸減群の方が10%フレア率に差あり(有意ではない)
    • TNF阻害剤漸減は、csDMARD漸減よりも優れてはいない
    • (ただ)社会的観点からは、コスト削減・長期的な副作用考慮すると、まずTNF阻害剤漸減の方が賢明?
 
寛解維持のできている関節リウマチでは治療薬漸減が一般的。ただ、その方法は定まっていない。
このTARAstudyは、漸減戦略に関しての初めての研究である。
  • ベースライン(漸減前)群比較
    • 特に群間に差なし
  • フレア率の時系列
    • csDMARDs漸減群の方が、12ヶ月時点ではフレア率低い?
  • セカンダリーアウトカム(DAS、HAQ-DI、EQ-5D)比較
    • 特に差なし
  • セカンダリーアウトカム(DAS、HAQ-DI、EQ-5D)時系列比較
      • 時系列でも特に差なし
  • テーパリング量
    • csDMARDs群で68%、TNFα阻害薬群で51%が、100%漸減(投薬終了)できている
    • ステロイド使用者・NSAIDs使用者共に差なし
      • NSAIDs使用者が2−3割いる
 
RAの治療は進歩し続けており、「drug-free」を目指すというステージに突入しつつある。
csDMARDs漸減とTNFα漸減で、大きな差なく減薬可能であった。薬価的にはTNFα>>>csDMARDsなので、TNFα減量をエビデンスを以って可能という点が特筆すべき点。
ただ「疾患活動性は落ち着いていても、TNFα阻害薬をやめられるのは 50%で、やめられないのは 50%」というのも非常に重要。生物学的製剤導入の際、これを伝える必要はある。「RAが落ち着けば減薬を目指すが、やめられない可能性はある」という説明が必要。