膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

EoRAレビューその2:予後、鑑別診断、治療

Kobak S, Bes C. An autumn tale: geriatric rheumatoid arthritis. Ther Adv Musculoskelet Dis. 2018;10(1):3–11. doi:10.1177/1759720X17740075
 
EoRA(高齢発症関節リウマチ)レビューの続き
予後
鑑別診断
治療

 

 
予後
EoRAの臨床経過・予後に関してははっきりわかっていない(文献によって意見が異なる)
ただ、患者群の問題の可能性あり
  • RF/ACPA陽性患者は陰性患者よりも、関節腫長・死亡が多かった(Rheumatology (Oxford). 1999 Mar;38(3):228-34.)→RF/ACPAはEoRA患者の予後不良マーカーの可能性あり
  • YoRAはEoRAよりも寛解率が高かった(Joint Bone Spine. 2016 Oct;83(5):511-5.
鑑別診断
EoRAの代表的な鑑別疾患は以下の通り
  • 変形性関節症
  • リウマチ性多発筋痛症(PMR)
  • 結晶性関節炎(痛風・偽痛風
  • 脊椎関節炎(SpA)
  • 血管炎
  • 傍腫瘍症候群
  • 肥大性骨軟骨炎
  • サルコイドーシス
  • 感染性関節炎(ウイルス/細菌)
 (ほぼ日本に関節リウマチガイドラインでの鑑別診断と同様)
 
治療
 YoRAで使用されるDMARDsはEoRAでも使用できるが、高齢のため副作用・並存疾患に注意する必要がある。
ただ、EoRAはYoRAよりも積極的な治療を受けていない傾向が強い(北米のコホート・YoRAとEoRAで疾患活動性に有意差なし、 Ann Rheum Dis. 2006;65(9):1226–1229.
  • MTXの投与率自体はEoRA>YoRA(63.9%対59.6%)だが、平均MTX投与量はYORA>EoRAであった
  • MTX毒性は、EoRAの方が頻回に見られた
  • csDMARDs, bDMARDs(生物学的製剤)ともに使用頻度はYoRA>EoRA
 →EoRAでは、MTX低容量単剤での治療患者が多かった。
  • ただ、近年の研究ではbDMARDsによる有害事象はEoRAでもYoRAでも変わらないというデータもあり、消極的な治療になりすぎているのかもしれない(J Rheumatol. 2006 Feb;33(2):234-43.)。
  • TNFα阻害薬の有効性はEoRAでもYoRAでも変わりない(Rheumatology(Oxford)48:1575-1580.2009)
  • いずれにしろ感染症のリスクはあるので注意。
結論
EoRAはYoRAとは異なる特性がある。まとめは以下の通り。

症状・検査に関しては以前の記事で説明した通り。
付け加える点としては
  • 治療が消極的になりがちであり、個々の症例に応じて十分な治療が求められる
というくらいか。