だいぶマニアックなまとめになりましたが、重要なことは「SLEと硬口蓋の口蓋紅斑性潰瘍は関係性が深い」ことと「SLEの口腔内病変には多彩な病変がある」ということだけな気がする。
頻度
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口腔内病変の頻度は文献により様々だが、全身性では9-45%、局所粘膜性病変では3-20%とされる。(Eur J Dermatol. 2008 Jul-Aug;18(4):376-81.)
部位
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182人のSLE患者を対象とした研究では、26%に口腔粘膜があった(Arthritis Rheum. 1978 Jan-Feb;21(1):58-61.)
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そのうち82%が無痛、89%が硬口蓋病変あり…口蓋紅斑性潰瘍
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⇨無痛性・浅い口腔内潰瘍が多く、硬口蓋病変が多い。(up to date. "Clinical manifestations and diagnosis of systemic lupus erythematosus in adults" 2019/12/29閲覧)
症状
病変は「ループス特異的口腔内潰瘍」と「非特異的潰瘍」に分かれる。(Am J Clin Dermatol. 2017; 18(6): 755–762.)
分類
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病変の種類
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部位
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特徴
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LE-特異的口腔内潰瘍
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口蓋紅斑性潰瘍
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咀嚼粘膜
(特に硬口蓋)
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無痛性、単発/多発性の紅斑性潰瘍
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口腔内DLE
(円板状エリテマトーデス)
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被蓋粘膜…
頬粘膜・軟口蓋
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白色放射性角化線条・有痛性毛細血管拡張症を伴う萎縮性プラーク
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被蓋粘膜
咀嚼粘膜
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白色レース状角化のある慢性・全周性の紅斑性プラーク
(Eur J Dermatol. 2008 Jul-Aug;18(4):376-81.)
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イボ状LE
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被蓋粘膜
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隆起性の激しい角質プラーク
(Eur J Dermatol. 2008 Jul-Aug;18(4):376-81.)
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LE-非特異的潰瘍
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アフタ性潰瘍
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被蓋粘膜
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・紅斑によるHaloを伴う白色~黄色の有痛性潰瘍
・ヘルペスとの鑑別が重要
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ループス口唇炎
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口唇
(特に下口唇)
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・小さいorびまん性の紅斑・口唇浮腫
・集簇性の有痛性潰瘍
・これもヘルペスが鑑別
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特に、口蓋紅斑性潰瘍はSLEの活動性との相関が報告されている重要な徴候であり、特異性も高い。( J Clin Pediatr Dent. 2009;33(3):255–258. )
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また無痛性のため自覚していないことが多い。
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⇨SLEの診断・フォローにおいて「硬口蓋潰瘍」を見ることが重要
鑑別診断:重要な鑑別としては扁平苔癬・歯科治療後の類苔癬・ヘルペスである。
主には臨床症状から判断だが、困難な場合もある。
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口腔内扁平苔癬
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部位は口腔粘膜後方が多く、口蓋はまれ
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白色網状線条が特徴的
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歯科治療後の類苔癬
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歯の充填物へのアレルギー反応と言われる。
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頬粘膜の白色物沈着が特徴
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充填物除去で改善する
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(頬粘膜の病変が充填物除去で改善)
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口唇・口腔粘膜・舌の水疱性病変
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水疱に対してTzank陽性となる
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通常2週間以内には消退するので、消退しないヘルペス様病変はSLEの可能性を考える必要がある。
治療
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病変に対する局所外用薬+全身治療が重要
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ただ、難治性のものも多いので注意。
(感想)
よく「SLEを診るときは、硬口蓋を見て潰瘍を探せ」と言われるので、どこまでそれが正しいのかを調べてみた。案外エビデンス的なものはないが、硬口蓋の口蓋紅斑性潰瘍に関しては必ず覚えておくべき病変だろう。それにしても種類が多い…
まとめ
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SLEの口腔内病変は多彩
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その中でも重要なのは「硬口蓋の口蓋紅斑性潰瘍」で、必ず硬口蓋を診察することが重要