膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

RS3PE基礎事項

RS3PE(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)症候群は、リウマチ性多発筋痛症(PMR)の類縁疾患で、「高齢者の突然発症の四肢浮腫+関節炎」として表現される。
RS3PEは特徴の頭文字を取った疾患である。 

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  • 日本におけるRS3PEの発症頻度は全人口の0.09%程度で、大半が50歳以上、男に多い(1:1-2程度)(Rheumatol Int 2012. 32:1695-99)
  • 病態の中心は「屈筋腱や伸筋腱の腱鞘滑膜炎」→四肢末梢・対称性の圧痕性浮腫 と考えられている。
  • 「悪性腫瘍の合併が多い」というのがもう一つの特徴。
    • 一般人口と比較して男性は7倍・女性は4倍の悪性腫瘍合併あり。
    • 胃癌, 大腸癌,前立腺癌,悪性リンパ腫が多く,肺癌, 卵巣癌,膀胱癌,慢性リンパ性白血病の報告もあり
      • (Semin Arthritis Rheum 40 : 8994, 2010.)
【検査】
特異的な検査は無いが、「炎症反応高値」+「画像での滑膜炎所見」→除外診断 というPMRなんかでもよく聞く方法が一般的。
 
 
この画像所見としてよく用いられるのは造影MRI・関節エコー。
  • 造影MRI:関節腱滑膜炎+血流増加
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      • 手関節・MCP/PIP関節の腱鞘滑膜炎+血流増加
      • (Ann Rhematol Dis. 2005. 64:1653-5より引用)
  • 関節エコー:皮下浮腫、腱滑膜肥厚・血流増加
    • f:id:CTD_GIM:20191202214036p:image
      • 皮下浮腫(Arthritis Rheum. 2005 Apr 15;53(2):226-33. より引用
    • f:id:CTD_GIM:20191202213439p:image

      • 滑膜肥厚、カラードップラーでの血流増加(Arthritis Rheum. 2005 Apr 15;53(2):226-33. より引用
 
前述したように確固たる診断基準はなく、「除外診断」なので、
病歴・所見(①急性発症、②50歳以上の高齢発症、③四肢の対称性関節炎、④手背、足背の圧痕性浮腫)
検査(炎症反応高値・画像での滑膜炎所見)
から総合的に判断する。
 
  • もう一つの特徴として「症状のわりに元気」というのも特徴のようである。(自経例も「手が膨らんで仕事ができないけどあとは全然平気」という人であった。)
  • 逆に「RS3PE」っぽいが、元気ないという人は積極的に悪性腫瘍を疑うべき。というパール(?)は覚えていいかもしれない。
【治療】
  • 治療は「低容量ステロイド」が著効することがよく知られている。ただ、完全離脱は困難な症例もある。(この辺はPMRと似ている)
  • 逆にステロイドが効きにくい場合以下を考慮すべき
    • 診断が間違っている(実はRAだった)…これもPMRと同様
    • 悪性腫瘍が合併している
 
エコーに関しては後日詳しくまとめます。
 
まとめ
  • RS3PE症候群は「高齢者の突然発症の四肢浮腫+関節炎」で表現されるPMRと類似点の多い疾患
  • 悪性腫瘍合併症例が多いので「元気がない」「ステロイドが効きにくい」症例では特に注意。
 
(一部参考:日内会誌 106:2131~2135,2017)