“Myocarditis in Adult-Onset Still’s Disease: Case-Based Review”より
・成人Still病(Adult-Onset Still's Disease: AOSD)に関して
AOSDは10万人あたり0.16-0.4人に発症する希少疾患である。
疾患の特徴性は
スパイクの高熱、リンパ節腫脹、多発関節炎、すぐ消退する皮疹、咽頭痛、漿膜炎、肝脾腫、白血球増多症、ESR高値、フェリチン高値、肝酵素上昇
がある。
疾患の特徴性は
スパイクの高熱、リンパ節腫脹、多発関節炎、すぐ消退する皮疹、咽頭痛、漿膜炎、肝脾腫、白血球増多症、ESR高値、フェリチン高値、肝酵素上昇
がある。
(日本内科学会雑誌 104 巻 10 号 2143−48 より引用)
診断基準は主に「山口基準」が使用される。
(日本内科学会雑誌 104 巻 10 号 2143−48 より引用)
(日本内科学会雑誌 104 巻 10 号 2143−48 より引用)
診断には
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心筋バイオマーカー
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心電図
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経胸壁心エコー
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心臓MRI が有用
・症例
38歳男性、咽頭痛・咳嗽・筋痛・関節痛・発熱・倦怠感・胸骨の裏側の痛み
2週間前からの症状で48時間前から倦怠感・胸痛が出現。
1週間前に近位を受信し、クリンだマイシン・アジスロマイシンが処方された。
既往は特になく、ディスクジョッキーをしている。
vital:BP97/57, BT38.4℃
咽頭腫脹、肺音異常なし、腹部異常なし、特に腫脹物なし、手関節・左肩に関節炎ではない関節痛あり、心音異常なし
データ
・白血球増加(15950)、80%異常が好中球
・TropI高値:6.13(NR<0.5)
・プロカルシトニン陽性:0.55ng/mL(NR<0.5)
・ECG:洞性頻脈、ⅢでQ波・T波が全体に増加
(aVRでPQ上昇もありそうだが…)
・CT:軽度胸水、肺塞栓なし
・エコー:壁運動正常、LVEF正常(58%)、軽度のMR・TR
初期診断:感染症?
→PIPC/TAZ+CAM開始
・各種培養は陰性
・フォローで採取したプロカルシトニンは陰性
・間欠熱が持続
・体幹部に皮疹
・肝機能上昇
・ESR軽度上昇(36)
・CRP39.5
・フェリチン2891(NR: 13.0ー150)
・マイコプラズマ陰性
・各種抗体は陰性
CT:特記所見なし
・山口基準:大項目のうち3項目が陽性…2週間以上の関節痛・皮疹・発熱・80%以上の好中球+白血球増加(>1万)、小項目のうちの3項目(咽頭痛・肝機能上昇・自己抗体陰性)
+心筋炎症状
→心筋生検は実施しなかったが、治療反応性が良かったことから生検は延期された。
ステロイドを0.5mg/kg/day+MTX 10mg/weekで開始。2日で解熱し症状も改善、白血球数・心電図所見も改善。
過度の労作を避けるよう指導後退院。7ヶ月後のフォローでも問題なし。
PSL 15mg+MTX15mg/week
フェリチンは115.4まで低下。
エコー問題無く、CXrでも胸水なし
(文献調査)
48症例を対象。
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男性に多い(79%)
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平均年齢32歳
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65%は心筋炎が病状初期から存在する。多いのは胸痛。
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心不全と診断されたのは44%
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ESR・CRP・フェリチン高値
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心電図異常
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ST異常(48%)
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T波異常(29%)
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Af(6%)
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VT(4%)
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心電図正常(10%)
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心エコー異常
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LVEF低下(58%)
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壁運動異常(50%)
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心室拡大・心筋肥大(13%)
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正常(10%)
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心臓MRI異常:7/11に心筋構造異常
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8症例で心筋生検:4勝例で炎症細胞浸潤、3症例で繊維化・炎症、1勝例で繊維化のみ
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マクロファージ活性化症候群(MAS)が8症例で発生
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重症例は33%
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治療
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全例でステロイド
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15/38: MTX
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11/48: アナキンラ(IL-1阻害薬)
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10/48: NSAIDs
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5/48: YNFα製剤
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その他:トシリズマブ、シクロホスファミド、アザチオプリン
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フォローアップ
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26症例、中央値12ヶ月
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5症例が再発
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2症例が死亡(共にステロイド単剤での治療)
考察
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診断
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心臓MRIが有用なことが多かった
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診断のゴールドスタンダードは「心筋生検」である(88%程度の的中率が報告)が、生検困難な場合もある。
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ただこの症例研究のうちの85%が臨床所見と非侵襲的な検査で診断されている。
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治療
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ステロイド治療が第一選択だが、27%でしか著効しない。このため50%以上の症例でsecond-line therapyが実施される。
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最も多いのはMTX(31%)
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アナキンラの効果があった比率は89%でIVIGはたったの41%
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他のbDMARDSに関しては再発症例での使用に限られていることもあり、有効性は不明。
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NSAIDs投与はあまり効果がなかった模様
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AOSDによる心筋炎は発熱を伴う心筋炎のうち以下の除外を行ってから想起するといいかもしれない
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感染性疾患
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心筋炎は致死的な疾患(1年死亡率21%)だが、AOSDの場合は4.2%。長期予後は不明。
(感想)
AOSDによる心筋炎は、激しい共通を持つ心筋炎+高度の炎症反応という一群で、感染性等を丁寧に除外した結果たどり着く診断。ステロイドだけでは再発多いので他の薬剤をうまく用いて早期治癒まで持っていけるよう努力することが重要なのだろう。