膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎レビュー

・抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎レビュー
"Anti-melanoma differentiation-associated gene 5 (MDA5) dermatomyositis: A concise review with an emphasis on distinctive clinical features."(画像は同レビューより引用)
J Am Acad Dermatol. 2018 Apr;78(4):776-785.

 このまえの問題の解説を兼ねて。

 

ctd-gim.hatenablog.com

 

 

 
抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎はCADM(Clinically amyopathic dermatomyositis:筋症状のない皮膚筋炎)の一群で、重症の間質性肺炎を効率に起こす。特徴的な皮膚症状がある一方で筋症状が乏しい、という臨床的な特徴があるため、過剰診断になりがちだが、患者アウトカムへの影響は小さいかもしれない。
 
1.皮膚症状
  • 皮膚症状は特徴的なことが多く、特に「皮膚潰瘍」は高率に見られることが多い。
  • 一般的ではないが、胸部・背部・上腕などの露光部に潰瘍を形成することもある
  • 「手掌丘疹」も特徴的
  • 指側面の角化、皮膚亀裂("mechanic hand")
 
抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎における皮膚症状頻度
病変
分布
頻度
皮膚潰瘍
MCP/IP関節全体、肘、膝、爪周囲
40-82%
脱毛症
頭皮(通常びまん性で瘢痕なし)
78%
指側面の角化、皮膚亀裂
拇指球、指側面
67%
手掌丘疹
手掌・手掌線
20-60%
口腔内潰瘍
歯肉、頬粘膜、舌、口蓋
50%
脂肪織炎
上腕、大腿、胸、殿部
 
 
20%
2.臨床症状
抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎における臨床症状
症状
頻度
間質性肺疾患
42-100%
急速進行性間質性肺疾患
39-92%
関節炎/関節痛
13-82%
発熱
46-69%
筋症状がない
46-50%
手のこわばり
25-40%
縦隔気腫
不明
 
間質性肺炎が非常に致死的。「筋症状のないDM」頻度は50%程度。癌に関してはMDA-5に関しては低頻度であった。
 
3.検査
とにかく重要なのはフェリチンである。抗MDA-5抗体陽性皮膚筋炎においてフェリチン高値(≧500ng/mL)は生存率がさがり、≧1600ng/mlではその相関が強まる。(Rheumatology. Sep 2010;49(9):1713-1719.)
またESR・IL-18も高値となる(Rheumatology. Sep 2012;51(9):1563-1570. )
特記すべきこととして、皮膚筋炎の2/3は抗核抗体(ANA)陽性だが、抗MDA-5抗体陽性皮膚筋炎の約90%がANA陰性。(. Rheumatology international 2012;32(12):3909-3915. )
 
4.マネージメント
MDA-5抗体陽性皮膚筋炎患者にまず行うべきは
・HRCTによる肺病変のスクリーニング
・呼吸機能検査・DLCO
である。
治療としては病変の重症度によって異なるが、免疫抑制剤を併用してのステロイド治療が一般的。
 
(感想)
「致命的な皮膚筋炎」の代名詞的な存在たるMDA-5。潰瘍を始めとした皮膚病変が特徴的なことは知っていたが、その他も覚えるべき所見と感じた。(参考: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1816147
 
まとめ
・抗MDA-5抗体陽性皮膚筋炎は特徴的な皮膚所見がある。
・致死的な間質性肺炎が多い。
・フェリチンを測定し、重症度に沿った免疫抑制剤投与を開始すべき。