Rheumatology (Oxford). 2021;keab651.
朝のこわばりは関節リウマチ(RA)に特徴的な症状で、RAの全身性/局所的炎症と関連しており、関節痛患者におけるRA発症リスクにもなる
→臨床的にRAが疑わしい関節痛(clinically suspect arthralgia, CSA)患者における朝のこわばりが、関節炎症と関連しているかを調べた
◎Keypoint
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朝のこわばりは早期関節炎における炎症と関連がありそう
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関節炎発症前の関節痛の段階で、朝のこわばりがすでに全身・局所の炎症を反映している
【Intro】
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朝のこわばり(Morning Stiffness: MS)は関節リウマチ(RA)に特徴的な症状で、RAの全身性/局所的炎症と関連している
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朝のこわばりは、RA発症リスクが高い患者に多く存在するとされる
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また朝のこわばりは、炎症の徴候と考えられており関連性が指摘されている
→CSAのある575人患者に対して、臨床検査・手足の造影MRIを実施
→1時間以上持続する朝のこわばりと炎症所見(画像上の関節炎症・CRP高値)の関係性を解析
【Method】
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オランダLeiden大学の早期関節炎に対するコホート研究
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臨床的にRAが疑わしい関節痛(clinically suspect arthralgia, CSA)患者575人を調査
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発症1年未満の小関節炎を持つ患者に対して、医師の診察をもとにRAへの進行が疑われる患者が対象→変形性関節症・線維筋痛症他害の患者は除外
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DMARDs等での治療は実施されない
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朝のこわばり評価は、患者への質問表を元に有無・持続時間を調査→60分以上/60分未満で二分
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CRP…5mg/L(日本表記では0.5mg/dl)をカットオフに上昇/正常に分類
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統計解析…朝のこわばりと局所的/全身性炎症の関連性を単変量/多変量解析で分析
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朝のこわばりの持続時間の影響も解析…≧30分、≧60分、≧120分
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RAの発症に対するMSの単変量の関連性は、Cox回帰で検証
【結果】
1.炎症と朝のこわばりの関係
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CSA患者575人が対象…平均年齢44歳、76%が女性
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CSA患者195/575人(34%)で朝のこわばりあり
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朝のこわばりのある患者は、こわばりのない患者と比較して、無症候性滑膜炎・腱鞘炎及びCRP高値が有意に高い
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無症候性滑膜炎…34%vs 21%、OR 1.95(95%CI 1.32–2.87)
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無症候性腱鞘炎...36%vs 26%、OR 1.59(1.10–2.31)
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CRP増加…31%vs 19%、OR 1.93(1.30–2.88)
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多変量解析上、無症候性滑膜炎・CRP高値が独立して朝のこわばりと相関
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無症候性炎症が強いほど、朝のこわばり頻度は高い
2.朝のこわばり持続時間の評価
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無症候性滑膜炎・CRP高値が強いほど、朝のこわばり持続時間が長い傾向あり
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※60分と120分は差なし
3.朝のこわばりとRA発症
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中央値773日の追跡期間で、575人中76人がRAに進行
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朝のこわばりが60分以上持続する患者は、RAに進行する頻度が高かった…HR 1.56 (0.99-2.45)
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→炎症とRA発症の経路における朝のこわばりの媒介的役割は確認できなかった
【Discussion】
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朝のこわばりの確認は関節炎診療で重要だが、炎症との関係性についてはわかっていなかった
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本研究上、朝のこわばりはMRI上の無症候性関節炎・炎症反応と関連していることがわかった
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また、無症候性炎症がある患者では朝のこわばりが多い
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また、朝のこわばりが長い(>60分)患者は無症候性関節炎・炎症反応高値が多い
【感想】
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診断未確定関節痛を見る上で、「朝起きて手がこわばって使いにくいことはありませんか?」「そのこわばりはそれくらいの時間をかけて良くなりますか?」というのはルーチンの質問
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この報告を参考にすれば、朝のこわばりが1時間以上ある患者は炎症がある可能性が高いと思って要精査・要フォローにしておいたほうがいいのだろう
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ただ、膠原病内科に紹介になる関節痛症例の多くがOAであるが、本研究の対象外となっていることには注意