膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

成人Still病レビュー

Feist E, Mitrovic S, Fautrel B. "Mechanisms, biomarkers and targets for adult-onset Still's disease." Nat Rev Rheumatol. 2018;14(10):603-618. 
 
あまり最近のレビューはなかったので2年前のものをまとめ+一部補足

①前置き

  • 成人Still病(adult-onset Still's disease: AOSD)は1970年代に全身型若年性特発性関節炎(SoJIA)に似た病態として提唱された。
  • 現在は「全身性自己炎症性疾患」の一つとして認識されている
  • 日本では10万人あたり10人程度の有病率とされる
  • 発症年齢は若年(16−35歳)が多いとされていたが、35歳以上・60歳以上での発症も確認されている
  • 性差はあまりないが、若干女性に多い
 

②病因

ほぼメカニズムは分かっていないが、
感染症等によるトリガー+遺伝子因子→マクロファージを介した「サイトカインストーム」が病態であると考えられている

f:id:CTD_GIM:20201226144650j:image

 
  1. 細菌・ウイルス感染による病原体関連分子パターン(PAMPs)・化学物質等によるダメージ関連分子パターン(DAMPs)が発症の引き金となる
    1. 感染症は割と何でもありだが、上気道炎が多い?→発症前の咽頭痛・嚥下痛・咽頭炎が多い
  2. これに遺伝子因子が加わる
  3. この結果、マクロファージからのIL-1βを介してマクロファージ・好中球を活性化させる
  4. 自然免疫細胞の激しい活性化・IL-6等の炎症性サイトカインの過剰産生を起こす→サイトカインストーム
  5. その後、疾患消散関連因子(RAMPs)の産生低下に伴って炎症が改善していく
 
 

③症状

よくある症状は以下の通り
 
主症状
その他症状
致死的合併症
皮疹
39℃以上の発熱
白血球>10,000/mm3
好中球>80%
関節痛/関節炎
嚥下痛
筋痛・筋炎
リンパ節腫脹・脾腫
心外膜炎・心筋炎
胸膜炎・肺疾患
肝炎
ESR・CRP上昇
フェリチン上昇
グリコシル化フェリチン低下
凝固障害
心筋炎
ARDS
肺高血圧症
劇症肝炎
マクロファージ再活性化症候群(MAS)
播種性血管内凝固症(DIC)
血栓性微小血管症(TMA
主症状
  1. 発熱
    • 基本的に疾患活動性があるときは発熱がある
    • 典型的には”Spike Fever”…1週間以上夕方に39℃以上の発熱が突然起こる
    • 急激な体調悪化と体重減少がある
    • 唯一の症状であることがあるため、AOSDは「不明熱」の鑑別となる
  2. 関節痛・関節炎
    • 発熱に次いで最も一般的な症状で、患者の2/3に発生する
    • 仙腸関節DIP関節を含んだあらゆる関節で起こりうる→関節リウマチ(RA)との鑑別が必要
    • 滑液嚢穿刺後は炎症性(細胞数>2000/mm3
    • 疾患が進行すると骨びらんが1/3で起こる
      • 手根骨に限局的な骨びらんはAOSDを示唆する(RAの場合、手根骨だけでなくMTP・PIP関節にも骨びらんが起こる)
  3. 皮疹
    • 発熱時の「サーモンピンク疹」が特徴的
    • 発疹は一過性で、発熱時に四肢近位部・体幹に現れるのが典型的
      • 顔面・手掌・足底に出現することはめったに無い
    • 薬疹と誤診されやすい…特にNSAIDsによるものと思われることが多い
    • じんま疹様皮疹・そう痒症は典型的ではない
    • 紫斑が出ることはほぼない→紫斑が出るときは血球貪食症候群・DIC・TMAのよるものが多いため、凝固検査を緊急で行う
  4. 白血球・好中球増多
    • 白血球数>10,000となることは多いが、50,000を超えることはほぼない→その際は白血病を疑う
    • 白血球減少+他の血球減少がある場合は反応性血球貪食性リンパ組織球症(RHL)・TMAを疑う
  5. その他
    • 発熱を伴う嚥下痛・咽頭痛が多い
    • びまん性対称性リンパ節腫脹も多く、肝脾腫と関連している可能性あり
      • 生検することで悪性リンパ腫との鑑別につながる
      • 通常反応性ポリクローナル過形成だが、菊池病のような壊死性リンパ節炎の報告もある
      • 筋肉痛も頻繁に起こる
その他の症状
  • 急性期炎症反応物質(CRP・ESRなど)が常に上昇している
  • 肝機能上昇が多いが、劇症肝炎は稀
    • 炎症・薬剤性との関連が多い
  • 抗核抗体等の免疫学検査は陰性
 

④バイオマーカー

 
バイオマーカー
診断能力
疾患活動性との相関
予後予測
(致死的合併症)
予後予測
(進行予測)
感度高い
非特異的
+
-
-
フェリチン>上限
感度高い
非特異的
+
+
+/-
フェリチン>上限x5
(≧1000μg/L)
感度40.8%
特異度80.0%
+
+
全身症状と関連
GF≦20%
感度79.5%
特異度66.4%
-
+
NA
フェリチン>上限
かつGF≦20%
感度70.5%
特異度83.2%
-
-
-
プロカルシトニン
敗血症除外
NA
NA
NA
血清アミロイドA蛋白
NA
NA
+(AAアミロイドーシスの予測)
NA
※GF: グリコシル化フェリチン、NA: データなし
 
  1. フェリチン
    • 高フェリチン血症はマクロファージ活性化の指標となり、サイトカインストームと関連しているかもしれない
    • 疾患活動性と相関している
  2. グリコシル化フェリチン(GF)
    • 通常GFは総フェリチンのうちの半分以上を占める
    • 炎症状態になると、GF濃度が低下し、20-50%程度となる
    • AOSDではGF<20%と極度の低下を起こす
    • →高フェリチン血症との組み合わせでAOSDの診断に役立つ
    • 日本の保険診療では測定できない
 

⑤鑑別診断

症状の多様性から鑑別診断は以下のように多岐にわたる。
(下線は特に重要な鑑別)
AOSDの鑑別疾患
検査
細菌
敗血症
感染性心内膜炎
胆道・胆石・尿路感染症
ブルセラ症、エルシニア症
血液培養、プロカルシトニン、心エコー検査、CT、IGRA、細菌・組織検査、血清検査・PCR
ウイルス
HIV感染症、ウイルス性肝炎
パルボウイルスB19感染症
麻疹・風疹
EBV・CMV感染症
血清検査・PCR
血清検査・PCR
悪性腫瘍
血液腫瘍
リンパ腫
免疫芽球性リンパ節症
キャッスルマン病
骨髄増殖性疾患
リンパ節生検
骨髄塗抹標本・生検
CT・PET−CT
固形癌
腎細胞癌・大腸癌・肺癌
腫瘍随伴症候群
CT・PET−CT
全身性疾患
自己免疫性疾患
SLE、皮膚筋炎・多発性筋炎、RA
血管炎(結節性多発性動脈炎等)
抗核抗体、CPK、特異的自己抗体
RF・ACPA、関節超音波
生検、ANCA、動脈造影
自己炎症性疾患
遺伝性自己炎症症候群:家族性地中海熱、メバロン酸キナーゼ欠損症、TNF受容体関連周期症候群、クリオピリン関連周期症候群
好中球性皮膚症・Sweet病
家族歴の確認、MEFV遺伝子シーケンシング、尿中メバロン酸、MVKシーケンシング、TNFRSF1Aシーケンシング、NLRP3シーケンシング
 
皮膚生検
その他
連鎖球菌後関節炎、反応性関節炎、サルコイドーシス、シュニツラー症候群、菊池病、薬物関連過敏症
ASO測定、結節性紅斑、単クローン性免疫グロブリン血症、リンパ節生検、好酸球増多症確認、薬物検査
(EBV・CMVは本文には記載なかったが、重要と考え付け足している)
※シュニッツラー症候群…掻痒感のない慢性蕁麻疹,単クローン性IgM血症が特徴とする原因不明の症候群
 

⑥診断

診断基準としては山口基準がよく使用されているが、あくまで「除外診断」である
 
基準
山口基準
Fautrel
大項目
・1週間以上の39℃以上の発熱
・2週間以上の関節痛
・典型的な皮疹:発熱時、丘疹性・掻痒感のないサーモンピンク疹が出現
・80%以上の好中球増多を伴う白血球増多(≧10,000/mm3
・39℃以上のspike fever
・関節痛
・一過性の紅斑
・好中球80%以上
・グリコシル化フェリチン比率≦20%
小項目
咽頭炎または咽頭
・リンパ節腫脹または脾腫
・肝機能異常
・RF・抗核抗体陰性
・典型的な皮疹
・白血球≧10,000/mm3
除外基準
感染症(特に敗血症・EBV)
・悪性腫瘍(特にリンパ腫)
・炎症性疾患(特に結節性多発性動脈炎)
なし
基準条件
大項目2つ以上かつ、総項目5項目以上
+除外基準を満たす
大項目4つ
または大項目3つかつ小項目2つ
感度特異度
感度96.3%、特異度98.2%
山口基準+フェリチン>正常値:感度100%、特異度97.1%
山口基準+グリコシル化フェリチン比率≦20%:感度98.2%、特異度98.6%
感度87.0%、特異度97.8%
 

⑦予後・経過

  • 治療後、再発することなく治療終了できるのは19-44%程度とされるが、再発・治療抵抗例も結構いる
  • 小児期JIA発症し、おとなになってからAOSDとして再発する例も多い
 

⑧初期治療

※あまり記載なく、独自追加
  • 重症度によって治療を決める
※重症度の分類基準(厚生労働省基準、https://www.nanbyou.or.jp/entry/282
 
AOSD重症度スコア
項目
点数
漿膜炎
1
リンパ節腫脹
1
DIC
2
2
ステロイド治療抵抗性
(PSL換算で≧0.4mg・kgに対して治療抵抗性)
1
好中球比率増加(≧85%)
1
フェリチン高値(≧3,000ng/ml)
1
スコア合計点0−9点
重症3点以上、中等症2点、軽症1点以下
※日本の難病申請には山口基準を満たす+中等症以上であることが必要
  • 軽症例(全身症状軽く、肝機能正常)の場合NSAIDsでの治療も考慮されるが、AOSD患者の20%にしか効果はない(Up to Date “Treatment of adult Still's disease”より)
  • →非軽症例・NSAIDs治療抵抗例ではステロイドでの治療を実施する
    • NSAIDsでの治療はあまり一般的ではない印象だが…
  • 関節炎症状があった場合、MTX等のDMARDs併用を考慮する
  • PSL用量は、重篤合併症・高疾患活動性があればPSL〜1mg/kg±ステロイドパルスで実施し、合併症なく低疾患活動性ならPSL0.5mg/kgなどの低用量も考慮(日本内科学会雑誌107巻第9号 p.1852-98より)
 
 
 

AOSDへの生物学的製剤

  • 難治例に対しての生物学的製剤の導入がトレンドとなっている
 
AOSDへの生物学的製剤
種類
薬剤
用法
報告数
患者タイプ
フォロー期間
完全寛解
IL-1受容体阻害薬
アナキンラ
100mg/日、皮下注
(200mgの場合あり)
>250
全身性・関節炎
>12ヶ月
80%
Yes
抗IL-1β
カナキヌマブ
(イラリス®)
4mg/kg、Max300mg
皮下注
10
全身性・関節炎
>12ヶ月
100%
Yes
IL−1トラップ
リロナセプト
Loading100-320mg
維持100−320mg/週
11
全身性・関節炎
>12ヶ月
100%
Yes
TNF阻害薬
インフリキシマブ
3.0-7.5mg/kg,0,2,6週点滴
その後6−8週ごと点滴
<100
関節炎
>12ヶ月
0-100%
NA
エタネルセプト
50mg/週、皮下注
IL-6受容体阻害薬
トシリズマブ
(アクテムラ®)
8mg/kg/月、点滴
162mg/w、皮下注
<150
全身性・関節炎
>12ヶ月
60-85%
Yes
抗IL-18
Tadekinig alpha
80or160mg/週、皮下注
<25
NA
4ヶ月
NA
NA
B細胞標的
リツキシマブ
1gを0,2週に点滴
6ヶ月後に再度点滴
1
NA
12ヶ月
NA
NA
T細胞標的
アバタセプト
(オレンシア®)
500-1000mg/月、点滴
125mg/週、点滴
2
NA
>12ヶ月
NA
NA
  1. IL-1阻害
    • アナキンラとカナキヌマブで臨床試験が行われているが、日本では利用不能(アナキンラ販売なし)
      • カナキヌマブ(イラリス®)は日本では2020年現在、家族性地中海熱等の自己炎症性疾患・全身型若年性特発性関節炎(JIA)にのみ適応あり
      • ちなみにイラリス®150mgは約150万円と大変高価
    • アナキンラ
      • アナキンラは臨床試験コホートへのメタ解析上、約80%の寛解率と約35%のステロイド減量効果を示した(Drug Des Devel Ther. 2014;8:2345-2357. 
      • AOSD患者12人に対するRCTでは、アナキンラによる有意な改善が示されている(Ann Rheum Dis. 2020;79:1819-1820.)
      • アナキンラ中止後も寛解が続く場合がある
      • infusion-reaction等の問題は多く、離脱率は約40%と高い
    • カナキヌマブ
      • 他のIL-1阻害薬が使用できないときのオプションとして注目されている
      • 第2相試験が実施されたが、疾患活動性の有意な改善は見られなかった(Ann Rheum Dis.  2020;79:1090-1097.
  2. IL-6阻害
    • IL-1よりも下流の「サイトカインストーム」の阻害として使用される
    • 炎症反応の低下・全身症状の改善には有意な効果があるが、関節症状の改善は微妙な模様(Arthritis Rheumatol. 2014;66(6):1659-1665.
    • 完全寛解は60-80%とIL-1阻害と比較して低い
    • 日本ではアクテムラ®点滴製剤のみ適応あり(2週間隔、1週まで短縮可能)
    • ステロイドの漸減はTocilizumab 8mg/kg/2wの状態で
    • PSL30mgまで…5-10mg/wで漸減
    • PSL15mgまで…2.5-5mg/2wで漸減
    • PSL7.5mgまで…1.5-2.5mg/4wで漸減
    • PSL5mgまで…0.5-1.5mg/4wで漸減 というのがプロトコルで示される(Ann Rheum Dis. 2018;77(12):1720-1729.
  3. IL-18阻害
    • Tadekinig alpha(組み換えヒトIL-18結合蛋白)の有用性が第2相試験では一応証明されている(Ann Rheum Dis. 2018;77(6):840-847.)
 

⑩治療戦略と今後の展望

提案されているフローチャートは以下の通り

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  • 関節症状が強ければIL-1阻害薬、全身症状が強ければIL-6阻害薬に反応する可能性が高い
  • どう治療を減量していくかに関しては研究がなく不明
  • 疾患活動性を測るスコアに確立したものはないが、いかが提案されている
    • Pouchet score…以下の12の症候をスコア化:発熱、皮疹、胸膜炎、肺炎、心膜炎、肝腫大、血清フェリチン> 3,000mg/L、リンパ節腫脹、WBC>15,000/mm3咽頭痛、筋肉痛、関節炎
    • 関節痛に対してはRA同様にDAS28などを使用してもいい
 

⑪致死的合併症

 
AOSDの致死的合併症
合併症
症状・徴候
診断の手がかり
治療
RHL
(反応性血球貪食性リンパ組織球症)
・持続的高熱(>38.5℃)
・末梢リンパ節腫脹、肝脾腫
・多形性皮膚発疹:発疹、浮腫、点状出血、じんま疹、紫斑
・多臓器不全
・血算の急激な変化;WBC・好中球増加、貧血・血小板減少
・血球減少
・ESRの低下
・肝機能異常
LDH高値
・高TG血症
・高フェリチン血症
・CD25、CD163高値
・骨髄塗抹標本等での血球貪食
ICU管理
・追加トリガーの除外:主に感染症
・免疫抑制:高用量ステロイド±数日後のIL-1orIL-6阻害薬
→難治性の場合、エトポシドまたはシクロスポリン
DIC
(播種性血管内凝固症候群)
・血腫・出血
血栓性イベント
・多臓器不全:ARDS、胸水。心筋炎、肺塞栓、消化管出血、中枢神経性病変
•血小板減少症
•PT・APTT延長
•フィブリノーゲン低下
•フィブリン分解産物増加
ICU管理
免疫調節剤:高用量ステロイド±IL-1orIL-6阻害剤
→難治性の場合、シクロスポリンA
血栓性微小血管症、別名Moschcowitz症候群)
•急性視力障害(初期兆候)
•虚弱
•錯乱、発作、昏睡
•腹痛、嘔気、嘔吐、下痢
•皮膚壊疽
•心筋障害による不整脈
•多臓器不全
機械的溶血性貧血(Coombs陰性)
•血小板減少症
•多臓器不全(主に腎臓と中枢神経)
・ICU管理
高用量ステロイド血漿交換±血液透析
→効果不十分なら専門医と相談±IL-1orIL-6阻害剤orシクロスポリンorIVIG
劇症肝炎
•身体状態悪化:食欲不振、倦怠感
•黄疸
•肝腫大
•右側腹部痛
•出血(稀)
・急激に悪化する肝機能
・Fibro Test高活性(肝線維化指標)
・肝生検:リンパ球・形質細胞・好中球の非特異的門脈浸潤、hepatocytic lesions、大規模な壊死
ICU管理
肝毒性のあり得る薬剤の中止…アセトアミノフェンアスピリン、NSAIDs、MTXなど
RHL、DIC、TMAの除外
ウイルス再活性化の除外
高用量ステロイド±IL-1orIL-6阻害剤orシクロスポリン
肝移植考慮
心合併症
•心膜炎(再発例あり)
•心筋炎
•心内膜炎(例外的)
・心電図
・心エコー
・心筋炎→トロポニン・CK上昇
ICU管理
・高用量ステロイド±IL-1orIL-6阻害剤
PAH
(肺動脈性肺高血圧症)
•呼吸困難(主症状)
•倦怠感・めまい
•失神
•ARDS
・心電図:右房肥大
・心エコー:収縮期PAP>35mmHg
•右心カテーテル検査(Gold standard)
  安静時の平均PAP≥25mmHg
  呼気終末PAWP≤15mmHg
  肺血管抵抗>3WU
・密な経過観察、肺高血圧症専門施設と相談
・血管拡張療法:Ca-blocker、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬、プロスタサイクリン類似体
・免疫抑制療法:高用量ステロイド±IL-1orIL-6阻害剤orシクロスポリン
肺合併症
•胸膜炎
•間質性肺疾患±ARDS
•無菌性膿胸
•びまん性肺胞出血
•高解像度CT
•BAL(鑑別診断のため)
•肺機能検査
・ARDS→ICU管理
・鑑別診断の除外…感染症、心原性(BNP・心エコー)、薬剤性、医原性、悪性腫瘍
・高用量コステロイド±IL-1orIL-6阻害剤
AAアミロイドーシス
•非常に稀
•腎不全、蛋白尿、浮腫
•消化器系症状
•起立性低血圧等の神経障害
生検…小唾液腺、腹部脂肪、腎臓
IL-1orIL-6阻害剤による炎症コントロール
 
  1. RHL(反応性血球貪食性リンパ組織球症)
    • マクロファージ再活性化症候群(MAS)とも呼ばれる血球貪食症候群
    • 発熱+WBC減少・好中球減少で疑う
    • 原因としては感染、特にウイルス再活性化が多い
    • ICUでの全身管理+抗サイトカイン療法(IL-1orIL-6阻害剤)を早期に検討する
    • IVIGは非推奨
  2. 凝固障害…DIC、TMA
    • 血栓・出血イベント+多臓器病変で疑う→凝固検査で診断
    • DICへの治療
      • 血小板・凝固因子輸血
      • Activeな出血→フィブリノーゲン投与
      • Activeな出血なし→ヘパリン等を考慮
      • 高用量ステロイド(パルスなど)+他の免疫抑制剤(IL-1orIL-6阻害薬orシクロスポリン)
    • TMAは初期の視力障害が多い→疑ったらADAMTS13活性測定
    • TMAは治療しても、死亡率〜20%と高率
  3. 心臓・肺合併症
    • PAHは死亡率〜40%と致死的な合併症
      • 進行性の呼吸困難で疑う→心電図・エコー・右心カテーテル検査を行う
  4. AAアミロイドーシス
    • 非常に稀
 

⑫まとめ

  • AOSDはマクロファージ・IL-1を介した「サイトカインストーム」が病態の中心である
  • 症状は多彩で、「除外診断」が基本
  • 特異的マーカーはあまりないが、フェリチンは役立つ
  • 治療はステロイドが中心だが、IL-1阻害薬・IL-6阻害薬といった選択肢は増えつつある
  • 致死的合併症が多彩なため、密な経過観察が重要
 

⑬感想

AOSDは診断も治療も割とフワッとしているので、知識の整理と思ってまとめてみた。ガイドラインも相当曖昧な部分が多い印象。 
成人スチル病診療ガイドライン2017年版

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  • 発売日: 2017/11/29
  • メディア: 単行本
 

 

それでもかなり強烈な免疫抑制療法が必要で、致死的合併症が発症早期に起こりうるというところが恐ろしい…
本稿では割愛したが、JAK阻害薬の報告も上がったりしているので今後の治療・診断の進歩に期待したい。