"Computed tomography findings of early-stage TAFRO syndrome and associated adrenal abnormalities."
Eur Radiol. 2020 Oct;30(10):5588-5598.
TAFRO症候群基礎知識
TAFRO症候群は多中心性Castleman症候群(MCD)の一亜型の症候群で、
- Thrombocytopenia(血小板減少)
- Anasarca(大量胸腹水)
- Fever(発熱)
- Reticulin fibrosis(骨髄線維化)
- Organomegaly(肝脾腫・リンパ節腫脹) を特徴とする
背景
TAFROは希少疾患で画像所見としては
- 全身浮腫
- 肝脾腫
- 軽度のリンパ節腫脹 が多い
結果
①13例の患者特徴
②初期CT画像(発症後3週間以内)
- CT撮像に至った初期症状…発熱・CRP上昇(7例)、腹痛(3例)、リンパ節腫脹(2例)、胸痛(1例)
- 13例中5例は死亡、8例は寛解
- 多かったCT所見
- 傍大動脈浮腫・軽度リンパ節腫脹(13/13⇨100%)
- 次いで多かったのは腎周囲浮腫(92%)
- 一方で胸水(38.5%)・腹水(53.8%)・皮下浮腫(53.8%)は案外少なめ
- 多かった所見…発熱、CRP増加、ALP増加、eGFR減少、血小板減少症
- 副腎所見…13例中6例で副腎病変あり…腫大6例、虚血4例
③典型的な画像所見
傍大動脈浮腫
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傍大動脈浮腫
左副腎腫大(矢印)
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a:(発症7日前)
傍大動脈浮腫
両側副腎部分虚血(白矢印)
b:(発症32日後)
萎縮を伴う両側副腎石灰化
⇨梗塞後の所見
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a:(発症9日前)
傍大動脈浮腫
門脈周囲浮腫(黒矢印)
両側副腎部分虚血(白矢印)
b:(7ヶ月後)
萎縮を伴う両側副腎石灰化
⇨梗塞後の所見
胸腹水出現
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グリソン鞘浮腫(黒矢印)
脾梗塞を伴う脾腫(白矢印)
腹水
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腹水・皮下浮腫 | |
胸水
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心嚢水・胸水
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④後期のCT(診断基準が満たされる前後1か月以内かつ、発症後3週間以降)
⑤初期/後期でのCT所見の違い
- 胸水・腹水・皮下浮腫・骨病変が後期に有意に多い
- 前縦隔病変は早期では少ない傾向あり
Discussion
- TAFRO症候群の発症早期CTで、傍大動脈浮腫と軽度のリンパ節腫脹が全症例に見られた
- また大半で腎周囲浮腫が見られた一方で、胸腹水・皮下浮腫のない症例あり(46.2 –61.5%)
- 早期CT所見因子は、寛解群よりも死亡者の方で有意に多い⇨発症早期でCT所見がたくさんあるTAFROは予後不良?
- 初期段階でも副腎異常が高頻度(53.8%; 7/13)で観察された
- TAFROの鑑別疾患であるiMCD-NOS(TAFRO以外の特発性多中心性Castleman病)、POEMS症候群、悪性リンパ腫にはない特徴⇨副腎異常はTAFROに比較的特徴的な所見?
- 副腎異常の鑑別としては、感染・凝固異常(抗リン脂質抗体症候群・真性多血症・本態性血小板血症)・心不全など
- 副腎異常の理由の仮説
- 副腎は複数の動脈から血流が供給さるが、排液静脈は1つしかない⇨副腎梗塞・出血は静脈性が多い
- TAFROはリンパ系のうっ血を起こしている?
- TAFROの浮腫はまず傍大動脈周囲に発生し、その後胸腹水・皮下浮腫が発生する
- TAFROの浮腫の原因
- 炎症性サイトカインによる血管透過性の増加
- 静脈・リンパのうっ滞
- 筆者によるTAFROのメカニズムの仮説
- 原因不明だが、大動脈周囲の静脈・リンパの廃液不良が起こる⇨鬱血による副腎虚血を促進する
- うっ血が解剖学的に近い腎臓に広がる⇨腎障害をおこし、全身循環に影響
- 全身浮腫へ
結論
- 傍大動脈浮腫・軽度リンパ節腫脹は、TAFRO症候群早期で最も一般的な異常なCT所見
- 早期のCT所見でTAFROのCT所見が多いと予後不良
- 副腎障害はTAFROに特徴的な所見であり、鑑別に役立つ
感想
13例のCT画像の検討でしかないが、TAFROには特徴的なCT所見があり、その一つが「副腎の異常である」、というのは覚えておいて良いと感じた。