Quinn KA, Patterns of clinical presentation in Takayasu's arteritis [published online ahead of print, 2020 May 19].
Semin Arthritis Rheum. 2020;50(4):576‐581. doi:10.1016/j.semarthrit.2020.04.012
先に結論…高安動脈炎の診断は難しく、様々な臨床症状を起こす。虚血イベントが起こった患者であっても、先行する症状が必ずしもあるというわけではない(「症状が虚血だけ」という高安動脈炎もいる)。
高安動脈炎の臨床症状に対しての前向き観察コホート研究。
診断時の臨床症状から患者を以下の5個のカテゴリーに分類して評価
先行する症状も含めて評価。
Intro
高安動脈炎(Takayasu's arteritis: TAK)の進行は「三相性パターン」(3段階の臨床経過)を経た後"burn out"の状態に至るとされるが、進行後に見つかることが多く観察することは難しい
※「三相性パターン」は以下の通り
フェーズⅠ:全身症状(発熱・夜間盗汗)・脈拍の消失
フェーズⅡ:動脈の圧痛・自発痛…血管炎症
ということで、以下を調べてみた。
①診断時の高安動脈炎の臨床症状パターンはどのようなものか?
②診断時に虚血性イベントが起こっていた高安動脈炎患者に、先行する三相性パターンはあるか?
方法
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高安動脈炎患者を2つのコホート(VCRC208人・NIH67人)から集めた275人を前向き解析
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高安動脈炎診断基準は1990年ACR基準を用いる
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診断時の臨床症状を「三相性パターン」の症状から5つのカテゴリーに分類
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フェーズⅠ
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Group1: 全身症状…BT38℃以上の発熱・病的体重減少(※血管症状・虚血イベントがない状態)
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フェーズⅡ
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Group2: 頚動脈痛(Carotidynia)
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フェーズⅢ
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Group4: 虚血イベント…脳血管虚血、網膜虚血、心筋梗塞、腎血管性高血圧、腸間膜虚血
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その他
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Group5: 無症候性…①~④が無いが診断されたもの
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また、Group4(虚血イベントを起こした患者)に、Group1-3の症状が先行していたかどうかも合わせて評価
結果
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グループ分け
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全身症状8%、頸動脈痛13-15%、頚動脈以外の血管症状43-47%、虚血イベント28-30%、無症候性2-6%
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Group3(頸動脈以外の血管関連症状)が最多
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Gropu3で最多は四肢跛行、次いで頭痛・ふらつき
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患者基礎データ
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白人女性が中心で、診断時平均年齢は27.6歳
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グループごとでの人種差なし
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Group1(全身症状)…発症年齢・診断年齢が最も若く、男性が相対的に多かった
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Group3(血管症状)…診断時の年齢が高く、発症から診断までの期間は最も長い
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Group4(虚血イベント)…診断年齢が最も若い
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Group5(無症候性)…男性が相対的に多く、診断時の年齢が高い(平均35.3歳)
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慢性炎症疾患の併存に関しては有意差なし
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治療内容
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Group5(無症候性)は治療受けない比率高い
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Group1-4の治療は大体がステロイド+csDMARDsで有意差なし
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炎症反応
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Group4(虚血イベント)でも診断時にCRPまたは赤沈が上昇した患者は49%
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血管病変
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病変としては頚動脈・鎖骨下動脈が多い
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Group2,3(血管症状)では頚動脈・鎖骨下動脈病変が多い
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Group4(虚血イベント)・Group5(無症候性)では腹部大動脈・腸間膜動脈病変が多い
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Group5(無症候性)では腎動脈病変が多い(腎血管性高血圧で見つかることが多いため)
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その他の動脈は有意差なし
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代表的な画像
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虚血イベント患者の先行症状
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先行症状のある患者が多いが、「三相性パターン」を示したのは19%
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先行症状なく虚血が起こった患者も28%と多い
結論:診断時の高安動脈炎の臨床症状は多彩であり、「三相性パターン」を示すとは限らない。また、炎症反応が上昇していないこともある。
感想
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高安動脈炎は「若年者の不明熱の原因」というだけでなく、「若年者の大血管イベント」として診断に至ることがある
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先行症状がなくても「若年者の大血管イベント」が起こりうる
という2点は覚えておいたほうがいいように感じた。
他の炎症性疾患合併の高安が案外多かったこと、男性例で無症候性・全身症状のみが多いということは少し気になる点。男性の高安の非典型例の診断は相当に難しいように思える。
高安動脈炎の診断基準として海外からのACR1990年基準の他、日本からも診断基準が提唱されている。
こちらの基準では臨床症状が必須となるため、この論文で示された「無症候性高安動脈炎」というのは入らなくなってしまう(=definiteにならない)。炎症反応高値+何かしらの大血管病変を血管炎ととるか、血管炎としても治療すべきかというのは難しい問題。