Arthritis Rheumatol. 2021;10.1002/art.41774.
GCA治療推奨
TAK治療推奨
①GCAの検査への推奨
推奨・声明
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エビデンスレベル
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GCAが疑われる患者への初回の側頭動脈生検は、両側よりも片側の生検を条件付きで推奨
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低
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低
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低
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低
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低
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GCAが疑われるが側頭動脈生検が陰性の患者には、確定診断のため臨床評価のみよりも、大血管の非侵襲的血管画像検査を条件付きで推奨
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非常に低い〜低
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GCAと新規診断された患者には、大血管病変評価のために非侵襲的血管画像検査を行うことを条件付きで推奨
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非常に低い
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生検をかなり重視した推奨で結構驚いた。このあたりはEULARとの違いだろうか
②GCAの治療への推奨
推奨・声明
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エビデンスレベル
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医学的管理
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非常に低い〜低
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非常に低い
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…ただし、隔日内服の有効性を示す論文もある(Ann Intern Med. 1975;82(5):613-618.)
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低
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非常に低い〜低
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低〜高
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…MTXなど
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非常に低い〜低
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低〜中
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非常に低い
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非常に低い〜中
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✝
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※PMR症状の再発はステロイド増量で対応可能
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✝
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✝
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外科的介入
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GCAに関して外科的介入を必要とする患者の場合、介入の種類・タイミングは、血管外科医・リウマチ専門医の間で共同決定しなければならない
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‡
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免疫抑制療法を受けているが四肢/臓器虚血症状の悪化徴候がある重症GCA患者には、免疫抑制療法の強化+外科的介入よりも免疫抑制療法の強化を条件付きで推奨
※破裂リスクの高い大動脈瘤等は例外
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非常に低い〜低
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非常に低い
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臨床経過・検査モニタリング
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非常に低い〜低
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炎症マーカー値のみ上昇しているGCA患者には、免疫抑制療法強化よりも経過観察・モニタリングを行うことを条件付きで推奨
※炎症上昇は非特異的である可能性がある
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非常に低い
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✝:文献レビューは実施されず、入手可能文献と専門家意見から形成
‡:特定のPICOに基づいていなかった
感想
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GiACTA(N Engl J Med 2017;377:317-28)の結果が色濃く反映され、TCZの併用を積極推奨している
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炎症反応上昇のみであれば経過観察することを推奨しているが、実臨床的には画像評価等で残存病変・再発がないかどうか確認しに行く気がする
③高安動脈炎の治療に関する推奨/声明
推奨・声明
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エビデンスレベル
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医学的管理
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※パルスは致死的・臓器不全リスクのある場合に検討
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非常に低い
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※非重症患者では低用量ステロイドが考慮される可能性あり
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非常に低い〜低
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※再発を繰り返す場合は長期間継続する場合あり
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非常に低い
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…MTX、TNFi、AZAなど
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低
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非常に低い〜低
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ステロイド単剤治療に対して抵抗性の患者には、TCZ有効性をよりもTNFiの追加を条件付きで推奨
※TNFiが禁忌の場合は、TCZ考慮がされる可能性あり
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非常に低い
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炎症所見がなくても、画像上以前特定された血管病変が無症候性に進行しているTAK患者には、免疫抑制剤の増量・変更よりも現在の治療継続を条件付きで推奨
※側副血行路は時間の経過とともに頻繁に発生する→介入は必ずしも必要ではない。ただし病変の場所・範囲を考慮し、重大病変がある場合には免疫抑制剤の強化が正当化される
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非常に低い
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活動性のあるTAKがあり、頭蓋/椎骨脳底動脈への重大秒編がある患者には、アスピリンまたは他の抗血小板療法を追加することを条件付きで推奨
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低
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外科的介入
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外科的介入を必要とする患者の場合、介入の種類・タイミングは、血管外科医・リウマチ専門医の間で共同決定しなければならない
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✝
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進行中の活動性病変所見がないが、持続的な四肢跛行のあるTAK患者には、外科的介入を条件付きで推奨
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非常に低い〜低
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免疫抑制療法を受けているが四肢/臓器虚血症状の悪化徴候がある重症TAK患者には、免疫抑制療法の強化+外科的介入よりも免疫抑制療法の強化を条件付きで推奨
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非常に低い
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腎血管性高血圧症・腎動脈狭窄症のある患者には、外科的介入よりも医学的管理を条件付きで推奨
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非常に低い〜低
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頭蓋/頚部血管の狭窄はあるが臨床症状のないTAK患者には、外科的介入よりも医学的管理を条件付きで推奨
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非常に低い〜低
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四肢/臓器虚血症状の悪化徴候がある重症TAK患者には、外科的介入よりも疾患活動性が止まるまで外科的介入を遅らせることを条件付きで推奨
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非常に低い〜低
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血管外科的介入を受けるTAK患者に対しては、活動性疾患がある場合には手術前後の期間に大量のステロイドを使用することを条件付きで推奨
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非常に低い〜低
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✝:文献レビューは実施されず、入手可能文献と専門家意見から形成
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TAKT trial(TAKへのTCZ有効性を見たRCT、Ann Rheum Dis 2018;77:348–54.)でprimary outcomeを達成できなかったため、TCZ有効性をの推奨度はやはり低め
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このため、TNFiをTCZよりも優先しているが、正直TNFiの結果がTCZよりも優れているような感じはしない。日本では保険適応外なことにも注意。
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TAKは疾患モニタリングが難しく、画像正常・炎症あり、炎症なし・画像進行といった場合があるのだが、そのあたりにも言及してくれているのはありがたい。安易な治療強化は気をつけろ、という推奨は大事にしたいと思う。
④高安動脈炎のモニタリング・画像検査に関する推奨
推奨・声明
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エビデンスレベル
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臨床・検査モニタリング
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TAK患者には、疾患活動性評価ツールとして炎症マーカーを臨床モニタリングに追加することを条件付きで推奨
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非常に低い〜低
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明らかに臨床的寛解期にあるTAK患者には、臨床的モニタリングを行わないよりも長期的に臨床的モニタリングを行うことを強く推奨
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非常に低い
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炎症マーカー値のみ上昇しているGCA患者には、免疫抑制療法強化よりも経過観察・モニタリングを行うことを条件付きで推奨
※炎症上昇は非特異的である可能性がある
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非常に低い
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血管画像
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TAK患者での疾患活動性評価ツールとして、カテーテル血管造影よりも非侵襲的画像検査の使用を条件付きで推奨
…CT/MRI血管造影、FDG-PET
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低
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TAKと診断されている患者には、定期的な臨床評価に加えて、定期的な非侵襲的血管画像検査を予定することを条件付きで推奨
…3-6ヶ月毎程度で定期的に画像検査を行うと良い?
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非常に低い〜低
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※異常所見も必ずしも血管炎によるものとは限らないので、放射線科医と画像を検討したあとに行う必要がある
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非常に低い〜低
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やはり画像フォローに重きが置かれている印象であり、施設が許すなら定期的なCT/MRI/PETを行うことが望ましいのだろう
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頚部血管超音波について言及がないのは気になる
※AZA=アザチオプリン、ABA=アバタセプト、MTX=メトトレキサート、TCZ=トシリズマブ、TNFi=腫瘍崩壊因子(TNF)阻害薬