膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

2023EULAR SLE推奨

Ann Rheum Dis. 2023;ard-2023-224762. 
EULAR2023で公表されていたSLE推奨が論文化。
それほど新規性はないが個人的に気になったポイントは以下の通り
 
  • ステロイドは初期用量から中等度ステロイド許容という記載あり
  • ステロイド減量目標が7.5mg→5mgに変更。さらに寛解時のステロイド中止まで言及
  • 生物学的製剤(Belimumab・Anifrolumab)が治療推奨に追加されたが、既存治療と比較して優れているかというのは全く不明で、並列表記
  • 重症・再発例は、高用量CYC・RTX推奨
  • TMA・CAPSへのEculizumab有用性が期待されるが、推奨には入らず
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EGPAの腎病変

EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)における腎病変は稀ではあるが、重症例が多い。
  • Five factors scoreでも腎病変は入っており、EGPA腎病変は重症例としてカウントされる。
    • 1996年Five factors score…蛋白尿(>1g/day)、消化器症状、腎機能障害(Cre>1.58mg/dL)、中枢神経障害、心筋症
    • 2011年Five factors score…蛋白尿(>1g/day)、消化器症状、腎機能障害(Cre>1.58mg/dL)、65歳以上、心筋症

再発性リウマチ性多発筋痛症に対してのSarilumab

 N Engl J Med. 2023;389(14):1263-1272.
リウマチ性多発筋痛症(PMR)はステロイド単剤治療が可能なリウマチ性疾患ではあるが、ステロイド漸減中によく再発する。
その再使用する薬剤としては、Methtrexate(MTX)・Tocilizumab(TCZ)(保険適応外)があり、TCZの有効性は各方面で報告されている。

 

日本で利用可能なIL-6阻害薬としては、TCZの他Sarilumab(以下SAR)(ケブザラ®)がある。
今回(二番煎じ的に)再発性PMRへのSARの臨床試験SAPHYR試験が公表された。
SARを使用することによって急速ステロイド漸減可能・寛解率高い、という内容だが、(PSL3ヶ月で終了プロトコルということもあり)SAR使用しても大して寛解していない。PMRはSAR単剤では太刀打ちできない可能性もあるのだろうが、本当に彼らはPMRなのだろうか?
 
  • 【Method】
  • 【Result】
  • 【Discussion】
  • 【感想】
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リウマトイド血管炎

Autoimmun Rev. 2023;103391.
リウマトイド血管炎(Rheumatoid vasculitis: RV)は、RAの関節外症状として有名だが、RA治療の改善とともに減少傾向にある。
ただ、多彩な臓器症状・鑑別疾患の多彩さ・治療の難しさなど難しい例も散見される。治療としてはRituximabが中心だが、保険的に使いにくいのが難点。
  • ◎機序・疫学
  • ◎症状
  • ◎診断
  • ◎治療
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ループス腎炎の治療推奨 (GLOSEN)

Clin Kidney J. 2023;16(9):1384-1402.
Spanish Group for the Study of Glomerular Diseases (GLOSEN)からの推奨。ループス腎炎は病型・治療薬が多く、エキスパートオピニオンが推奨に多い。
  • ①腎生検適応
  • ②治療による寛解基準
  • ③ループス腎炎classⅠ/Ⅱ治療
  • ④ループス腎炎classⅢ/Ⅳ±Ⅴ 初期治療
  • ⑤ループス腎炎classⅤ 初期治療
  • ⑥ループス腎炎classⅢ/Ⅳ±Ⅴ 維持療法
  • ⑦その他
  • ⑧薬剤副作用とその対策
  • 【感想】
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痛風への尿酸降下薬使用時、コルヒチン併用に意味はあるのか?

Ann Rheum Dis. 2023;ard-2023-224731.
痛風の慢性期治療・再発予防として尿酸降下薬を行うが、急激な尿酸値の低下が痛風再燃(フレア)に繋がりうるということはよく知られている。
痛風患者に対して尿酸降下療法を実施する際、3-6 か月間抗炎症薬予防内服(コルヒチン・NSAIDsなど)を受けることが推奨されている(Arthritis Care Res (Hoboken). 2020;72(6):744-760.)
ただこの推奨が出てきた際の臨床試験はアロプリノール初回投与量300mgと高用量であったが、アロプリノール過敏症症候群のリスク等から最近の臨床試験ではアロプリノール初回投与量50-100mg程度と低用量となった。低用量で開始する場合、プラセボ群・尿酸降下薬群間で痛風フレアに特に差がないこともわかりつつある。
 
→低用量での尿酸降下薬開始であれば、抗炎症薬予防内服は不要では?ということで臨床試験が組まれた
Short Answer:尿酸降下療法中はコルヒチンをしばらく併用するのもありかもしれない。ただし、コルヒチン副作用と中止直後に痛風悪化しやすい点には注意が必要。
  • 【Method】
  • 【Result】
  • 【Discussion】
  • 【感想】
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シェーグレン症候群に伴う腎症状

シェーグレン症候群の腎症状は、間質性腎炎の他尿細管異常による電解質異常など多彩。発覚した頃には不可逆的になっていることも多く、治療は非常に難しい。
 
シェーグレン症候群による腎症状は比較的稀と思われるが、報告によってまちまち(4-33%程度)
  • 無症候性でも尿細管性アシドーシスを合併している場合があり、早朝尿pH>5.5で尿アニオンギャップ陽性患者はかなりの数いる
  • また、発見された頃には慢性化(尿細管萎縮・間質の高度線維化)している場合も多く、早期治療が重要
  • 原発性シェーグレン症候群患者は年に1回程度腎症状スクリーニングすべき?
    • 血液検査…血清クレアチニン、eGFR、血液電解質(HCO3-・リン含めて )
    • 尿検査…早朝尿のpH・浸透圧、蛋白尿(TP/Cre)
  • ◎上記の異常があった場合、高ガンマグロブリン血症・クリオグロブリン血症の合併がある場合、6ヶ月おきに以下を実施
     
    • 血液…クレアチニン電解質(K,Cl,Pなど)、重炭酸、尿酸 
    • 尿…24時間尿量、早朝尿での尿定性沈渣、蛋白尿、尿Cre・電解質(Caなど)、尿培養
    • 腎超音波検査
    • 腎生検の検討
  間質性腎炎 酸塩基・電解質異常
糸球体腎炎
病態 急性尿細管間質性腎炎
慢性尿細管間質性腎炎
遠位尿細管性アシドーシス(→高カルシウム尿症・低クエン酸尿症)
尿崩症
Fanconi症候群
Bartter症候群
Gitelman症候群
クリオグロブリン血症に伴う膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
二次性糸球体腎炎
腎機能 進行性CKDを起こす 正常例が多い 低下する場合あり
鑑別診断 感染症腎盂腎炎、結核レプトスピラ症、ハンタウイルス)
・薬剤(NSAIDs、β-ラクタム系抗生物質
アロプリノール)
サルコイドーシス
IgG4関連疾患
・TINU症候群
・特発性
・血液疾患
など
・遺伝性全身性疾患
・後天性代謝性疾患(副甲状腺機能亢進症甲状腺機能亢進症)
・自己免疫疾患(SLE、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎・甲状腺炎)
・閉塞性腎疾患
・薬剤(NSAIDs腎症、リチウム、アムホテリシンB、シクロスポリン)など
・SLE
HBV,HCV,HIV
・細菌感染
・単クローン性ガンマグロブリン血症、リンパ腫
検査 腎機能障害
尿検査正常の場合あり
腎生検
電解質異常(低カリウム血症など)
血液ガス検査
尿AG異常
腎機能障害
尿所見異常
クリオグロブリン
腎生検
治療 高用量ステロイドMMF・AZP・RTX併用など 電解質補正 原病治療に準じる
  • ◎病態
  • ◎腎症種類
  • ◎診断
  • ◎治療
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