膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

広義の”Difficult to Treat RA”について考える ①総論

「広義の”Difficult to Treat RA”について考える」というテーマについて総論・各論・実践編という3篇でまとめていく予定です。
 

◎ポイント

  • 関節リウマチ(RA)の治療はどんどん発展しているが、一方で治療強化しても改善乏しい「難治例」が残った
  • 難治例の名称としてメジャーなのはDifficult to Treat RA (D2TRA) である
  • EULARがD2TRA定義を作ったが、「生物学的製剤/JAK阻害薬を複数使っても症状/所見が残るRA」という狭い定義となっている
  • 現実的にはもっと広い定義のD2TRAが問題となることが多く、①そもそもRAではない、②治療強化困難なRA、③治療強化しても難治性のRA(狭義の難治性RA)の3つに分類される

◎D2TRAという定義ができるまで

近年バイオ製剤・JAK阻害薬といった治療の進歩で関節リウマチ(RA)の予後は改善し続けているが、患者全員が寛解達成できているかというと全くそんなことはない
→治療強化しても改善乏しい「難治例」が残ったわけである。
その「難治例」の名称は色々あった
  • Difficult to Treat RA(D2TRA)(治療困難RA)
  • Refractory RA(難治性RA)
  • Multidrug resistant RA(多剤耐性RA)
  • Persistent RA(持続性RA)
うち、メジャーなのは「D2TRA」である。
 
現状のD2TRA概念を層別化してみると下図で表されるように、非常に雑多な概念である。(Nat Rev Rheumatol. 2021;17(1):17-33.参考に作成)

 

◎EULARのD2TRA定義

EULARがD2TRA定義を作ったが、「生物学的製剤/JAK阻害薬を複数使っても症状/所見が残るRA」=「狭義のD2TRA」が対象となっており、狭い概念となっている
表:EULAR D2TRA定義(Ann Rheum Dis. 2021;80(1):31-35.)

 
EULARの想定としては、RA全体の5-20%がD2TRAとされる(Ann Rheum Dis. 2021;80(1):31-35.)。一方で、本当に多種bDMARDs無効のD2TRAは非常に少数とされる(RMD Open. 2021;7(1):e001512.)。
 

◎D2TRAのマネジメントの難しい原因

図式化すると以下の通りになる。(Rheumatology (Oxford). 2018;57(7):1135-1144.)
通常RAのマネジメントは、炎症→診察→アセスメント→活動性評価→薬剤マネジメントというサイクルが成り立つ

しかしD2TRAは2つの要因からマネジメントが困難となる
  1. 正確な活動性評価が困難
    • 併存疾患例) 肥満
    • 非炎症性要素例) 変形性関節症
  2. 炎症が起こる原因は様々
    • 薬剤が無効…例) 免疫的機序
    • 薬剤が使えない…例) 有害事象

D2TRAのマネジメントには、まず「何がマネジメントを困難としているのか?」を把握する(=難治性要因の分類を行う)必要がある
 

◎広義のD2TRAの分類

先述したようにEULARのD2TRA定義は非常に狭い概念であり、実臨床で困る難治例全てを網羅しているわけではない。
個人的には以下の3つに分類されると考えている(Nat Rev Rheumatol. 2021;17(1):17-33.参考に作成)
  1. そもそもRAではない…診断ミス
  2. 治療強化困難なRA…薬剤有害事象、アドヒアランス不良、不適切な薬剤管理、合併症、金銭面
  3. 治療強化しても難治性のRA(狭義の難治性RA)…炎症性病態、非炎症性病態
 
それぞれの解説・対処については後日の②各論でまとめる予定。