膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

原発不明癌の評価

Lee MS, Sanoff HK. Cancer of unknown primary. BMJ. 2020;371:m4050. 
 
膠原病とは全く関係ない話。
例えばリンパ節を生検して病理で「悪性腫瘍」とでたとき、原発巣探すわけである。探すアルゴリズムとかないかなと思ったら丁度いい論文が出てたので紹介。
 

 

  • 原発不明癌(Cancer of unknown primary, CUP)は標準的な評価で原発性が特定できないが、組織学的に悪性腫瘍と確認されている転移性腫瘍と定義される
  • 癌全体の2−5%を占める
  • 最も一般的な部位は肺(27%)で、ついで膵臓(24%)、肝胆道(8%)、腎臓(8%)、腸(7%)、泌尿生殖器(7%)、胃(6%)
  • 病理:約50%は転移性腺癌、30%は未分化/分化不良癌、15%は扁平上皮癌で、約5%は分類不能
  • PET-CTが役立つ場合もあるが、あまりCTとの差はない模様
 
対応アルゴリズムは以下の通り

1)原発不明癌への原発巣特定のための初期評価
全例への初期評価
  • 病歴の確認…特に過去の生検歴・悪性腫瘍歴、病変切除歴、自然退縮病変の有無に関して
  • 身体所見…頭頸部、皮膚、リンパ節、直腸、泌尿生殖器、骨盤、乳房を含む
  • 血液検査(電解質、肝機能検査、Cre、カルシウム、LDH含む)・尿検査
  • 胸部-骨盤部のCT(できる限り造影CT)
  • マンモグラフィ*(女性患者)
  • PSA測定*(40歳以上の男性、特に骨転移のある腺癌がある場合)
  • 便潜血検査
  • 最も生検がやりやすい部位での生検(コア針生検が最適)
特定の状況で追加する検査
孤立性頸部リンパ節病変→頭頸部CT、PET-CTを検討(頭頸部原発特定のため)
女性の鎖骨上/腋窩リンパ節、または乳がんの他の組織病理学的証拠
→マンモグラムが目立たない場合は、乳房MRIおよび/または超音波検査
縦隔
→β-hCG・AFP測定(胚細胞腫瘍を評価するため)
後腹膜腫瘤
→β-hCG・AFP測定、65歳未満の男性の場合は精巣超音波検査
*:National Institute for Health and Care Excellenceのガイドラインでは、臨床的/病理学的特徴が適合する場合を除いて検査を推奨していない
 
2)原発不明癌での”Favorable risk subtype"
Subtype/特徴
可能性のある治療
類似した腫瘍の種類
原発不明の低分化型神経内分泌腫瘍
プラチナーエトポシド化学療法
低分化型神経内分泌腫瘍
原発不明の高分化型神経内分泌腫瘍
ソマトスタチンアナログ、エベロリムス、スニチニブ、ペプチド受容体、放射線療法
高分化型神経内分泌腫瘍
女性の漿液性乳頭組織型腹膜腺癌腫症
プラチナータキサン化学療法後の腫瘍減量術
StageⅢ卵巣癌、原発性腹膜癌
女性の腋窩への孤立性結節転移
腋窩結節郭清、乳房切除術または乳房放射線治療
アジュバント療法(ER/PR, HER2)
StageⅡ乳癌
子宮頸部リンパ節に浸潤した扁平上皮癌
両側性子宮頸部・頭頸部軸に対する頸部郭清
、および/または放射線治療
頸部・頭部の扁平上皮癌
原発不明の鼠径リンパ節に浸潤した扁平上皮癌
鼠径リンパ節郭清および/または放射線治療
泌尿生殖系の扁平上皮癌
若年男性の縦隔/後腹膜に浸潤した低分化型がん
(特にβ-hCG/AFP上昇を伴うもの)
精巣/生殖細胞癌と同様のプラチナ製剤をベースとした化学療法
外胚葉性生殖細胞腫瘍
大腸の免疫組織化学(CK20+、CDX2+、CK7-)を持つ腫瘍
大腸癌に基づく全身治療
転移性大腸癌
原発不明の単発転移性病変
切除術および/または放射線療法 ± 全身療法
単転移性病変
男性のPSA高値の芽球性骨転移
アンドロゲン遮断療法 ± 放射線治療