Pain. 2021;162(11):2629-2634.
Lancet. 2021;397(10289):2098-2110.
現状疼痛の種類は3つに分類される(国際疼痛学会(IASP)2017年改訂)。
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侵害受容性疼痛(nociceptive pain)…刺激・損傷部位における侵害受容器から生じる痛み(例:外傷、関節リウマチ)
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痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)…上記2つに当てはまらない痛み。様々な要因で脊髄から脳に至る神経回路が変化し、痛みが生じたり、痛みに過敏になったりする現象(例:線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群)
新規に追加されたのは「痛覚変調性疼痛」(nociplastic pain)で、中枢神経系疼痛・感覚処理増強・疼痛の調節が原因とされており、関節リウマチ等の炎症性リウマチ性疾患患者では非常に合併率が高い。
①痛覚変調性疼痛の定義
1. 疼痛が以下を満たす
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2.疼痛部位に痛覚過敏の既往がある
以下のいずれかを満たす
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3.併存症が存在する
以下のいずれかを満たす
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4.誘発性疼痛過敏現象が、疼痛部位で臨床的に惹起されうる
以下のいずれかを満たす
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1+4→慢性痛覚変調性疼痛の可能性あり
1-4すべて満たす→慢性痛覚変調性疼痛と推定
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②痛覚変調性疼痛の分類フローチャート
※痛覚過敏の既往の例
◯
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・衣服が皮膚に触れる、ベルト・ブラジャーなどの圧迫を不快or痛いと感じる
・抱きしめられると痛い
・長時間イスに座っていると痛い
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×
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・運動で痛みが悪化…痛覚変調性疼痛
・冷・温浴で痛みが悪化…熱過敏症
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※知覚過敏減少の確認方法
→刺激終了後に感覚・疼痛の状態を確認し、疼痛部位にのみ過敏性があるか広範囲に存在するかを確認する
③痛覚変調性疼痛の治療
確立した治療はない
第一段階
非薬物療法
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・症状の正当性を認める医師と患者の信頼関係
・患者教育
・自己管理・自己制御の推進
・継続的な生活参加…例)仕事、身体的・社会的活動
・良い生活習慣の維持
・心理療法
・可能ならば専門医による治療
・必要に応じて開業医による治療
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・中枢神経に作用する薬(鎮静薬)
・三環系抗うつ薬
・ガバペンチノイドなどの膜安定化剤
・通常の鎮痛剤(NSAIDsは有効性低い)
・オピオイドは避けることが理想的…有効性低く、リスク大
・神経調節(脳刺激・経皮的アプローチ)やその他の中枢神経作用薬(N-methyl-D-aspartate antagonists・大麻ベースの薬など)は特定の患者には可能性があるが、さらなる研究が必要
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参考:RAの非炎症性疼痛について↓