膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

結節性多発性動脈炎(PAN)ACRガイドライン2021

Arthritis Rheumatol. 2021;10.1002/art.41776.
結節性多発性動脈炎(PAN)に対してのACR(アメリカリウマチ学会)の2021年最新推奨。
 
結節性多発性動脈炎(PAN)は中型血管炎の一種で全身症状の他
  • 神経症状…多発単ニューロパチー、末梢神経障害
  • 皮膚症状…結節、網状皮斑
  • 腎症状…高血圧など
  • 消化器症状…腹痛など
がある。
診断としては特異的なマーカーがないため、画像・病理検査が重要
  • 画像:血管造影…腸間膜動脈・肝動脈・腎動脈などでの動脈瘤・狭窄病変
  • 病理…肉芽腫・巨細胞のの欠如した、血管壁への混合細胞炎症性浸潤およびフィブリノイド壊死
が特徴的
治療推奨は以下の通り

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PAN推奨・声明

推奨・声明
血管画像検査、組織生検、診断方法
PANが疑われる患者には、診断の確立と疾患の程度の判断を支援するために腹部血管イメージングを使用することを条件付きで推奨
カテーテル検査の他、CT・MRI血管造影も有用
非常に低い
臨床的に無症候性の腹部病変を伴う重症PANのある患者には、腹部血管イメージングのフォローアップを条件付きで推奨
※腹部血管病変が著変ないなら、画像検査を無期限に行うことは非推奨
非常に低い
皮膚関連PANが疑われる患者には、診断確定支援のために表在皮膚パンチ生検よりも深部皮膚生検(真皮の中型血管まで到達する生検)を行うことを条件付きで推奨
非常に低い
PAN及び末梢神経障害が疑われる患者には、診断確定のため、神経生検だけではなく神経生検と筋生検を両方行うことを条件付きで推奨
※生検部位は臨床的に症状がある部位で行うこと
非常に低い
PANに続発する末梢神経障害がある患者では、筋電図・神経伝導検査を繰り返すのではなく、神経学的検査を継続する(例:6ヶ月毎)ことを条件付きで推奨
非常に低い
活動性疾患への治療
活動性重症PANと新規診断された患者には、高用量ステロイドよりもステロイドパルス療法による治療を行うことを条件付きで推奨
非常に低い
活動性重症PANと新規診断された患者には、高用量ステロイド単剤よりもCYC+高用量ステロイドの併用療法を条件付きで推奨
非常に低い〜低
活動性重症PANと新規診断された患者には、RTX+ステロイドよりもCYC+ステロイドの併用療法を条件付きで推奨
非常に低い〜低
CYCの使用できない活動性重症PANと新規診断された患者には、ステロイド単剤よりも他の非ステロイド免疫抑制剤ステロイドの併用療法を条件付きで推奨
※非ステロイド免疫抑制剤…AZA・MTXなど
非常に低い
活動性非重症PANと新規診断された患者には、ステロイド単剤よりも他の非ステロイド免疫抑制剤ステロイドの併用療法を条件付きで推奨
非常に低い
活動性重症PANと新規診断された患者には、CYC+ステロイド血漿交換を併用しないことを条件付きで推奨
ステロイド免疫抑制剤の投与を受けている寛解期のPAN患者には、継続的治療を18か月以上行った後、非ステロイド免疫抑制剤の中止を条件付きで推奨
非常に低い
PANに対してのステロイド治療の最適期間は十分に確立していないため、治療期間は患者の臨床経過、価値観、好みによって決定する
非常に低い
難治例の治療
ステロイド・CYC以外の免疫抑制剤による治療に対して抵抗性の重症PAN患者には、ステロイド単剤での増量よりも非ステロイド免疫抑制剤をCYCに変更することを条件付きで推奨
非常に低い
寛解維持
CYCで寛解を達成したPAN新規診断患者には、CYC継続よりも他の非ステロイド免疫抑制剤への変更を条件付きで推奨
※他の非ステロイド免疫抑制剤…MTX・AZA
非常に低い
その他の考慮事項
神経・筋病変のあるPAN患者には、理学療法を条件付きで推奨
非常に低い
アデノシンデアミナーゼ2欠損(DADA2)の臨床症状のある患者には、ステロイド単剤よりもTNF阻害薬による治療を強く推奨
DADA2…若年再発性脳卒中・皮膚病変を特徴とする血管炎、通常10歳未満で発症

個人的な感想

  • PANの場合、深部まで皮膚生検を行うことを推奨した
  • 重症例にはステロイドパルス→CYCを推奨するようになった
  • 寛解維持できているなら、DMARDs中止を18ヶ月以上続けたところで考慮
  • DADA2についてTNF阻害薬の推奨が出た
    • 参考:DADA2…N Engl J Med. 2014;370(10):911-920.