膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

AbataceptとCOPD増悪の関係性

Semin Arthritis Rheum. 2019;49(3):366-372.
 
関節リウマチ(RA)に対してのbDMARDsの一種であるAbatacept(ABT)はASSURE trial(COPD合併RAへの臨床試験)でCOPD増悪リスクが高かったことから、ラベル警告が出されている。
  • ただその解析は、54人のCOPD患者を対象としたサブ解析からの結果である(Arthritis Rheum. 2006;54(9):2807-2816.)
→実臨床の場でのCOPD合併RA患者において、ABT関連呼吸器系有害事象が増えるかどうかを評価してみた
 

 

【Method
  • 2007−2014年の米国データベース(MarketScan Database)に登録されているbDMARDsを投与されたCOPD・RA患者のコホート研究
    • 2007-2015年にbDMARDsを開始したRA患者25万1138人を対象→RA・COPD合併患者9935人を対象とした
    • 傾向スコアマッチングを行い2群を比較
      • ABTでbDMARDsを開始した1807人
      • 他のbDMARDsを開始した3547人
  • アバタセプトの使用者と他のbDMARDsの使用者を、時間条件付きの傾向スコアでマッチさせた
  • Coxモデルを用いて、アバタセプトと他のbDMARDsを比較した呼吸器系有害事象の調整済みハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定
 
結果】
  • ABTを投与された1807名の患者・他bDMARDsを投与された3547名の患者を比較
      • 2群に大きな差なし
  • イベントフリー生存のKaplanMeier曲線…ABTと他bDMARDでは差がない
  • 入院したCOPD増悪/気管支炎、入院した肺炎/インフルエンザに対するABTの他bDMARDsに対するHR:0.87(95%CI:0.68-1.12)
    • 入院COPD増悪:0.60(95%CI:0.32-1.11)
    • 気管支炎:0.80(95%CI:0.56-1.14)
    • 入院肺炎・インフルエンザ:1.39(95%CI:0.91-2.13)
    • 外来肺炎・インフルエンザ:1.05(95%CI:0.86-1.29)
  • →ほぼ差はなかった
    • ただしCOPD重症度が高い患者では肺炎・インフルエンザでの入院リスクが高かった(HR 6.99、95%CI:1.02-47.76
 
結論】
  • RA・COPD患者において、アバタセプトが他のbDMARDsと比較して呼吸器系有害事象のリスクを増加させない
 
感想】
Abataceptは感染症リスクの高いRA患者に使うことが多いが、添付文書上はCOPDに慎重投与となっている(https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3999429G1028_2_09/)。
その根拠となっているASSURE trialはサンプル数の問題が指摘されており、後ろ向きとはいえ大規模解析的には問題なかったということは、COPDに対してAbataceptを少し使いやすくなる情報ではある。