膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

リウマチ性疾患患者に対してのCOVID-19ワクチンACRガイドライン- Ver.1

American College of Rheumatology Guidance for COVID-19 Vaccination in Patients with Rheumatic and Musculoskeletal Diseases - Version 1 [published online ahead of print, 2021 Mar 17]. Arthritis Rheumatol. 2021;10.1002/art.41734. 
 
9人のリウマチ専門医/免疫学者・2人の感染症専門医・2人の公衆衛生医によるタスクフォースから提唱された推奨
免疫抑制剤とワクチンのタイミングについての記述あり
 

①リウマチ疾患患者に対してのCOVID-19ワクチンへのコンセンサス

内容
コンセンサス
1.臨床
リウマチ医療従事者はCOVID-19ワクチンの接種に関して、リウマチ性疾患患者と話し合いをする責任がある
2.臨床
リウマチ医療従事者COVID-19ワクチンの接種に関して、リウマチ・筋骨格疾患患者を共有意思決定に参加させる責任がある
3.疫学
自己免疫性炎症性リウマチ疾患(AIIRD)患者は一般人口と比較してウイルス感染症リスクが高いとされる
4.疫学
年齢・性別を考慮すると、AIIRD患者は一般人口と比較して COVID-19入院リスクが高い
5.疫学
疾患・治療要因による不均一性を考慮すると、AIIRD患者は一般人口と比較してCOVID-19関連予後が悪い
6.疫学
AIIRD患者群の中でCOVID-19疾患・治療関連リスクにはバラツキがあり、患者の間でリスクの差がある可能性がある
7.公衆衛生
COVID-19リスクが高いため、AIIRD患者は一般人口よりも優先してワクチンを受けるべきである
8.ワクチン安全性
ワクチン成分へのアレルギー以外に、AIIRD患者に対するCOVID-19ワクチン接種の禁忌は知られていない
9.ワクチン有用性
全身性の免疫抑制療法を受けているAIIRD患者の多くにおいて、COVID-19ワクチンに期待される反応が一般人口と比較して規模・期間共に鈍化する可能性がある
10.疾患関連
一般原則として、ワクチン接種はAIIRDが十分にコントロールされている状態で行うことが望ましい
11.疾患関連
COVID-19ワクチン接種後、AIIRDの再燃・疾患の悪化が起こる可能性が理論的にはある
12.ワクチン安全性
リウマチ性疾患患者に対するCOVID-19ワクチンのメリットは、自己免疫性疾患の新規発症の潜在的リスクを上回る
13.臨床
リウマチ性疾患患者は、EUA/FDA承認の年齢制限に沿ってCOVID-19ワクチンを提供されるべきである
14.臨床
リウマチ性疾患患者は、EUA/FDA承認の年齢制限に沿ってCOVID-19ワクチンを受けるべきである
15.臨床
AIIRD患者は、EUA/FDA承認の年齢制限に沿ってCOVID-19ワクチンを受けるべきである
16.臨床
AIIRDではないリウマチ性疾患患者が免疫調整療法を受けている場合、当ガイドラインに沿って、同様の治療を受けているAIIRD患者と同様にワクチンを接種すべきである
17.ワクチン安全性・有用性
アメリカで利用可能なmRNA COVID-19ワクチンデータとしては、ワクチン同士での優位性はない。
このため、AIIRD患者は利用可能なワクチンのどれかを受けるべきである。
18.ワクチン有用性
複数回接種のワクチンの場合、1回目の接種で非重篤な有害事象があった場合でもAIIRD患者はCDCガイドラインに記載されている時期に合わせて2回目の接種を受けるべきである
19.臨床
医療従事者は、COVID-19ワクチン後の免疫を評価するため/未接種患者へのワクチンの必要性を評価するために検査(spike・nucleocapsidタンパクに対するIgM・IgG抗体検査等)をルーチンでオーダーしてはならない
20.公衆衛生
COVID-19ワクチン接種後も、リウマチ性疾患患者はソーシャルディスタンスやその他の予防措置に関する公衆衛生ガイドラインに従い続ける必要がある
21.臨床・公衆衛生
AIIRD患者と頻繁に接触する家族・人物は、AIIRD患者を守るための'cocooning effect’を促進するため、可能ならワクチンを受けるべきである。
同居人に関して早期ワクチン接種を優先する必要はない。
22.ワクチン有用性・疾患関連
致死的な疾患を持つAIIRD患者(ICU入院中など)を除き、COVID-19ワクチン接種は、疾患活動性
重症度に関わらず、推奨されている患者に対してできる限り早急に行うべきである。
23.ワクチン有用性・疾患関連
致死的な疾患を持つAIIRD患者(ICU入院中など)は、疾患コントロールが良好になるまでCOVID-19接種を延期するべきである
24.ワクチン有用性・疾患関連
疾患活動性はあるが致死的ではないAIIRD患者は、COVID-19ワクチンの接種を受けるべきである
25.ワクチン有用性・疾患関連
疾患活動性が安定または低いAIIRD患者は、COVID-19ワクチン接種をうけるべきである
26.ワクチン有用性・疾患関連
免疫調整治療を受けていないAIIRD患者は、可能であれば免疫調整治療の開始前にCOVID-19ワクチンの初回投与を受けるべきである
 

②免疫抑制薬使用中のリウマチ性疾患患者に対してのCOVID-19ワクチン接種のタイミング

(※ワクチン接種のタイミング)
薬剤
ワクチン接種のタイミング
コンセンサス
ヒドロキシクロロキン(HCQ)
スルファサラジン(SASP)
レフルノミド(LEF)
アプレミラスト
IVIG
ワクチンの接種時期を遅らせたり、調整する必要なし
メトトレキサート(MTX)
ミコフェノール酸モフェチル(MMF
シクロホスファミド(CYC)
TNF阻害薬
IL-6阻害薬
IL-1阻害薬
IL-17阻害薬
IL-12/23阻害薬
IL-23阻害薬
ベリムマブ
アバタセプト(ABT) 静注/皮下注
経口カルシニューリン阻害薬
中等度以下のステロイド(<20mg/day)
ワクチンの接種時期を遅らせたり、調整する必要なし
リツキシマブ(RTX)
患者のCOVID-19リスクが低い、または健康上予防措置(自己隔離など)でリスクを軽減できると仮定した場合、次回のリツキシマブ投与予定日の約4週間前にワクチン接種を開始するようにスケジュールを組む
※PSL>20mgの患者に対してワクチンを遅らせるかどうかに関しては、はっきりせず
 

リウマチ性疾患患者におけるCOVID-19ワクチン接種に関連した免疫抑制剤の使用とタイミング

(※接種後の免疫抑制剤のスケジュール)
 
薬剤
免疫抑制剤のタイミング
コンセンサス
ヒドロキシクロロキン(HCQ)
アプレミラスト
IVIG
PSL<20mg/day
調整不要
スルファサラジン(SASP)
レフルノミド(LEF)
ミコフェノール酸モフェチル(MMF
アザチオプリン(AZP)
経口シクロホスファミド(POCY)
TNF阻害薬
TNF阻害薬
IL-6阻害薬
IL-1阻害薬
IL-17阻害薬
IL-12/23阻害薬
IL-23阻害薬
ベリムマブ
経口カルシニューリン阻害薬
PSL≧20mg/day
調整不要
メトトレキサート(MTX)
ワクチン接種後に1週間休薬
(疾患コントロールが良い場合)
JAK阻害薬
ワクチン接種後に1週間休薬
アバタセプト皮下注射
COVID-19ワクチン初回接種の1週間前・1週間後に休薬
2回目ワクチン接種時には休薬不要
アバタセプト点滴
1回目のワクチン接種をアバタセプト点滴の4週間後に行い、次のアバタセプト点滴を1週間遅らせる
→アバタセプト点滴の5週間後に、次の点滴を行う
2回目ワクチン接種時は調整不要
シクロホスファミド点滴(IVCY)
可能であれば、ワクチン接種後の約1週間後にシクロホスファミド投与に調整する
リツキシマブ(RTX)
2回目のワクチン接種から2−4週間後にRTXを遅らせる
(疾患活動性が許容できる場合)
 

④感想

ついに日本でワクチン始まりつつあるが、MTX・アバタセプト・RTXの薬剤調整に注意。特にRTX半年ごと投与になっている人のワクチンスケジュール決定はかなり面倒くさそうではある。