Sebastiani M, Manfredi A, Vacchi C, et al. Epidemiology and management of interstitial lung disease in ANCA-associated vasculitis. Clin Exp Rheumatol. 2020;38 Suppl 124(2):221-231.
- (前置き)
- ①GPAにおける肺疾患
- ②EGPAと肺病変
- ③MPAと肺病変
- ④ANCA関連血管炎と間質性肺疾患
- ⑤ANCA陽性の特発性間質性肺炎(IIP)
- ⑥間質性肺疾患への治療
- ⑦今後の展望
- ⑧まとめ
- ⑨感想
(前置き)
ANCA関連血管炎は間質性肺疾患(ILD)を10-60%で合併し、死亡率と相関するとされる
ただ、症例報告が大半で”MPA-ILD”の臨床像ははっきりしていない
また「間質性肺炎急性増悪」時の対応もよくわかっていない
①GPAにおける肺疾患
上気道症状・肺結節が中心
上気道症状
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61%
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鼻粘膜潰瘍・鞍鼻
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-70%
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鼻腫瘤
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20-50%
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その他(骨変形など)
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まれ
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下気道症状
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気管支狭窄
(多くは声門下)
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15%
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気管支拡張症
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13-20%
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その他
(潰瘍・粘膜炎)
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不明
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肺症状
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肺結節
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40-89%
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consolidation
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30%
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すりガラス影
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25-50%
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びまん性肺胞出血
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5-10%
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胸膜症状
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胸膜結節
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まれ
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まれ
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胸水
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12-20%
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-
GPA患者の90%で、CT上肺に所見あり…肺結節、気管支壁の肥厚、気管支壁の肥厚、気管支拡張など
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肺胞出血・空洞結節は致死的な可能性あり→早期診断が重要
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直径2cm以上の肺結節は感染を起こすことがある
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末梢優位のすりガラス影を起こす→肺梗塞を模倣する
②EGPAと肺病変
上気道症状
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鼻ポリープ
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50-76%
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好酸球性鼻炎
慢性/再発性副鼻腔炎
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14-73%
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下気道症状
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喘息
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95-100%
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気管狭窄
気管支拡張症
好酸球性気管支炎
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15-20%
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肺症状
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好酸球性肺炎
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38-75%
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consolidation/結節
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11-89%
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すりガラス影
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39-99%
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びまん性肺胞出血
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3-8%
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胸膜症状
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胸水
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12-22%
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喘息がほぼ必発
③MPAと肺病変
上気道症状
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鼻粘膜潰瘍
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まれ
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下気道症状
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気管支拡張症
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32%
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好酸球性気管支炎
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55%
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肺症状
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びまん性肺胞出血 | 10-55% |
肺浸潤影
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26-92%
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肺線維化
間質性肺疾患
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32-90%
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びまん性肺胞出血の頻度が比較的高く、致死的なのが特徴的
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肺胞への好中球浸潤、肺胞内への出血
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MPA唯一の症状であることがある
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胸痛症状があることが多いが、1/3では胸痛なし→採血上での貧血進行・画像でしかわからないことが多い
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SpO2低下、P/F<450、CRP>25mg/dL、BALで好中球数>30%が呼吸不全のリスク
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→BALで確定診断
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肺胞出血、マクロファージ
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浸潤影も特徴的で、両側散在性すりガラス影が多い→肺胞出血による陰影と鑑別が必要
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その他、網状化・間葉中隔肥厚・蜂巣肺も頻繁にある
④ANCA関連血管炎と間質性肺疾患
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日本人ではANCA関連血管炎患者での間質性肺疾患合併率が高い
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肺疾患合併率がMPA>GPAであることも一因
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EGPAでの間質性肺疾患合併率は低い
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間質性肺疾患がANCA関連血管炎を引き起こしているという仮説もある
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MPA患者で間質性肺疾患があった場合、腎障害があること・予後が悪い事が多い
⑤ANCA陽性の特発性間質性肺炎(IIP)
⑥間質性肺疾患への治療
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だいたい症例報告のみ
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間質性肺疾患合併ANCA関連血管炎(AV-ILD)では、ステロイド単剤よりもシクロホスファミド・リツキシマブ併用例の方が生存率は高かった…Medicine (Baltimore) 2014; 93: 340-9.
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ILDに対して免疫抑制剤を使用しても、その後のANCA関連血管炎発症リスクは変わらない
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軽度で進行性がなく無症候性なら「wait and see」がよく用いられる
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血管炎症状が主なら免疫抑制が主となり、線維化病変が多いなら抗線維化薬が考慮される、というのが現実的なアプローチ
⑦今後の展望
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間質性肺疾患合併ANCA関連血管炎の治療は、リウマチ専門医・呼吸器専門医・放射線科医等で構成された多職種でのアプローチが必須
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治療に関しては肺病変・肺外病変両方を考えて行う必要がある
⑧まとめ
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ANCA関連血管炎と間質性肺疾患の関連についてはよく知られているが、研究はいまいち進んでいない
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血管炎重症度スコア(BVAS等)に肺疾患は入っていないが、今後入るかも知れない
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治療についてはよくわかっていないが、今後の研究に期待
⑨感想
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所謂「間質性肺疾患への自己抗体の縦断爆撃」にANCAが入っていて、何の意味があるんだ?と昔は思っていたが、確かにベースの肺疾患を抱えている患者がAAV発症する例はよく見る(単に高齢者が多いだけかもだが…)
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基本的には肺胞出血を恐れながら見ていくことが多いが、UIPのような線維化病変との関連が結構あることについては初めて知った
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「ANCA陽性のIIPは、あんまり血管炎発症することはない」ということは覚えていても良い知識と思われる(IPAF全体に言えることかもしれないが…)