膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

ANCA関連血管炎における心疾患

ANCA関連血管炎(AAV)は、肺胞出血+急速進行性糸球体腎炎による「肺腎症候群」をきたすため、肺胞出血・うっ血性心不全の2つからの低酸素血症が多い。
ただ、AAV由来の心臓合併症も少数報告されている。
まとまったレビューは存在しないので、症例報告・コホート研究からまとめてみた。

 

①総論

  • 大体は血管炎が冠動脈・心筋に達し、起こっているものと思われる(組織診断困難なため、相関関係の証明は難しいが…)
  • 頻度は非常にまれ
  • AAV患者は虚血性心疾患・虚血性脳卒中リスクが高く、死亡リスクにつながっている( J Autoimmun. 2019 Jan;96:134-141.)
  • 検査としては心エコー、冠動脈造影の他、心臓造影MRIの報告が多い
  • 多い合併症としては心膜炎・心筋炎・虚血性心疾患が挙げられる
心臓合併症
画像
所見・備考
心膜炎

Gd造影心臓MRI・長軸像
BMJ Case Rep. 2019 Aug 15;12(8):e230593. )
心嚢水貯留
心筋炎

Gd造影心臓MRI・短軸像
Eur Radiol. 2011 Nov; 21(11): 2297–2304.)
心筋浮腫・Gd強調(矢印)
 
虚血性心疾患

左冠動脈造影
BMJ Case Rep. 2017; 2017: bcr2017220233.)
冠動脈の突然の途絶⇨PCIステロイド・シクロホスファミドで改善
  • 治療法に関しては通常のAAVと特に変わらないが、治療反応性に乏しい例も散見される…シクロホスファミド・ステロイド併用例、RTX・ステロイド併用例など⇨従来のものとの差はない( Presse Med. 2008 Mar;37(3 Pt 1):412-5. )
 

②GPA(多発血管炎性肉芽腫症)

比較的報告は多いが、頻度は非常にまれ
  • GPA517人に対してのコホート研究…517人中17人(3.3%)にGPA続発性心疾患を合併(J Rheumatol. 2015 Jul; 42(7): 1209–1212.)
    • 最多は心膜炎(35%)、次いで心筋炎(30%)・冠動脈疾患(12%)
    • 心疾患合併例・非合併例での心臓外症状頻度は差なし
    • 6ヶ月の治療でも寛解達成できなかった難治例に心疾患報告は多い
 

MPA(顕微鏡的多発血管炎)

GPAと比較して、報告は非常に少数
  • 冠動脈小血管炎による心筋梗塞例… Intern Med. 2014;53(22):2655-6.
      • 冠動脈の小血管炎⇨フィブリノイド壊死(矢印)

④EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)

AAVの中でも比較的心臓合併症が多いとされ、中でも好酸球性心筋炎は特徴的(Medicine (Baltimore). 2016 Dec;95(51):e5080.)
 

⑤感想

AAVの呼吸困難といえば肺・腎疾患ではあるが、「心疾患」もたまにはあるということを覚えておいたほうがいいだろう。ただめちゃくちゃ低頻度であり、ルーチンで検査する必要性はなさそうだが…
ただ、若年の虚血性心疾患が血管炎だったという症例報告もあるので、「原因不明の炎症反応・他臓器合併症を伴う心疾患は血管炎も鑑別に入れていい」くらいは覚えていてもいいのかもしれない(Circulation. 2013 Jul 16;128(3):279-80.)