膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

ST合剤とメトトレキサート

“Methotrexate and trimethoprim-sulfamethoxazole”(Can Fam Physician. 2014;60(1):53–56.)
メトトレキサートとST合剤の飲み合わせはよくあるが、調べてみると注意点があった。その割にあんまりまとまった報告がない…。一応見つかった症例報告。
 

 

症例
Crohn病でMTX25mg/週・葉酸内服で治療されていた68歳女性。Crohnn病悪化で入院し、ステロイド導入と合わせてTMP-SMX(バクタ®︎換算2錠)・週3回が開始となった。その間脱水症・口内炎・汎血球減少が出現した。

血中VitB12は正常であった。
治療
メトトレキサートとTMP-SMXを
中止し、フォリン酸投与(ロイコボリン®︎レスキュー)を実施した。その後、Crohn病治療はインフリキシマブに変更された。
 
MTXとST合剤の併用は、肝障害・腎障害患者には臓器障害を起こす可能性がある。
MTXは主には腎排泄で48時間以内に大半は排泄されるが、腎障害患者での他薬剤の併用がリスクとなりうる。
⇨NSAIDs、ペニシリン、セファロスポリン、ピペラシリン、TMP-SMX、アセチルサリチル酸などとの併用で排泄されにくくなる。
ST合剤はサルファ剤で、細菌の葉酸代謝を阻害することで抗菌作用を発揮する。一方メトトレキサートは人体の葉酸代謝の阻害を起こす
⇨機序自体は別だが、併用によって稀に重大な葉酸代謝障害をおこしうる。
 
(補足)
ST合剤処方時、注意すべき薬剤は他に
が挙げられる(CMAJ. 2011;183(16):1851–1858.
 
一方メトトレキサートとの併用で注意すべきものとしては
(感想)
ST合剤に関して調べていた時に、MTXとの併用に関しての注意事項があったので調べてみたが、大した報告もなく、稀とは思われる。
この症例含めて、MTXを高用量で使用・ST合剤を治療用量で使用、といった例外的な事項が多いように思える。
ただ、MTXでいきなり肝障害・腎障害が起こることはままあるので、相互作用注意という点だけは留意したほうが良いのだろう。