膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

変形性膝関節症に対する理学療法vs関節注射

“Physical Therapy versus Glucocorticoid Injection for Osteoarthritis of the Knee
N Engl J Med 2020;382:1420-9.
変形性膝関節症に対する理学療法vsステロイド関節注射

 

 
【要約】
変形性膝関節症(Osteoarthritis:OA)に対しての治療として、理学療法ステロイド関節注射がよく選択されてきた。ただ、短期長期共に身体機能がどうなるかに関しての比較はされていなかった。
方法
  • アメリカの軍人ヘルスシステムにおけるプライマリケアでの両者を比較
  • 両側or片側のOAを有する患者を1:1で理学療法群/関節注射群に割り振り
  • Primary Outcome: 1年後のWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC)スコア
    • 0-240、高いほど痛み・機能悪化・腫脹あり
  • Secondary Outcome:1年後
    • Alternate Step Testの時間
    • Timed Up and Go testの時間
    • Global Rating of Change scaleスコア
結果
  • 156人(平均年齢56歳)を78人ずつ割り当て
    • 患者背景・疼痛・障害度は同様
  • 介入前のWOMACスコアは差なし
  • 1年後、理学療法の方がスコア低下あり
  • 注射で1名が失神した以外は特に有害事象なし
 
(前置き)
OAに対しては膝関節注射がよく行われているが、理学療法の有用性に関してはあまりデータがない。
 

156人を割り振り

特に2群の差はなし
介入
結果
    • Primary Outcome
      • WOMACスコアは理学療法群で有意に低下
      • ベースラインから変化のない患者は、理学療法グループ8人(10.3%)、関節注射20人(25.6%)
    • Secondary Outcome
考察
  • 変形性膝関節症に対しての理学療法の効果の長期間の追跡は実施されたことがなかったが、1年間も効果があった
  • limitation
    • 理学療法の方が、医療従事者の介入が多かった
    • 関節注射・理学療法療法を受けた人も一部いた
    • 理学療法群の方が関節炎患者が多かった
    • 療法を実施した場合に関しては不明
    • 盲検になっていない
    • プライマリケア医からの紹介患者がほとんどだった
 
変形性膝関節症において理学療法ステロイド関節注射であったという論文。
膝関節注射をやる身分としては
  • 関節注射は1/4には無効 というのは実感できるが、
  • 膝関節注射でキシロカインを7cc入れる というのは少しびっくり。
 
OAに対しての非薬物療法の推奨としては
この論文は、理学療法指導は長期にわたって効いた、というのが特筆すべき点。
変形性膝関節症はあまりにもコモンな疾患であり、全例外来リハビリテーションの対象にするのは、施設にもよりけりだが正直厳しいように思える。注射は慣れさえすればすぐできるので、運動療法の簡単な口頭アドバイス+時々の関節注射、というのが妥当なラインと感じる。