メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ治療における「アンカードラッグ」であるが、様々な有害事象が起こる。その一つが「汎血球減少」である。
MTXの副作用が出たとき、効果を打ち消すために活性型葉酸である「ロイコボリン」を投与することが推奨されている。このことを「ロイコボリンレスキュー」と呼ぶ。
①MTXの有害事象が起こったときの対応
②ロイコボリンレスキューの方法
③ロイコボリンレスキューの効果:論文
①MTXの有害事象が起こったときの対応:
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MTX内服中止
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血液検査:
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血算
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AST、ALT、Alb
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Cre を短期間隔でチェック(up to dateとしては隔日?)
検査所見が悪化傾向、または検査結果が著しく異常ならば、入院の上ロイコボリンレスキューを実施する。
基準としては
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肝機能が正常値の3倍になる、または元々の数値の4倍になって増加傾向
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血小板減少・貧血が悪化
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白血球減少が悪化、FNリスクあり
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下痢等の症状があり、体液・電解質バランスを管理する必要がある
など。(up tp date "Use of methotrexate in the treatment of rheumatoid arthritis" 2019/10/26閲覧)
②ロイコボリンレスキューの方法:
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ロイコボリン®錠6時間ごとの内服 or ロイコボリン®注 6〜12mgの6時間ごと筋注/静注投与
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ロイコボリン® の1日投与量 はMTX投与量の3倍程度を目安とする.
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MTXの排泄を促す目的で十分な輸液と尿のアルカリ化を行う.
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ロイコボリン® 投与は副作用が改善するまで行う.
③ロイコボリンレスキューの効果:論文
How should we manage low-dose methotrexate-induced pancytopenia in patients with rheumatoid arthritis?
Clin Rheumatol. 2018 Dec;37(12):3419-3425.
「関節リウマチ患者における低用量メトトレキサートによる汎血球減少への対処」
MTXによる汎血球減少が起こった症例を自験例10症例、他論文からの報告15例と併せて治療内容・血球回復までの期間を検討。
結果:
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投与平均期間
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平均反応時間
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ロイコボリン投与群
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ロイコボリンのみ(n=9)
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5.4日
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5.47±2.9日
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G-CSF+ロイコボリン(n=6)
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5.5日
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非ロイコボリン投与群
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葉酸のみ(n=2)
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10.5日
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10±3.77日
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G-CSFのみ(n=4)
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8日
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G-CSF+葉酸(n=4)
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11.75日
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(p=0.002)
(考察)
・低用量MTX投与患者のうち1-3%に血球異常がおこるとされ、その内の1.4%が汎血球減少という報告あり。( J Rheumatol 2007. 24:2299–2303)
・MTXによる汎血球減少は17-44%と報告されている(Arthritis Rheum 2014. 39:272–6 6.)
・それに対する治療法で確立されているものはないが、G-CSF投与・葉酸/ロイコボリン投与等が実施されている。
・本研究は低用量MTXによる汎血球減少に対してのロイコボリンの使用有無での投与期間の差を見た初めての研究である。
・ロイコボリンの投与によって反応期間の短縮が得られることがわかった。
・小さな研究ではあるが、4×15 mg/day/72hrの投与を推奨する。(根拠不明?)
・低用量MTXによる汎血球減少に注意し、発生した場合はフォリアミン投与を実施することを推奨する。
(感想)
MTX使用中患者の血球減少があったのでまとめたが、癌に対しての高用量MTXにたいするロイコボリンレスキューはエビデンスが大量にあるが、低用量メトトレキサートの場合はそんなにまとまっているわけではなかった。投与期間なんかは不明な点が多い。しかし、重症患者に起こった場合は、ガイドライン通りにオーバーにやるほうがいいように感じた。
まとめ
・MTX有害事象の汎血球減少には注意
・起こった場合はロイコボリンレスキューが必須!
・ロイコボリンレスキューの実施によって血球回復期間の短縮が得られる