膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

RA患者の寛解導入におけるステロイドの隔日投与

RA患者の寛解導入におけるステロイドの隔日投与

Safety and efficacy of alternate-day corticosteroid treatment as adjunctive therapy for rheumatoid arthritis: a comparative study.

Clin Rheumatol. 2018 Aug;37(8):2027-2034.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29582252

聖路加の先生の論文。ずっと読まねばと思っていたが今更読みました。

 

前書き:RAにおけるステロイドはDMARDsへの「つなぎ」としての使用が推奨されているが、治療1年でのステロイド終了率は40%程度でしかない模様。(Arthritis Care Res (Hoboken) 66: 1482–1488)
ステロイド投与は長期投与のみならず、90日以内の投与であっても様々な有害事象が発生することが知られている。(※5大有害事象:糖尿病、骨粗鬆症、高血圧、感染症、心血管系イベント)


後ろ向きの解析
P:18歳以上のRAに対してステロイド治療を開始した患者・・・聖路加国際病院
RA診断にはACR2010を満たしたもの・ACPA陽性患者138人
I:ステロイド隔日内服70人
15ー30mg隔日投与…症状改善あれば5ー10mgずつ減量
C:ステロイド毎日内服68人
7.5-15mg隔日投与…症状改善あれば2.5-5mgずつ減量
O:1年間でのステロイド離脱率、CRP数値
(+感染症の有無など)

 ※受診タイミングは、患者・医師側の都合で決定し、特に規定なし

結果:
最大1日ステロイド投与量は差なし
ステロイド累積投与量は隔日内服群の方が少ない
感染症発生率は隔日内服群の方が圧倒的に少ない(隔日内服24.3% vs 毎日内服群50%)、一方で有害事象の発生率は同様。
治療1年でのステロイドフリーはステロイド隔日投与の方が圧倒的に多い(58.6% vs 26.5%)

f:id:CTD_GIM:20191004141827j:image(上記論文より引用)
治療1ヶ月でのCRPの減少値は差なし

結論:RA治療におけるステロイドは隔日投与の方が感染率・ステロイド依存性において優っており、治療効果は同様であった。

f:id:CTD_GIM:20191004113010j:image
感染症が少なかった理由はステロイド非内服の日があることで、白血球の機能が保たれたためかもしれない(N Engl J Med 291:1154–1158)。またステロイド総投与量が少ないおかげかもしれない。少なくとも隔日投与の方が感染症は少ないと思われる。
ステロイド投与中の感染症のリスクは年齢・男性・PS・間質性肺疾患の存在・ステロイド投与量が多い(>30mg/day)といわれている(Medicine 92(5):285)。他にはDM・csDMARDsなど。ただDM・csDMARDsの人が少なかったせいか、本論文では差はなかった。
ただ、隔日内服は相対的副腎不全を引き起こりうるので注意は必要。その辺の研究は進んでいない。
GCAで同様の研究はあるが、あまりないのが現状。そのうち隔日内服の方がメインになるのかもしれない。

 

(感想)

 ステロイドの隔日投与は実践したことないですけど、これをみるとやりたくなりますね。日本のリウマチ診療でステロイドの不適切投与・漫然投与が多く、そのためか感染症等の有害事象が多いことはよく指摘されており(Ann Rheum Dis 2018;77:e35.)、その解決としても広まるべき方法のような気はする。

 ただ、「隔日投与」は服薬遵守がかなり難しいので、人を選んでやらないと難しいだろう。普通の薬ならともかく、ステロイドの飲み忘れは本文でも指摘されている通り相対的副腎不全の原因となる。

 

(まとめ)

 ・RAの初期治療としてのステロイド投与において隔日内服は、毎日内服と比較して治療結果は同等、有害事象・ステロイド投与量は少なく済む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1