膠原病・リウマチ一人抄読会

膠原病内科の勉強・アウトプットのため、読んだ論文等を投稿していく予定です。間違いがあれば遠慮なくご指摘ください。個別症例相談には応じられませんのでご了承ください。

85歳以上の高齢者の巨細胞性動脈炎をどう治療すべきか?

Semin Arthritis Rheum. 2019;49(2):288-295. 巨細胞性動脈炎(GCA)患者コホートで85歳以上のGCA発生頻度・特徴・臨床転機を見てみた研究 大血管炎は巨細胞性動脈炎・高安動脈炎の2つがあり、巨細胞性動脈炎は高齢者・高安動脈炎は若年者に発症する。 放置…

関節リウマチにおける好中球減少

RA患者における好中球減少はコモンな現象だが、鑑別は多彩。特に薬剤性・Felty・LGL白血病に注意が必要。 早期関節リウマチにおける頻度…771人中58人(7.5%)で77件の好中球減少症エピソードあり。 好中球減少リスク…非喫煙、女性、ベースライン好中球値低…

治療抵抗性PsA

https://link.springer.com/article/10.1007/s10067-023-06605-9 D2TRAならぬD2TPsAという概念を提案したレビュー ◎D2TPsA基準 ◎管理方法

ANCA力価とANCA関連血管炎の診断

RMD Open. 2023;9(2):e003113. ANCAはANCA関連血管炎(AAV)の診断に重要だが、非常に偽陽性が多い。その時の力価が高いとAAVの可能性が高くなる、という論文。 AAVの診断で最も重要なのは組織診断による小血管炎の証明だが、組織診断が困難なことも多い。そ…

2023年PsAバイオ/JAK薬価早見表

薬価は厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/topics/2023/04/tp20230401-01.html)参照。 2023年注目ポイント TNF阻害薬は全体的に値下がりし、バイオシミラーは特に安くなった TNF阻害薬以外はほぼ変化なし。 赤字が薬価改定あった部分 ①TNF阻害薬 ②IL-17…

2022年EULAR ANCA関連血管炎治療推奨

Ann Rheum Dis. 2023;ard-2022-223764. 欧州リウマチ学会(EULAR)の方でもANCA関連血管炎(AAV)の推奨が更新された。 個人的な注目ポイント 重症AAVにはステロイド+ RTX or CyCの併用を推奨(4) 非重症AAVであってもステロイド+RTXを推奨し、維持療法もRT…

2023年RAバイオ/JAK薬価早見表

薬価は厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/topics/2023/04/tp20230401-01.html)参照。変更あった部分は赤字で記載。 2023年注目ポイント TNF阻害薬は全体的に値下がり。エタネルセプトBS・アクテムラ点滴共に1.5万円/月となった。 アクテムラ点滴が大幅…

乾癬性関節炎へのb/tsDMARDsスイッチは有効か?

Ann Rheum Dis. 2023;ard-2022-223650. 難治性乾癬性関節炎の生物学的製剤(bDMARDs)選択はかなり難しい。 2019年EULARガイドライン的には生物学的製剤の優先度は、TNF阻害薬・IL-17阻害薬(+末梢病変のみの場合IL12/23阻害薬)で開始→だめならその他という…

体軸性脊椎関節炎(axSpA)治療ASAS-EULAR2022年推奨

Ann Rheum Dis 2022;0:1–16. 体軸性病変を起こす脊椎関節炎(axSpA)の治療は末梢性脊椎関節炎(pSpA)と異なる部分があり、独自の推奨がある。その最新改訂。 重要ポイント 体軸病変へのcsDMARDsはほぼ無効とされ、bDMARDsの役割が大きい…NSAIDs無効なら次がb…

全身性強皮症の消化管病変

Curr Opin Rheumatol. 2022;34(6):328-336. Nat Rev Rheumatol. 2023;10.1038/s41584-022-00900-6. 全身性強皮症(SSc)の患者の大半で消化器症状は発症し、経過の初期で発生することが多い。重症例も多く、QoLの低下・身体障害・抑うつ・死因に繋がりうる。…

117回医師国家試験 膠原病リウマチ分野

毎年恒例の国家試験を解いてみた。解答を示すというより問われている内容の背景知識の解説。 問題はhttps://bbs.icrip.jp/forums/forum/kokushi_117/ から引用。 例年と比較すると膠原病分野は素直な問題ばかりだった。あえて言えば自己抗体を明記しない膠原…

関節リウマチとANCA関連血管炎のオーバーラップ

関節リウマチ(RA)とANCA関連血管炎(AAV)も頻度が多く、RAにおけるANCA陽性・AAVにおけるリウマトイド因子(RF)陽性はよく見る印象。ただその意義はいまいちわかっていない。 RA・AAV両方を合併、 AAV患者におけるRF陽性、RA患者におけるANCA陽性 の3つ…

関節リウマチにおけるTocilizumab投与とCRPの関係性

Ann Rheum Dis. 2020;79(7):874-882. Tocilizumab(TCZ)は抗IL-6受容体抗体で、投与するとCRPがほぼ0になる特性がある。ただ、CRPが低下することとRAが改善することの関連はよくわかっていない。その関連について調べた研究は3つあったが、最もデータが集ま…

SLEのまれな臨床所見

SLE

Clin Exp Rheumatol. 2022;10.55563/clinexprheumatol/jrz47c. SLEな様々な臨床所見があるが、特に珍しい所見をまとめた症例ベースでのレビュー。 病変部位 頻度 消化器 ループス腸炎 0.59 -10.7% 偽性腸閉塞症 0.5- 4% 蛋白喪失性腸症 0.5 -7.5% 膵炎 0.1-5…

痛覚変調性疼痛

Pain. 2021;162(11):2629-2634. Lancet. 2021;397(10289):2098-2110. 現状疼痛の種類は3つに分類される(国際疼痛学会(IASP)2017年改訂)。 侵害受容性疼痛(nociceptive pain)…刺激・損傷部位における侵害受容器から生じる痛み(例:外傷、関節リウマチ…

SLEと補体/補体欠損症

Curr Rheumatol Rep. 2021; 23(3):16. Front Immunol. 2016; 7: 55. 補体が全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に深く関わっていることはよく知られているが、 ・低補体血症のないSLEもある ・補体値とSLE活動性が一致しない場合がある ・補体欠損症がSLE患…

器質化肺炎の診断へのアルゴリズム・アプローチ

Chest. 2022;162(1):156-178. 膠原病診療をしているとよく器質化肺炎に悩まされるが、その診断は非常に難しい。その理由としては症状が非特異的、画像が多彩、除外診断が基本、ということが挙げられる。非常に良いレビューがあったので、まとめてみた。 【器…

JAK阻害薬から他JAK阻害薬へのスイッチは有効なのか?

Ann Rheum Dis. 2022;annrheumdis-2022-222835. 関節リウマチ(RA)の治療薬はどんどん増えており、その代表歴はJAK阻害薬である。 ただJAK阻害薬も全てのRAが治るような薬剤ではない。臨床試験によって結果は微妙に異なるが、他bDMARDsと同じくらい寛解達成…

皮膚筋炎と関節リウマチのオーバーラップ

関節リウマチは頻度の多い疾患であるため、他膠原病と合併することはよくあるが、皮膚筋炎との合併もありうる。特に典型的な皮膚筋炎所見を取らない抗ARS・MDA-5抗体と合併した場合非常に厄介である。 まとめ 抗ARS抗体症候群自体が関節炎を起こし、関節リウ…

巨細胞性動脈炎・高安動脈炎の新分類基準(ACR/EULAR2022年基準)

Ann Rheum Dis. 2022;81(12):1647-1653. Ann Rheum Dis. 2022;81(12):1654-1660. ANCA関連血管炎に続いて、巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis, GCA)、高安動脈炎の大血管炎両方の基準が1990年以来約30年ぶりに改訂となった。 ctd-gim.hatenablog.com 正…

2022EULAR関節リウマチ治療推奨

Smolen JS, Landewé RBM, Bergstra SA, et alEULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biological disease-modifying antirheumatic drugs: 2022 updateAnnals of the Rheumatic Diseases Published Online Fi…

リウマチ多発筋痛症(PMR)とステロイド漸減

リウマチ多発筋痛症(PMR)は非常にコモンな疾患で、ステロイド単剤治療が可能なリウマチ性疾患としても有名である。 ただステロイド漸減に関しては定まったものがあるわけではない。 きちんとPMR治療の難しさ(再発リスク)・診断の難しさ(ミミック)・ス…

Rituximab投与中のリウマチ性疾患患者へのエバシェルド

2022年現在Covid-19流行から2年以上がたち、ワクチンを中心として様々な対策が取られている。一方でRituximabによるB細胞枯渇療法を受けている患者はワクチンの恩恵を受けにくく、Covid-19重症リスクも高い。最近発症抑制目的でのモノクローナル抗体としてエ…

メトトレキサートと葉酸投与量

メトトレキサート(MTX)はリウマチ性疾患治療のキードラッグで、葉酸との併用が基本である。 スタンダードな投与方法は週1回・MTX内服後24-48時間後に葉酸5mg内服だが、どう飲ませるのがベストかは案外わかっていない。よく質問されるので、自分なりにまと…

広義の”Difficult to Treat RA”について考える ②各論

今回は3つに分類した広義のD2TRAについての対応を考えてみる。 前回の総論 ctd-gim.hatenablog.com 【ポイント】 そもそもRAではない…診断ミス 特にSeronegative RAには注意が必要 治療強化困難なRA…、アドヒアランス不良、不適切な薬剤管理、合併症、金銭面…

広義の”Difficult to Treat RA”について考える ①総論

「広義の”Difficult to Treat RA”について考える」というテーマについて総論・各論・実践編という3篇でまとめていく予定です。 ◎ポイント 関節リウマチ(RA)の治療はどんどん発展しているが、一方で治療強化しても改善乏しい「難治例」が残った 難治例の名…

乾癬性関節炎におけるRF・抗CCP抗体

乾癬性関節炎(PsA)は通常自己抗体陰性の関節炎ではあるが、たまにRF/ACPA陽性のことがある。 多関節炎+RF( リウマトイド因子)・ACPA(抗CCP抗体)陽性ときたら、普通関節リウマチ(RA)を考える。ただ非典型的だがにRF,ACPA陽性の乾癬性関節炎(PsA)も…

凍結肩(Frozen shoulder)

Nat Rev Dis Primers. 2022;8(1):59. 凍結肩(Frozen shoulder: FS)は癒着性肩関節包炎・四十肩/五十肩と呼ばれ、非常にコモンな肩の症状である。 関節リウマチの治療していても肩の症状が残ることは非常に多く、凍結肩としての治療を実施すると著明に改善す…

2022年ACRステロイド骨粗鬆症(GIOP)ガイドライン改訂

https://www.rheumatology.org/Portals/0/Files/Prevention-Treatment-GIOP-Guideline-Summary.pdf Arthritis Care Res (Hoboken). 2017;69(8):1095-1110. 2017年ガイドライン以来の更新で、アバロパラチド・ロモソズマブに関しての推奨もできた。2017年の内…

SLEの関節炎

SLE

Best Pract Res Clin Rheumatol. 2009;23(4):495. Curr Opin Rheumatol. 2017;29(5):486-492. SLE患者の-90%に見られる非常にコモンな症状である(Clin Rheumatol. 2009;23(4):495-506.) 一方で関節炎に特異的な治療があるわけではなく"non-renal SLE"の一…